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第28話

ごめんなさい。。。まさかここまで更新が滞ってしまうなど自分自身思いませんでした。ラストまで頑張ります。

今後も引き続き読んでいただけたら幸いです。

 ライクを除き、洞窟の外に出た者達は指揮するものがいないため、手をこまねいていた。司令官であるライクは不在、その次官、補佐ともいわれるバルタルはライクの最後の言葉が耳について離れないのか、頭を抑えて踞ったまま動かない。


 ファストはブルニアルスの両手を自分の髪紐で縛り自由を奪い、喉元に剣を突き付けている。もちろん、ブルニアルスには抵抗する理由がないため目をつむってなにもせずにただ座っている。


 シュートゥは蒼葉と共に、イガードの回復を行っている。外部の傷はあらかた癒えているが、意識がいまだに戻らないのが不安の一つ。


 ベルバーはシュートゥと蒼葉に頼まれた薬草探しに出掛けた。いくら二人の力を合わせても、イガードは簡単には回復しないようだ。

 そもそも、二人の使う回復術は対象者の治癒力を高めるものである。つまり、対象者自身に治癒できる力があれば二人の術で回復することはできるが、力がなければ薬草などを使い、外からの回復に切り替えるしかない。

 薬草などでの回復は長い時間を要し、対象者に苦痛をもたらすため、シュートゥとしてはあまり行いたくない方法であったが仕方がない。辛くても命を繋ぎ止めることが今一番大事なことだからだ。


普電、氷榁、楼焔、湖満の四人は何か討論中。

「普電はもう少し人を思いやる気持ちを持ったらどうです?」

 彼女の目の前に座る蒼葉が腰に手を当てて言う。当の本人はその言葉に鼻で笑った。

「あの時の私にはそんな余裕ないわ」

 そう言って腕を胸の前で組んだまま視線を三人から外した。

 そんな彼女の態度に頭にきているのか、湖満は少し震えた声で言い返した。

「だったら余裕を作ればいいじゃない」

「…だれもが、あなたみたいな思考回路を有していると思わないでくれない? お気楽人間になってしまうわ」

 視線を戻した普電は大きなため息と共に、肩をすくめてみせた。

 その動きに完全に切れた湖満は普電の胸ぐらを掴みあげ、半分叫ぶようにして言う。

「どういう意味!?」

「そのままの意味よ」

 二人の口喧嘩に割って入ったのは楼焔だった。

「まぁ、二人とも一度落ち着こうよ。これじゃ話が食い違ってばかりになってしまうよ…」

「楼焔の言う通りですね」

 楼焔の後に続いたのは蒼葉だ。深く頷いて同意した。

「悪いけど、質問者は1人にしてくれない? なんか追い詰められている気がして嫌なの」

 事の中心にいる普電は機嫌が悪そうに、腕を胸の前で腕を組んで言い放った。自分には非がないというように、ふてぶてしい態度である。

「わかった。僕が代表して質問する。湖満、蒼葉いい?」

「どうぞ」

「別に、良いけど…」

 自ら志願した楼焔に、二人はそれぞれ違う反応を見せながらも、頷いてくれた。楼焔は、湖満では冷静な会話にならないと考え、蒼葉では申し訳ないが途中で怖じ気づいて深くまで聞けないのではないかと考えたから志願したのである。

 戦闘中では何かと足手まといで頼りがいのない楼焔だが、実は、普電の次に頭のきれる頭脳派の精霊だ。

「じゃあ、質問するよ? 普電、君は何故上司であるライク様にあんな質問をした?」

 初めは浅い内容で、優しく問いかける。初めから核心部分に触れ、怒鳴ってしまっては聞き出せる内容が聞き出せなくなってしまうからだ。

 彼女は楼焔の問いに当然のように、

「決まってるわ、重要な情報を部下に流さない上司に頭がきたの」

 と言った。楼焔は間を空けずに更に聞いた。

「だからって、相手の思い出したくないような過去を引っ張り出すかい?」

 彼女の目を真っ直ぐ見て、疑問を投げかけた。

「…そうね、私の言葉が足りなかったわ。あれは質問したつもりはない、私は尋問をしたの」

「尋問…?」

 楼焔は普電が答えた言葉の中から一番引っ掛かる単語を繰り返してみる。

「そう、あの人のことは私がよく知っている。性格も過去も。その上で発言したわ」

「君がライク様のことを理解しているのは知っている。僕たちはそれぞれの主に仕えているのだから。だが、今回の君は主との関係を無視し、度を越えていると思うのだが、君自身はどう考えてる?」

 彼の言葉に何も反応せずにただ座っているだけの普電。ここで更に彼女を追い詰めるような物言いをしていく。

「僕たちは君の性格を良く知っている」

 彼女の目を見て言った楼焔に、彼女はふっと口角を上げて笑ったように見えた。実際、目元は見ることが出来なかったので、どんな表情をしていたかなど分からない。

「ねぇ、私は質問をしてと言ったはずよ? 何で説教をするのよ」

「ちょっ…!」

 彼女の態度は気にくわない所が多かったが、ほんとうにここまで頭にくるようなことは今までなかった。

 まるで、自らこうなるように仕向けているようだ。

「湖満」

「っ……!」

 思わず掴みかかろうとした彼女を蒼葉が杖を前に出し、制止した。

「何? 質問をする権限を与えているのは楼焔だけなんだけど」

 挑発的な態度の普電に対する怒りで、湖満の手は強く握られている。それに気付いている蒼葉はすぐに彼女の腕を掴み、杖は引っ込めた。

「湖満、落ち着くんだ」

「分かってる…」

 彼女は何を思っているのかは分からないが、明らかに何かを隠そうとしている。その何かに気をつかれないよう、あえて自分に非があるかのように話を反らしている、湖満はそう感じてしょうがなかった。

 普電に何を言われようとも聞き出さなければいけないと思い、また口を開こうとした時、楼焔が動いた。

「普電」

「何よ」

  パァン!

「痛っ…」

 空気が止まった。

 払い抜かれた楼焔の手は顔の横で止まり、普電の頬は徐々に赤くなっていった。そして楼焔は手を下ろして口を開いた。

「君にはいろいろと失望したよ」

「なっ!」

 彼の言葉に普電はカッとなり、眉間に皺を寄せて怒鳴る。

「何よ! 私のお陰で今回勝ったんじゃない! 私が居なかったらあんた死んでたわよ?!」

 思いっきり睨んで怒鳴る普電に楼焔は慌てることも怯むこともなく、彼女の言い分を聞く。

「…そう。君の考えていることはよく分かったよ」

 冷たい目で自分を見る楼焔に普電は身を固くする。そして、耳に届いた次の言葉は耳を疑うような内容だった。

「君は普電じゃないね? ルイの手下?」

「な、何言って…」

 一瞬にして普電の顔が青ざめ、先程までの覇気は無くなった。

 ここで黙ってないのが湖満だ。

「ちょっと楼焔、何言ってんの?! どうみたって普電じゃない!」

「たしかに、僕にも普電としか見えないな。もしかして、ここに居る普電もまた史遠によって作られた存在だと、君は言いたいのかな?」

「あぁ」

「…確かにその可能性は高いな」

「ちょっと、二人とも!」 最初の一言から一変して、すぐに楼焔側についた彼に湖満の怒りが頂点に達した。あまりにも酷い物言いをする男性二人に湖満が制止を促すが、二人はそんなことも気にせずに淡々と会話を進めていく。

「史遠の術は本物と見間違えるほど完璧。なら、彼女に限らず、他のものもその可能性があると考えられますね」

「楼焔! 蒼葉! 二人ともおかしいよ!」

「何がだ?」

「その可能性が有る限り、注意するにこしたことはない。わざわざその可能性を無視して危険な目には遭いたくないからな。それとも湖満はそうなっても構わないと?」

「……」

 思考がどんどんと最悪な方向に向かっていく。色々な感情がわきだしてしまいそうになるのを、普電は手を強く握りしめ、眼は楼焔を睨み付けた。

 そんな彼女に目を配らせ、湖満は楼焔と蒼葉に努めて冷静な声で言う。

「構わないわ。信頼している仲間を疑うほど私は薄情じゃない」

「湖満…」

 彼女の言葉に普電は目頭が熱くなったのを感じ、反射的に顔を伏せた。そんな普電に湖満は目の前まで歩みより、強く握りしめられていた彼女の右手を掴んで両手で包み込んだ。ほどいた手のひらには爪の痕が4つ付いていた。

「普電。何でいらいらしているのかはあえて聞かない、でも、私達が納得できるような答えを返してくれないと」

 真っ直ぐ、正面からそう言ってくれる彼女に顔を上げた普電の目から溢れかけていた涙が、一筋、二筋ながれだした。

 そして、湖満の肩に額を押し付けて声もなく泣いた。

「ごめんなさい。湖満、蒼葉、楼焔。ちゃんと話す」 湖満の肩から額を離し、顔を上げた普電はゆっくりと話し出した。何故こんなことをしたのか、何を思い、感じていたのか―。


この調子で書き終えることができるのか不安ですが、一度掲載したものを削除することはしたくないので、近いうちに最後まで書きあげられるように頑張っていきます。

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