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11 そして、宝石ドラゴンについての事前説明会へ――②



「反対に集中的に狙われないようにするため、全員『隠れ蓑笠みのかさ』で挑んでいたパーティもありましたね」


「『隠れ蓑笠』て~、あの藁わらの装備品だったわよね。装備効果は確か、敵に見つかり難いだったかしらん」


「はい。それで蓑笠にはノブエさんが言うものともう一つ、アナライズを無効化する隠し効果があって、ジュエルドラゴンからの高レベル者を判断する目から逃れられるようです」


「あら、そうなのね~。なんだか一つ賢くなったちゃったわね」


「でもさあ、ノブっち。蓑笠って効果もパッしないし、なんたってダサいからみんな着ないんだよねー」


「後は、厄介な全体攻撃烈風が風属性なので、その耐性強化で対策したり、ジュエルドラゴンは火属性が弱点なので、油の入った樽をぶつけてそこへ火を放つ。そのような戦い方をしているパーティもありましたね」


 さすがと言えば、さすがのカレンである。

 俺よりもこっちの世界に長くいるらしいからな……。


「なあなあ、じゃあ俺達も『隠れ蓑笠』着て戦おうぜ」


「だからー、それじゃあ、壁役を立ててユアちゃん生還大作戦の意味なくなんじゃん。イッサの役目は私を守る壁なのカーベ。良かったじゃんこんな可愛い子を守れるんだからさあ。ナイト気分味わって死ねるんだから本望でしょ」


「でもあれよ~、今回はあんまり早くイっちゃダメよん。力尽きる前にありったけの炎系の魔法をぶちまけて、ドラゴンのライフを削るのもイッサの役割なんだから~」


「俺の死亡を前提にすんなっ」


 こんのう、見た目はパジャマ中身は鬼の薄情者どもめ。


「イッサの言う通りですよ。幾ら教会送りで済むとは言え、仲間の死を軽んじるのは不誠実ですし、ユアもノブエさんも少し言い過ぎではないでしょうか」


「ああ、ごめんごめん。イッサってからかうと面白いからついね」


「そうね。私もついつい悪ノリしちゃったわ~ごめんなさい~」


 カレンに頭を下げるユアとノブエさん。

 で、それっきり。

 その謝罪、俺にはねーのかよ。

 あれだな。最近とくに感じているが、こういうのがカレンと俺との、人としての質の差なんだろうな。

 と、カレンにとりあえずは尊敬の念を贈って――だが、である。

 俺を前衛に置く作戦を立てるカレンもどうかと思うぞ。


「イッサ、頑張って回避してくださいね。全員生き残って帰りましょう」


「お、おう。任せとけって、ははは」


 可愛い子って得だよな。

 反感抱いていても、はい、としか言えない俺。

 まあ、回避”率”ではなく、この世界は純粋な回避だからな。

 俺にも生き残れる望みはあるし、だからカレンもこの作戦なんだろうが。


 モンスターも俺達と一緒だろうこの世界の回避――つまり、『避ける』に俺は救われている一面があった。

 確率で敵の攻撃を受けたかどうかではないので、極端に言ってしまえば、気合と根性とセンスでどうにかなる部分なのだ。

 もっとも、魔法やそれに類する攻撃は、避けたつもりでも完全ヒット扱いなので、どうしようもない。

 だからこそ、魔法使いは必要とされるんだけどな。


 それで、この回避に影響しそうなのが『素早さ』の値である。


 この素早さであるが、体感としては数値が高いほど、イメージ通りに身体が動いたり、相手の動きがよく観察できたりする。

 あと、やっぱり『素早さ』だけあって、元いた世界の時と比べると、足が早くなった気はするかな。


 けど、高速と言えるほどでもなく、それこそマンガやアニメ、ゲームなんかような人間離れした動きには遠い。

 技スキル発動時は別として、おそらくまっとうなレベル99のカレンのステータス値でも、そんなに素早い動きはできないだろう。


 そんでもって幸か不幸か、俺の低ステータスの中で最も値が高いのがこの素早さである。


「心配しなくてもいいわよん。もし宝石ちゃんから攻撃をもらっても、私がいつでも癒やしてあげるから~」


「俺のライフゲージが耐えられればいいですけれどね」


 しつこいようだが、防御力紙ですから。

 それに、フルゲージの状態で一撃をもらうとは限らない。

 ジュエルドラゴンには、カレンも厄介と言っていた『烈風』がある。

 一定の間隔で使ってくるらしいその攻撃は、風属性の全体攻撃で回避不可能のもの。

 威力はあまりないらしいが、確実にライフゲージは削られる。


「なんで、魔法使いの装備って防御力低いかな……」


 別に戦士用の装備を着用できないわけではない。

 装備したら装備したらで実際に感じる痛みは減る。

 けど、きっと裸扱いなんだろうなあ。

 その場合、武具の能力やそれに付くスキルの効果は反映されないし、ダメージが恐ろしいようにライフゲージを減らす。

 なので、やっぱり魔法使いは魔法使いの物を装備したほうが……。


「まあ、裸同然よりは無難かあ」


 などと他の職種の装備を諦めボヤいていたところだった。

 ふわりとした良い香りとともに、可憐な子の影が側に寄ってきましたよ――と。


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