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第22話

ごめんなさい。誠に申し訳ないです。公約があるにもかかわらず滞納しました。。。やはり学業との両立が思いの外難しかったのです。チャージ本編、精霊編、共に最後まで書かせていただきたいと考えているのですが、今まで以上に滞納してしまう可能性がありますので読者様には不快かと思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。また、他の作者様。滞納した私にご不満があるかと思いますが、最後まで書かせてください。よろしくお願いいたします。

 砂煙の中から飛び出してきた楼焔は、イガードの右肩から左の脇腹までを一気に斬った。

「! 貴様…!」

 その傷は深くはなく、しかし浅くもなかった。血は滲み、着ていた服もただの布となり、肌を守る役割を果たせなくなっていた。

「許さん!」

  フォン

 イガードは怯むこともなく、楼焔の心臓目がけて突いてきた。楼焔はぎりぎりのところで躱したが、反対からはイガードの蹴が迫っていた。

 イガードの蹴は楼焔の右の脇腹にめり込み、楼焔は二メートル程飛ばされた。

「く…」

 ファストがすぐに駆け寄ってきて治癒を行なう、そして刻印のことを聞いてきた。ファストの位置からだと、服が邪魔をして全然見えないのだ。

「腹部、鎖骨にはありませんでした…それで、もしかしてなのですが」

「何?」

 少し恐縮そうに楼焔が言葉を紡ぐ。ファストは機嫌が悪いのか、すぐに返してきた。

 楼焔は後ろのイガードに気を張り巡らせながら、ファストに告げる。

「イガード様は術を掛けられていないのではないかと」

 楼焔の言葉にファストは戸惑いを隠せずにいた。

「じゃあなんで私達を攻撃してくるの…?」

「寝返った…という考えが一番妥当ですかね」

「!?」

 立ち上がりファストに背を向け、イガードと向き合い、再び槍を構える。

 ファストは震えた小さな声で、楼焔の背中に問い掛けた。

「…じゃあ二番目の妥当な考えは?」

「何かしらの人質が捕られているということです」

 その答えにファストは何かに気付き、辺り見回し、何かを探した。

 しかし、その何かは見当たらなかったようで、眉間に皺を寄せた。

「そういえば、雷良が居ないわね…雷良がどこかに捕われているということね?」

 また楼焔の背中に話し掛けた。楼焔はイガードと対峙したまま、首を縦に振った。

「はい。あくまで仮想ですが…彼女を喚びださないところを見ると」

 楼焔は、ずっとイガードの遣いの刻印をその眼に映しだしていた。

「私は後者のほうが強いと考えたいわ…」

 そういってファストは手にしていた剣を再び強く握った。そう、手に血がにじむ程に。

 ファストは楼焔の前に立ち、イガードに剣を三度向けた。

「とにかく、あなたのその考えをライクと普電に知らせてきなさい、ここは私一人でも大丈夫だから」

 主の背中を見て楼焔はきびすを返して、走った。

 走り去っていく楼焔の背中を見て、イガードは笑いを堪えたような顔でファストを見た。

「仲間割れか?」

「いいえ」

 ファストはもう一度剣を握りなおし、真っすぐイガードの眼を見て問う。

「あなた、雷良はどうしたの?」

「!!」

 彼女の問いにイガードは眼を見開き、視線を自分の足元へとずらした。

「やっぱりね…」

 イガードの反応を見て、楼焔が言っていた可能性は確信へと変わった。




「! 楼焔、なんでこっちに」

 イガードに矢を放っていた普電が、背後から走り寄ってきた楼焔に気付き振り返った。もちろんその声は、ブルニアルスと間近でやりあっていたライクの耳にも入った。

 楼焔は普電の下に着くなり膝に手を置き、肩で息をしてすぐに話せる状態ではなかった。

 彼が落ち着くまでの間、普電は待つことにしたようだが、ブルニアルスは当たり前だが待ってはくれない。ブルニアルスの容赦の無い攻撃は、ライク一人でずっと抑えられるものではない。

「ちっ…フロウ!」

 力負けして押されてゆくライクを見て普電は素早く気を溜めて術を発動させた。

 電気を帯びた一羽の鳥がブルニアルスにむかってゆく、ブルニアルスはライクから離れ、間一髪のところで普電からの攻撃を躱す。

「イガード様に…刻印は刻まれていなかった」

 落ち着いた楼焔は結果を話した。そして、先程ファストと話した内容をそのまま、普電に伝える。



 楼焔の話を聞いて同意したようで、深く頷く普電。

「なるほど…確かにその考えは悪くないわ…でもこうも考えられる…それは…」

 普電が一息つく。

「彼らが偽物だってこと…」

「に、にせ!?」

 彼女の言葉に、楼焔は声が裏返った。

 彼女はさらに続けた。

「史遠は…人を作り出す禁術をも持っている…」

 その言葉を聞いて、楼焔は飛び付くように、答えを急かすかのように聞いてきた。

「…なら今回の件は!? ルイも偽物だってことは?」

 普電の眼が大きく見開かれた。

「!! ちっ…やられたわ。だったらここにはもう…ルイも史遠も居ない…もちろんこの二人も…」

 普電には苛立ったときにとる、ある癖がある。それは、自分の右手の親指を血が滲むほど噛んでしまうという行為。

 彼女は今まさに、その行動をとっている。

「一体どこに…」

 楼焔はそっと、彼女が噛んでいる右手に手を置いた。普電はその暖かな手に指を噛むのを止め、いつもと違い、大人びて見える楼焔の横顔を見る。




 ある洞窟の中、女が一人と男二人、そして洞窟の壁に埋め込まれるかのようにできた氷。その氷は人ほどの大きさで綺麗なエメラルドグリーン、そして男が氷の中に入っていた。

 外にいる男二人は両手両足を縄で縛られ、身動きのとれない状況で地面に俯せで寝かされていた。

 女は、完全に意識を失っている男に手を掛けた。その時、

「史遠! イガードを放せ!」

 もう一人の男が女にむかって叫んだ。

「あら…ブルニアルスちゃん。あなたも捕まっているというのに威勢が良いものね」

 史遠はイガードから手を離すと懐に手を入れ、何かを取出し、ブルニアルスに見せた。

「ブルニアルス、これが見えないのかしら?」

 史遠が懐からとりだしたのは、手のなかに納まるほど小さな瓶。

 その瓶の中には小さくうごめく影が二つ。

「右竜! 左竜!」

 ブルニアルスがそれを見て叫んだ。

 瓶の中にいる二つの影はブルニアルスの声に反応し、瓶の中を暴れ回る。

 一つは

「キィ」

と甲高く、もう一つは

「グゥ」

と地響きのように重みのある声で鳴いた。

「…ちくしょ…!」

 ブルニアルスは手足を動かし、自分を縛り動きを封じる縄を解こうとあがく。

 もちろん、そんなことは自分がどれだけ動こうと、不可能だということは分かっているのだが。

「やめときなさい。大丈夫よ、イガード君にもこの子達にも決して悪いことはしないわ…この方が甦るまではね」

 俯せに寝かされているブルニアルスは、眼だけで史遠の動きを追う。彼女は手に持っていた瓶を近くの岩のうえに乗せ、イガードのそばから離れて氷に手で触れる。

 氷のうえから、中の男の身体を触るかのような仕草で手を動かし、男の胸板に頬をすりつけるように氷に顔を密着させる。

「ルイ様…」

 史遠は呟くように、氷の中の男をうっとりとした眼差しで見る。

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