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第5話

誠に遅くなってしまいすみません。。。

私用により、執筆活動が遅れてしまっています。なにとぞ、ご理解の程お願いいたします。

 その頃ファストは、街や村を一つ一つまわっていた。そして、気が付いた時には既に日が暮れようとしていた。

「えーっと、どこ行ったっけ・・・コール港、コール、グランド港、ラジューム、グランド王国、アルファの洞窟、マイブルの森は行ったから・・・後はアンブル街とアシュルタ村か・・・。」

 ファストは日が暮れないうちにと、急いでアンブル街に向かった。

 二分後、ファストはアンブル街に着いた。彼女は羽織っていたストールを頭上に高く投げた。すると、ストールに隠された箇所は先程のファストの身体とは異なった身体となって出てきた。

「準備完了!!」

 ファストはあっという間に精霊である身体から、人間の身体に変わってしまった。

 実は彼女、変身することが特技の一つで、自分以外の者も変身させることが出来る。しかし、大人っぽい知的な容姿に対し、子供っぽい幼稚な内面は、周りからしてみればあまりにもギャップが強すぎたらしく、すれ違う人は皆、唖然としていた。

 その時、小精霊が目の前に現れた。

「わっ!なっ、何よ!?」

 思わずファストは後ろに倒れてしまった。

 その小精霊は雷の属性であるため、大抵のことは予測できた。おおかた、ライクから使いを頼まれたのだろう。案の定、小精霊は紙切れをファストに突き出した。紙切れにはやはりライクからの伝令で、『すぐにイガードの元に行ってほしい』と書き記されていた。

「何よもぉ〜!地上見て回ってこいだ、イガードの所に行けだ、メチャクチャじゃない!」




 完全に日が落ちてしまったため、この場合目は頼りにならない。ファストはの目的はイガードのもとに向かうこと、そのためイガードの弱々しくなっていく気配を感覚を研ぎ澄まして感じながらイガードのもとに向かって行った。こうなると、嫌な事ばかり考えてしまう。

 イガードの元に着いた時、イガードは何者かと戦っていた。イガードは血まみれになっており、意外にも、戦っている相手は子供だった。よく見ると、その子供の両腕には小さな竜が巻き付いていた。他は辺りが暗いため分からなかった。

「右竜。あの人は君にあげるよ。好きにしな。」

「ギャウ!」

 少年が右腕を前に突き出し、巻き付いている竜を促した。

(ここまでか・・・。)

 イガードが諦めかけたその時、何処からか聞き覚えのある声が聞こえた。

「守護陣!!」

 眩い光が現れイガードを包んだ。

 右竜はイガードに近付こうとするが、光が右竜を近づけまいと、結界を張っていた。すると、少年は右腕を高く挙げ、竜を退かせた。

「残念だね。今日は邪魔が入ってしまったから、また、戦おうね・・・。」

 少年は夜の暗闇の中に消えていった。

「イガード!大丈夫!?」

 ファストは急いでイガードのもとに駆け寄った。

「ファ・・スト・・・?」

 イガードは薄れゆく意識の中でファストを見つけ、安心したのか倒れてしまった。




「うっ・・・ここは・・・?」

 イガードは目が覚め、寝ぼけ眼でベッドから上半身だけを起こした。なにやら左腕に違和感を感じたがそんなには気にならずに辺りを見回し始めた。見たこともない家具ばかりがその部屋にはあった。

「イガード、起きた?」

 イガードがベッドから起きたことに気が付いたのか、隣の部屋から声がした。扉が開き、一人の人間の女性が顔だけを出してこちらを見ていた。

「君は・・・?僕のことが見えるの?」

 イガードが驚くのも無理はない。普通、精霊は人間には見えないものだ。それに加え、自分の知らない女性が自分の名を知っているのだから。

 驚くイガードをしり目に、女性は笑みを浮かべながら近寄ってきた。近くまでくると女性は、腰に巻いていた黄色の布を頭上に放り投げた。

 イガードにはその姿に見覚えがあった。

「ファスト!?」

 同志の名を呼び、ファストの後ろにある鏡に気付いた。自分が寝ているはずのベッド。鏡の中のベッドには見知らぬ男が寝ていた。

「あぁ、イガードの姿も変えておいたから。」

「えっ・・・あっ、ありがとう。」

 驚き、まじまじと鏡を見続けているイガードに対し、ファストは冷静に伝えた。

 イガードの目の前に白い手が差し出された。イガードは『何だ』と言わんばかりの顔で、ファストの顔を見上げた。

「左腕、出して。」

「左腕・・・?」

 不思議に思うイガードは確かに、先程身体を起こした時に違和感を感じた左腕をゆっくりと出した。それもそのはずだ、左腕にはまだ浅い傷がいくつも残っていた。イガードの左腕にそっと両手でなでた。

 他にも傷は体中にあったのだがいつのまにか消えている。どうやら寝ているうちにファストが傷を癒してくれていたようだ。おそらく左腕の傷は治す前に力が尽きてしまって後回しにしたのだろう。傷を癒してくれている時のファストの顔つきは、いつもの子供っぽさが抜けているようにイガードには見えた。

 それは何故だろう、いつもより優しい顔をしているから?髪を結っていないから?それとも・・・自分のファストに対する見方が変わったから?そうこう考えていた時、ファストが話し始めた。

「ライクからイガードの所に行け!って伝令が来て、慌ててイガードの気を辿りながら来たんだけど、段々弱々しくなってきたから嫌な事ばかり考えちゃって・・・。」

 元気に話し始めたファストが一転、急に泣き出して後ろを向いてしまった。イガードの傷は完全に治っていた。

「ファスト・・・?」

 こういう時にどうしたら良いのかが直ぐに思いつかない。女性の相手は慣れているイガードだったが、こういう雰囲気は初めてだった。

「・・・でも良かった!生きていてくれたから。」

 振り返ったファストの顔にはもう涙は無かった。けれどその顔には不安定な心情が見え隠れする。イガードに対する気持ちがこちらにも伝わってきた。

 イガードは無意識にベッドから降り、ファストの前まで歩いた。

「・・・イガード?」

 イガードはファストを優しく包み込んだ。

「ちょっ!イガード!?」

「ありがとう。」

 最初は嫌がっていたファストは、何故か急に大人しくなった。

「この際だからはっきりさせて!」

 ファストはイガードの腕の中で言った。その言葉に驚き、イガードはファストを身体から離した。

「イガードは私のことどう思っているの?」

「どっ、どうって・・・?」

 確信を付くファストの一言にたじろぐ。一方ファストは頬を染め、女らしく見えた。イガードは思わず顔を逸らしてしまう。

「元気いっぱいで明るくて・・・。」

「そういうんじゃなくて・・・!」

 遠まわしなイガードの話し方はファストにはじれったかった。ファストが話を遮った後に言葉を直ぐには返すこともなく、短い沈黙の後、イガードは口を開いた。

「仕事に戻ろう、ファスト。」

「えっ?」

 多少は予想はついていたが、実際に言われるとちゃんとした言葉が返せない。

「今の話は・・・仕事が終わってからな。」

 そう言ってイガードはまたルイ・スベアの監視に、ファストは一晩ここの宿に泊まることにした。

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