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第20話

ただ今、公約を果たすため、頑張り中。。。ムリなどは一切していないので、あしからず。では、このまま読んでいただけたら幸いです。

 ブルニアルスに呼ばれて現われたのは間違いなく、雷精霊のイガード・シュレス。

「イガード…」

 彼の姿を目にしたとき、ファストの全身の力が抜けた。手にしていた剣は押す力を無くし、ただブルニアルスの槍に寄り掛かっている状態になった。

 イガードの顔色が悪く、目には力が無なくなっていた。まるで生ける屍のよう。

(あの状態…少年と同じだな。やはりやられたか)

 ライクが一つの術を思い出す。史遠が使うあの禁じられた術。

「…ファスト…」

 イガードが名を呼ぶ。

「…ライク…」

 順番に、その場にいる人物の名を呼ぶ。

「楼焔、普電…」

 不自然な笑みを浮かべるイガード、目だけが笑っていない顔が仲間の名前を、

「…さよなら…」

  フゥォン

 刹那、何が起こったのかファストは分からなかった。

 目の前には槍を振り下ろしたイガード、自分はライクに後ろに引っ張られていた。

  ザクッ

「ちっ、避けたか…」

 イガードが自分の槍を床に突き刺し、また口だけで笑った。その冷たい目に鳥肌が立つ、そして涙が。

「ファスト」

 ライクがいつもと同じ声で呼ぶ、だけど、ファストの腕を掴む手には力が入っていた。

「あいつはもうイガードじゃない」

 その言葉を耳にしながらあふれ出る涙を目に浮かべたまま、目の前の男を見る。

「なに…言ってるの…」

 たとえ槍で殺されそうになっても、その事実は信じたくなかった。

 実際はわかっている。彼はもうあの頃の彼ではないということ。史遠の術にかかってしまっていること。

 史遠の使う禁術『パペット』、その名の通り人を操ってしまう術。この術は逆らうことはできない、解く方法は無いと言っていいほどだ。

 ライクの手にさらに力が入っていく。彼の一言一言が胸に傷を付けていく。

「…イガードの手紙になんて書かれていた?」

  わかっている、わかっているけど…

 ライクの言葉に耳を塞ぎたくなる。

「彼には分かっていたんだ、このような事態が起こるということ」

  いやだ…聞きたくない!

「……私もできればやりたくはない、だが、今の現状でそれ以外の打開策は皆無だ」

  いやだ、諦めたくない。だって今までずっと大切な仲間であって、ずっと思い続けていた人で、これからも傍に居たいと思った人なのに…諦めたくない!

 止まらない涙を拭うことなく、目の前の男性を見続ける。イガードの目は相変わらず冷たいまま、そして人を馬鹿にしたような笑みを顔に張りつけたままドアの前に立つ。

 ファストは何かを思い出し、普電に振り返る

「普電!」

 普電は呼ばれたことに驚きながらも、呼ばれることが分かっていたかのように話しだす。

 彼女は昔、数多く存在した禁術の研究をし、その術の解く方法を編み出したという経歴をもつ。

「わ、わかってますよ…術を解く方法はないのか、ってことですよね…」

 マイペースに話す普電に、ファストは今にも掴み掛かりそうな勢いで、普電に言葉を投げる。

「そう! あるの? ないの? どっち!?」

「ありますよ…但し」

 言葉を切る普電、顔つきは真剣なものに変わっていた。

「命の保障はありませんが…」

 その言葉を聞いて、ファストだけでなく、ライクも楼焔も顔を白くさせた。

 さらに普電は言葉を続ける。

「命の保障がないのは…術を解く者も解かれる者も…双方が危険にさらされます…」

 その後は誰も言葉を続けることができなかった。

  フゥォン フゥォン…

 イガードが槍を持ち上げ、頭上で回転し勢いをつけ、ブルニアルスは槍に力を溜めていた。

「行くぜ…」

  ダッ

「!!」

 その言葉に四人は一斉に身構え、ライクは術を発動させる。

「!」

  ドオォン

 術がイガードとブルニアルスを直撃したようだ、術の衝撃による砂煙で二人の姿は確認できない。

 それを見てファストは、赤く充血した目でライクを睨む。

「…ああしなければ、私たちがやられていた」

 ライクが冷たい目で返す。

「だからって…!」

「ファスト! これは戦いだ、生きるか死ぬかの戦場。そこに私情を挟むな!」

 ファストの言葉を遮ってライクは怒鳴った、彼女に言い聞かせるとともに自分にも言い聞かせていた。

 怒鳴られた彼女は下を俯いた。

「ライク様、ファスト様、少し落ち着いてください…一つ、試したいことがあるのでご協力を…」

 普電が二人の間に入って話す、『彼女の試したいこと』というワードがライクもファストも気になった。

 砂煙が晴れてきた時、その中で、桜焔の目に何か光るものが映り込んだ。

「み、みなさんきます!!」

 桜焔が叫んだ次の瞬間、槍が飛んできた。四人の間を擦り抜け、反対側の壁に突き刺さる。

  ヒュッ ガッ

 四人が目の前のドアを見る。砂煙が消え、現われたのは。

「一人、だけ…?」

 そう、ドアの前に立っていたのはイガード一人だけ、ブルニアルスの姿が見えない。

「無視…しないでよ」

 背後からの少年の声に全員が振り返る、少年は壁に突き刺さった槍の柄に乗っていた。

「はは、もっと遊ぼうよ。ゲームは楽しまなきゃ」

 『ゲーム』。その言葉は少年の口から発せられると、鳥肌が立つほど恐ろしいものに聞こえた。

 少年は背に生えている羽を広げ、宙を舞う。

「あはは、今度はそっちの番だよ。ほら、きなよ」

 楽しそうな笑みを顔に張りつけたまま、両手を横に広げた。

「…ふん、後になって言ったことを後悔するなよ」

 それに頭にきたのか、ライクは杖を構え、気を溜めはじめる。

 それを止めたのは普電。

「ライク様…冷静になってくださいと…今さっき言いましたよね?」

 普電は弓を構え、その切っ先をライクに向ける。ライクはそれに気付き、杖から右手を離し、溜めていた気を外に放出させた。

「すまない」

 ライクは両手を上に挙げて見せた。普電はそれを確認した後、構えていた弓を下ろす。

「分かっていただければいいんです…」


「さて…試したいことの説明をします…耳を貸してください…」

 彼女に言われるがまま、三人は耳を傾けた。

「私がこの『パペット』を調べていた時、一つのことが分かりました…。それは、この術にかかると…かかったことを示す印が…身体のどこかに刻まれているはずなのです…。理論的には…この印を消せば術は解けるはず…まずはその印を…二人の身体から探しだしてください…」

 三人は普電の説明と指示に深く頷いた。しかし、三人の顔は晴れない。それは一つの疑問が引っ掛かったからだ。

 それを聞こうとライクが口を開いたとき、ブルニアルスがそれに被せるように聞いてきた。

「ねぇ、早くしてよ。待っているだけのゲームはつまらないじゃないか」

 相変わらずブルニアルスは心の無い顔で笑っている。イガードは表情を変えずに、その場に立っている。

 その言葉に触発されたかのように、普電が弓を構えた。三人もそれぞれの武器を構え、戦闘体勢にはいった。

「わかってる…さあ、始めましょうか…?」

 彼女は少年に負けず劣らずの笑みで返した。

「ターン制ではなく…普通にやり合いません…?」




「そういうゲームもいいね…退屈しなくていい」




 それぞれの思いがある者には笑い、ある者には表情を曇らせた。

さぁ、ライクとブルニアルスは助けられるのか?次回も引き続き六人のお話です。

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