第179話:手を動かす
~盤面整理~
これはどうしたものかね。
それっぽい定跡もないし、いつぞやの「定跡創成」を使って考える時間を稼ぐのが最良か。
考えているだけで動かしていない時間というのはただの無駄だからな。
やるべきことが特に思いつかないなら、取りあえずは損にならないようなことをして、
少しでも整理に近づいていくという可能性を探っていくのが結局現実的な策になるわけだ。
手を止めてでも、しっかり考えれば3倍の速さで解ける、と言うなら話は別だが、
実際は手を止めていようが動かしていようが、そんなに変わらないからな。
まあ取りあえずは周りを固めながら中央を適当に通していくとするか。
~解析現場~
*色々な記録を組み合わせれば、上下左右の入力のうち、*
*盤面整理のために用いられているもののみを選び出せそうである。*
*その中で、入力が素早く行われている場所こそが定跡である。*
*以上より、色々な記録を組み合わせれば定跡を見つけられそうである。*
*…というのがここまでの話。*
*ここからは、実際に記録同士を関連付けること、*
*そしてそれに基づき、形としての「定跡」を確定させること、*
*最後に音声記録と照合して、どの定跡にどの名前が付いているかを調べる。*
*とまあ、言うだけなら非常に簡単な作業だ。言うだけなら。*
*しかしながら世の中はそこまで甘くはない。*
*実際に始める前に、「今言った通りのことをすると、どのような問題が起きうるか」という観点の分析も忘れてはならない。*
*「取りあえず始めてはみたけれど、思いの外面倒な問題が山積みになってやる気が無くなった」などということは、*
*少なくとも飽きっぽい私にとっては日常茶飯事だからな。*
*さて、どのような問題が起きうるだろうか。考えてみよう。*
*現時点での不確実要素は以下のとおり。*
*・盤面の上下左右を正しく取得できるのかどうか。*
*・そもそも「素早い」=「定跡」なのか。*
*・音声記録はどこまで信用できるものなのか。*
*・似ているが異なる複数の形に同一の名前が付いていたりするのか。*
*・出現頻度の低い定跡まで十分に分析できるのだろうか。*
*……いざ数え上げてみると予想以上に数多く見つかるものだな。*
*こんなに困難が待ち受ける道を進んでいって大丈夫なのだろうか。*
*まあ考え込んでいても始まらないし、取りあえず手を動かし、できるところをやっていけばよいか。*
*定跡については、本人から答えを聞くのも悪くはないが、*
*せっかくここまでやってきたんだし、もう少し自力で頑張ってみるとするかな。*