自問他答
愛してるってなに?
お前が人を想うことだよ。
私は愛されているの?
もちろん、誰もが愛されているさ。
苦しみも、悲しみも、過ぎてしまったら跡形もなく消えてしまうの?
そんなわけがないだろう。小さなビー玉になって、そっと心に積もって行くのさ。
いつの日かいっぱいになって壊れてしまわないの?
壊れてしまうこともある。でも、それは不思議と器と同調してね。ゆっくりか。はたまたすんなりと入り込むか。それこそ人それぞれだが、やがてビー玉は色を薄めて、綺麗な透明になるんだ。透き通っているけれど、決して何もないわけじゃない。うっすら色が着いていて、初めて器になれる。苦しみも、悲しみも、何もかもを抱え込んで、やっと器となるのさ。
私の器はどんな色?
さあね。僕が知るわけがないだろう。お前の考えた色は、確かにお前自身の色さ。でも、僕の見るお前の色は決してお前のそれと重ならないんだよ。器はお前自身によって築かれる。お前が思った色が、ただ一つの真実なんだ。
もし悲しみを拾ったらどこに連れて行けばいいの?
元の持ち主に返してやれ。お前の器には収まらないよ。重くて重くて、誰もが望む形をも否定する。だからこそ返してやれ。ピタリとはめ込むように、そうしていつの日か淡い色に変わるよう。
ねえ、愛してるってなに?
お前の思う通りのものさ。
愛するってどういうこと?
人に触れることさ。見て、聞いて、話して。そうして人と馴れ合うことさ。
私って誰?
頭に一度は思い浮かべたそれが確かにお前の姿だよ。僕に聞かれてもどうしようもないのさ。お前の姿はお前が決める。そういうものだろう?
あなたは誰?
お前が望むがままに、一つの姿を取らないものだよ。お前が少しでも形を変えれば、僕なんてものは呆気なく捻じ曲げられるもの。
そういうものなのかしら。
そういうものだよ。