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第7話

読んでくださってありがとうございます!今度は長すぎましたでしょうか?今後は進路の関係で投稿が出来ない月があるかもしれませんので、御了承くださいませ。

 ファストがアシュルタ村から出発した翌日、ベルバーは自分の部下の小精霊に紙を持たせ天空城へと向かわせた。

 ぎぃ、ベルバーが監視を行っている少年の家の戸が開いた。ベルバーはとっさに木の茂みに入る。家からは例の少年がやつれた様子で外に出てきた。

「・・・気のせいか・・・」

 少年は辺りをぐるりと見回し、また家の中に入ってしまった。

 ベルバーは知っていた。何故、少年がこんなにもやつれた様子でいるのか。それは昨晩、少年にとって悲しい出来事が起きたのだ・・・。その場面にベルバーは居合わせ、迂闊にベルバーは少年の前に姿を現してしまった。もちろん見られてしまったという確信はない。しかし、少年は普通の少年ではない、あの忌まわしき悪魔の片割れなのだ。ベルバーに不安が募る。

「行った・・・か」

 少年が見えなくなると一つ、大きなため息をついた。ベルバーは小さな袋から一粒の珠を取り出した。その珠は青紫色に輝き、中心にいくほど透明度が増し、人を寄せ付けぬような霊気を放っていた。

 この珠は『変化珠』といいファストが行く前に必要だろうと置いていった物だ。この珠を飲み込んだ者は今とは違う姿に変わることが出来る。意を決したようにベルバーは珠を舌に乗せそのまま飲み込む。次の瞬間、ベルバーは光に包まれた。光が消えた時には彼の髪、顔、全てが別人になっていた。




 小さな部屋の扉が開いた。

「あなたは・・・だれ?」

 部屋にはベッドの上で横になっている少女がいた。少女は突如部屋に入ってきた男に目を丸くして問う。問われた男は焦り、うろたえながら答えた。

「おっおれはノイの知り合いだ。君と会うのは初めてだね・・・こんにちは、君のことはノイから聞いているよ。その・・・傷は大丈夫かい?」

 男は吹き出てきた汗を服の袖で拭いながらアイラに訊いた。少女は男に不信感を抱くことも無く答えた。

「わざわざありがとうございます。傷もあまり深くないので2・3週間で歩けるようになるそうです・・・そういえば挨拶がまだでしたよね、私はアイラ。アイラ・インフェルノといいます。あなたは?」

「おれはコリー・マイルズってんだ、よろしくな」

「コリーさんですね、よろしくお願いします」

 少女は優しく微笑んだ。

 少女には分かっていた。男は本当はコリーなんて名前ではないこと、そして、けっしてノイの知り合いではないこと。けれどアイラは男には訊かなかった。何故、本当の名前を名乗らないのかを。

 日が暮れると少女の寝ている部屋から男は居なくなった。代わりに一つの赤い花束が机に置かれていた・・・。




 ファストは新たな島に足を着いた。その島の一つ目の街に足を向けた。街は活気に溢れているわけでもなく、溢れていないわけでもなく、妙な感じがした。

「はなして!」

 背後から幼い女の子の声がした。振り向くと狭い路地裏に幼女と大きな男の姿が見えた。幼女の外見は先程の声からは想像もつかないほど大人びており、黒髪のショートヘアで、青と黄色の踊り子の服を着ていた。耳が尖がっていたため人間では無いことがわかった。

「はなしてよ、バカ!」

「あぁん?そんなこと言っていいと思ってんのか?」

 幼女は男に手を掴まれ引っ張られている。どう見ても恋人同士というには年が離れ過ぎている気もするし、明らかに男は幼女を連れ去ろうとしていた。その光景にファストは怒りを覚えた。

「おい!おま・・・」

 ファストが言い寄ろうとした瞬間、男の後ろに誰かが立っていることに気付いた。それは十代前半位の緑色の髪をした少年だった。

「お前・・・こいつがオレの妹だと知ってて手ぇ出してるんだろうなぁ?」

「あっあんたはもしかして・・・ウィークか?あのウィーク・シードなのか?」

 男は自分の後ろにいる少年に恐る恐る振り向く。男の目に映ったのは不吉に笑う少年の姿だった。その顔を見て男の顔色が変わった。

「すっすまん、見逃してくれぇ」

「今回はな、次やったらどうなるか・・・分かってるよな?」

 幼女から手を離し後退る男を目で追いながら、男と幼女の間に立ちふさがる少年。

「うっうわぁ〜〜!」

 大の大人がへっぴり腰で少年の前から立ち去っていく。なんとも情けない姿、ファストは笑ってそれを見ていた。少年を良く見ると民族衣装を身にまとい、少年が持つには長すぎる刀を腰に差していた。

「ドール大丈夫か?」

「うん。ありがとうお兄ちゃん」

 少年は先程とは打って変わって優しい兄の声になっていた。

「いや、それより・・・」

 ウィークは路地の出入り口に居るファストに気付き振り向いた。ファストもその視線に気付き笑いを止める。

「こいつはお前の知り合いか?」

「ううん、知らない」

「・・・そこの女、オレらに何か用?」

 この場に居合わせただけのファストに、目が合った少年からトゲトゲしい口調で話され、思わずファストもトゲトゲしい口調で返してしまった。

「別に用なんてないわ。ただそこの女の子が浚われそうだったから助けようとしただけよ」

「本当か?」

 ウィークは疑りながらゆっくりファストに近付く。ドールが少年に後ろから飛びついた。

「わっ!なんだよドール」

「この人が言ってることは本当よ。お兄ちゃんが来る前に私を助けようと声を掛けてくれたわ」

「そっそうか・・・」

 ウィークはドールの言葉にはすんなり耳を傾けた。

「お兄ちゃんがそそっかしくてごめんなさい」

 ドールは兄の代わりに深々と頭を下げた。

「いっいえ」

「そろそろ行くぞ」

 ウィークは二人のやりとりが終わったのを見てドールの手を引いた。

 手を繋いだ二人は帰るためファストの横を通った。ドールはまた申し訳なさそうに横を通る。後ろまで来た時、ファストは二人を呼び止めた。

「ウィーク君とドールちゃんだっけ?ちょっといいかな」

 呼び止められたウィークは不機嫌そうな顔をして振り返った。

「二人はいずれ世界の柱となる者と共に旅をするわ」

「柱とか旅とかなんだよそれ」

「そのうち分かるわ」

 ファストの返答にウィークは納得がいかないようで、頭を掻き毟っていた。そのウィークの横からドールは疑問を投げ掛けた。

「なぜそんなことがあなたには分かるのですか?」

 そんなドールの疑問にファストは、

「私、趣味が占いなの。信じてもらわなくてもいいけど、みんなからはよく当たるって言われるのよ」

 微笑んで答えた。ぽかんとしている二人を目の端にとらえながらファストは廻れ右をして、後ろ向きのまま二人に手を振り路地の奥まで入っていった。

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