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雪化粧   作者: 杏子
3/4

雪化粧 参

平助に言われ、荒屋に逃げこんだ雪化粧。七人の友達と出会い、動物達と毎日平和に暮らす。そんな彼女の前に現れたのは・・・

 SIDE,黒蝶(雪化粧の義母)


「入れ」


 襖が開いて平助が入って来た。


「失礼します。あっ・・・え、と奥様」


 少し、声が震えているようだ。


「只今戻りました」


「平助か、おかえり。・・・頼んだ仕事は終わったのか?」


「は、はい・・・ご命令通りに」


 ほっ。よかった、・・・どうやら妾はとても安心しているらしい。

 そう、これで妾がこの国で一番美しいのね。


「ご苦労、褒美を進ぜよう。何か欲しい物はあるか、平助?」


 すると、彼は少し考えて言った。


「・・・しばらくの間、僕に休暇を下さいませんか?」


 ふむ・・・そんなもので良いのか?


「わかった。一週間程休暇をやる。存分に羽を伸ばしてくるといい」


「ありがとう、ございます」


 そう言って彼は部屋を後にした。


 その二日後、黒蝶は鏡台の前に立ち、何気なく問うた。


「鏡よ鏡、この国で一番美しいのは誰か」


 鏡は、答えた・・・。


「それは雪化粧。森の奥で七人のショタと仲良く暮らす、心の清らかな貴女の義娘、雪化粧」


 なっ・・・今、なんて?

 信じられない思いで再度黒蝶は尋ねた。

 ・・・が、鏡の返答は同じだった。

 雪化粧ですって?

 じ、じゃあ平助は雪化粧を逃したってこと・・・?

 な、なんなの・・・。

 もういい、妾が行くから。

 雪化粧もあの母親も、平助も、あの人も、みんなみんな、大嫌い。


 ああ、ホントもう今すぐにでも魔方陣を書いて、そっから死神でも召喚して呪ってやりたい。いや、いっそのこと神になりたい。憎しみが確かな怒りに変わった時、我が左手に眠りしパワーが目覚めそしてみんなを地獄の底に突き落とすの。そこで一生後悔させる。妾はただ黙って、苦痛に顔を歪ませ失意のまま死んでいく者共を上から眺めて笑ってる。笑ってる・・・。


 ・・・は、いかんいかん持病の厨二が。

 むう、とにかく平助が帰るのを待つか。


 でも、一週間経てど、二週間経てど、平助が戻ることはなかった。


 ・・・平助、裏切ったか。もう良いわ。


 冬の森は非常に寒い。

 しかし黒蝶はその中を小袖と肩掛けで歩いている。

 ふっ・・・少しも寒くないわ。

 怒りで身体中が熱いのだ。

 右手には巾着袋。中には苺大福。

 真っ赤な苺大福は、甘い苺ともちもちの餅米と、復讐の蜜の味。食べた者を三途の川へと(いざな)う。

 二刻程歩くと、一軒の家が見えてきた。

 ・・・あれが雪化粧の家かしら。

 ちょっち緊張してきたな。

 控え目に扉を叩くと、雪化粧が出てきた。


 ・・・普段は雪化粧とは顔を合わせてないし、ばれてはいないはず。


 あれこれ考えていると、雪化粧が声をかけてきた。


「あ、あの・・・何方様でしょうか? とても寒そう。も、もしかして道に迷われた、とか?」


「え、ええ。森の中を散策していたらいつの間にか迷ってしまって・・・。もう寒くて死にそうなの。お願い、少し体を温めさせてくれないかしら?」


 すごくか弱そうな、か細い声で言った。

 内心ガッツポーズ。我ながら完璧な演技、台本通り。


「そうでしたか。それはそれは、早くお入りになって。今温かい味噌汁を作りますね」


 雪化粧はすんなり入れてくれた。

 ・・・程なくして、本題を切り出す。


「ありがとうお嬢さん。貴女は私の命の恩人だわ。大したお礼は出来ないけれど、持って来たこの苺大福で良ければ召し上がって」


 明るい声でそう言って巾着から苺大福の包みを取り出した。

 そして、またもや完璧な演技ね。台本通りだわ。


「え、いいのですか。本当に、食べても・・・?」


 目がキラキラしてる。

 目は口程にものを言うとはまさにこのこと。


「もちろん。是非貴女に、食べてもらいたいわ」


「わあ、ありがとう。甘いものなんて何カ月ぶりかしら」


 嬉しそうに苺大福に手を伸ばし、そしてそのまま口に運んだ。


 んふふ・・・さあ、もがけ、苦しめ、雪化粧。


「ん、モチモチしててとてもおいs・・・うっ。ぁ・・・ぁ・・・」


 一口齧っただけで雪化粧は苦しみ出して、その場に崩れ落ち、やがて気を失った。


「ふふっ。これで私が一番。・・・じゃあね、雪化粧。あの世で母親に会えるといいわね」


 黒蝶はその場を後にした。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 SIDE,雪化粧


 森の中での生活も慣れてきた頃、私はいつもの様に家事をしていた。


 ようやく、一人前になれたかな? もうアニマルのお手伝いがなくても仕事をこなせるようになった、はず。


 よし、今日も頑張るぞーと立ち上がろうとした時、扉が叩かれた。


 ん、誰だろ? 何か忘れ物かな?

 そう思いながら扉を開けると、身知らぬ女性が立っていた。


 小袖に肩掛けしか身に付けていない。

 とても寒そう、道に迷ったのかな?


 そう思い尋ねてみると案の定、道に迷ってしまったので少し休ませて欲しいとのことだった。


「それはそれは、早くお入りになって」


 素早く女性を中に入れ、お味噌汁を作った。


 一息つくと女性がお礼に苺大福をと言った。

 うわあ、凄く美味しそう。だめ、よだれが。


 ・・・ここはお言葉に甘えて頂こうかな。せっかくのご厚意だし。


 苺大福を一つとって口に入れたときだった。


「うっ・・・。ぁ・・・ぁ・・・」


 っ、息が出来ない。苦しい。


 ・・・何が起こったのかわからない。

 たまらず私は床に突っ伏した。


 掠れゆく意識の中、目の前の女性の口角が上がっていることだけはわかった。


「じゃあね、雪化粧」


 ・・・お、かあ・・さま・・・?

雪化粧の義母の名前を考えるのに30分くらい費やしました。

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