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第26話

  ガァン…ガァン…

「まだか?」

「も、もう少しだってばぁ」

 苛立ちを隠せていないライクは、扉を開けようと頑張っているベルバーと湖満に尋ねた。

 扉の前には数匹の敵と頑丈な鍵が何個も付いていたが、今は扉に三個の鍵が付いているだけだ。

 他のメンバーは蒼葉やシュートゥ、ファストに傷の手当てをしてもらっていた。一人を除いて。

 ライクの横にダストが腰を下ろした。

「ライク、貴方が焦るのは分かるけど、みんなこれまでの戦いで体力を消耗しているのよ?」

「私もそれは同じだ。だからといって敵がすぐ手の届く場所にいるのに休むことはできない…湖満、下がれ。私がやるから休んでいろ」

 彼女の言葉に啓発されたのか、立ち上がって湖満に声をかけた。

「で、ですが…」

「いいから休んでこい」

 狼狽える湖満の頭をベルバーが優しく撫でながら微笑んだ。その微笑みに少し自分の顔が熱くなるのを感じ、俯く湖満。

「…わかりました」

 入れ替わるようにして扉の前に立ったライクは、横にいるベルバーに問いかけた。

「この扉の材質は?」

 彼の質問に頭を掻きながら困ったような顔をし、答えた。

「金属なのはわかるが、どうやら特殊なもんらしくて全然わからん」

「そうか…」

 肩をすくめてみせた友人をみて、ライクは深く息を吐いた。そして右手で扉を撫でるように触り、何かに気付いた。

「どうした?」

 手を扉に押し当てたまま動こうとしない隊長に声を掛ける。

「ベルバー、下がっていろ」

「…無茶するなよ」

 ライクの言葉に何かを感じ取ったベルバーは、彼に言われるまま距離をとった。

 そして、ライクは術を発動させた。




  ドォオオン

「なっ!?」

「来たか…」

 洞窟内を何かが崩れる音と爆風が駆け抜ける。決して軽くはない音、そして爆風はねっとりたしたものだった。

 ブルニアルスは爆風により前に転がり、狼狽えている。だが、グラダは瞬時に長剣を地面に突き立てたので倒れることはなく、長年の経験で冷静に状況を判断していた。

「来たって…グラダ様の息子さん達?」

 少年は爆風が落ち着いてきたところで体を起こし、身体に付いた砂を払いながらグラダに尋ねた。

 一方のグラダは砂を払うことなく、近くの岩に腰掛け答えた。

「ああ、ずっと会ってなくとも気配と術の荒々しさで分かる」

 長剣を杖に戻し、近くに立て掛ける。

「やつは司令官などやっておるが、実際は適当な人間でな」

 洞窟の入り口から複数の足音が近付いて来ているのが分かるが、二人が武器を構えることはない。

 グラダは岩に腰掛けたまま語り続け、ブルニアルスはイガードの縄をほどき、近くにあった瓶から右竜と左竜を助け出す。

「術の質が悪い。だから威力も弱い。本来ならこの術は今の五倍くらいの威力はあるはずなのだが…」

「今の…五倍…」

 老人の言葉を聞き、苦笑いを浮かべながら二匹の小さな竜を自分の腕に取り込む。

 ブルニアルスがイガードを起こそうと彼の肩に触れようとした時、何者かの術が彼の頬をかすめた。

「イガードに触るな!」

 ゆっくり後ろを振り返ると赤の着物のような服にピンクのポニーテールが印象的な少女が、こちらに剣を向けて立っていた。ブルニアルスは少女の殺気だった視線を感じながらゆっくりと立ち上がろうと手足に力をいれた。

「動くな!」

 少女は剣は向けたまま少年ににじりよる。

「お前はブルニアルスか!?」

「あぁ」

 少女の問いに躊躇うことなく答えたブルニアルスは立ち上がり、膝に付いた砂を払った。この行動は少女の気をさかなでたため、彼女は顔をひきつらせている。

「ファスト、落ち着きなさい」

 女はいつの間にか居た。ファストと呼ばれた少女の横に青のグラデーションの美しい服を纏った女が、いつの間にかファストの肩に手を置いて現れた。

「老師、探しておりましたよ」

 女の眼は一度バルタルを捉えたが、すぐに別の方向へと向けられた。

「…バルタル・ブール。ダストか」

 グラダは懐かしそうに女を見て顔を綻ばせた。だが、彼女の後ろにいる男を見て顔を固くした。

 その顔は怒りも悲しさも発してない、いたって普通。しかし、その普通がこの場には不釣り合いで異常だった。

「父上…」

「……」

 無言。男の言葉に何の反応も見せないグラダは、ただ男を見るだけ。

「お久しぶりです」

「…久しぶりだな、相変わらず術が荒くてすぐお前だとわかったわい」

 男の声にやっと答えたグラダは鼻で笑い、答えた。

「…私だとわかりながら、なぜ逃げなかったのです?」

「久しぶりに息子の顔を見たいと思ってな」

 グラダの言葉に男は顔をしかめた。

「あんたに術をかけてしまった俺にか?」

 低く言った男の声に反し、返ってきたのは優しい言葉。そして優しい微笑み。

「どんな出来事があっても息子にはかわりないからな」

 グラダの言葉に男は顔をしかめた。そして、震える声で言った。

「…あんたを殺そうとしていてもか?」

 グラダは笑みを消して腰を上げた。杖を手に一歩、歩み寄った彼はまっすぐ息子を見ている。

 一瞬目をそらしたが直ぐにグラダと向き合った。男

「お前の本心じゃないだろ? ライク」

 また一歩近づいたグラダに、ライクは何かを耐えるように踏み止まった。近くにいたバルタルはゆっくり二人から離れる。

「わしは犯罪者だからな、お前は司令官、規定を守ろうとしている。心からわしを殺したいと思っているやつが、得物を持つ手を振るわせるほど覚悟がないはずがない」

 確かに、杖を持っているライクの手は小刻みに震えていた。

 持っていた杖を長剣に変え、構えたグラダは視線だけをバルタルに向けて言った。

「親子で話したい、悪いが皆を連れて洞窟の外に居てくれぬか」

「分かりました」

 バルタルは直ぐに他の者に指示を出し、洞窟の中から撤退を始めた。イガードはベルバーとファストが、ブルニアルスはシュートゥに見張られながら、最後にバルタルがその場を離れようとした時、ライクが小さな声で言った。


『ありがとう、愛していたよ―』


 その言葉に振り返ろうとしたが、ライクの発動させた術によって頭上の岩が崩れ壁となった。

「ライク! 待っているから、皆で…だから」

 言葉全てを言い終わる前に、バルタルは戻ってきたファストに腕を引かれ離れた。



「良かったのか?」

 ライクの背後にできた壁に指を指すように長剣の切っ先をずらし、訊ねた。

「何が」

「好きだったのだろ、バルタルが」

 先程まで厳しい顔をしていた父親が、今ではすっかり気を緩めて話しかけてくるのに少しばかり、眉間に皺をよせる。

「…さぁ?」

「……」

「……」

 ライクは杖を捨て、腰に差した長剣を手に取った。それは、二人とって懐かしいものであり、出来れば二度とは見たくない物だった。

 ライクの持つ長剣は柄やつばも傷つき、刃は使い込まれたせいか手入れをしていないせいか分からない刃こぼれ、グラダのそれと一、二度と交わせただけで折れてしまいそうだ。

「自分の気持ちには素直にならんといかん。後悔するぞ」

「……」

 それはバルタルのことか、それとも別のことか。

「…わしはお前に殺られる覚悟で来た、もう抗うつもりはない」

 長剣を杖に戻し、グラダはその場に腰を下ろした。

「だが、死ぬ前に君に全てを話そう…」

 父親の言葉を聞いたとたんライクは長剣を捨て、彼につかみかかった。

「! 手紙の内容は嘘だというのか?」

「半分本当で半分嘘だ、他の者がみる可能性があったからの…聞くか?」

「是非」

 そして、グラダは語り始めた。真実を―。


作者てんぱっております。。。なんかプロップとずれてしまっててんぱっております。。。(泣)

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