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第10話

表現しきれていない、中途半端な場面があるかもしれません。ごめんなさいm(_ _)mこのまま読んでいただけたらうれしいです。

 美しい緑が輝く森の中でシュートゥは精霊達の報告を受けた後、泉の近くを歩いていた。

 その泉の近くの大樹の枝に小さな精霊が座り込んでいた。小さな精霊は落ち込んでいるように見えた。

 シュートゥは僅かながら、その精霊から何かを感じ取った。

「そんな所で何しているの?」

 座り込んでいる彼女の隣に立ち、優しくその精霊に話し掛けた。小さな精霊の目には溢れんばかりの泪が。

「あっ、長老様・・・」

「何かあったの?悩み事?」

「私・・・全然皆についていけなくて、テストがあるといつもビリで・・・お姉ちゃんには馬鹿にされるし、私って本当に何やってもダメな精霊で・・・落ちこぼれ組なんです!」

 小さな精霊―ふっくらとした輪郭にかかる長い髪はエメラルドのように太陽の光を受け輝いている。―は声を震わせて嘆いた。

 そんな小さな精霊の横にゆっくりと腰をおろす。

「確か・・・ナジュールちゃんよね?」

「なんで私の名前・・・」

 泣き腫らした真っ赤な目をシュートゥに向ける。

「ちゃんと森の住民達の名前は全員把握してるわ、だってここの長だもの」

「・・・ふふっ」

 シュートゥがおもしろおかしく振りを付けながら言うものだから、ナジュールは思わず苦笑してしまった。

「ナジュール」

「はい・・・?」

「私も昔、今の貴女のような時期があったわ」

「え?長老様が?」

「信じられないって顔ね、無理ないわよね。今じゃこんな立場にいるんだもの」

 正直、ちょっと驚いた。長老様にもそんな時期があったなんて、昔から完璧な人だったと思っていたから。

「私も落ちこぼれだったんだよ。しかも筆記はいつも零点。実技は失敗ばかり。いつも皆の後ろにとっついているような子供だった」

 その時の長老様の目はなんだか寂しげで、いつもの明るさが無くなってしまった。こんな長老様は見たくない。そう思った。

「でもね、このままじゃいけないって思って自分を変える決意をしたの」

 にっこりと微笑んで私のほうを向く。

「ナジュールは自分が好きですか?」

 長老様の突然の質問。

普通の質問なら普通に答えられたけど、内容がよく理解できなかったから自分はかなり間抜けな顔をしていたと思う。自分を好きかと問われても大抵の人は答えに詰まったり、嘘でも『いいえ』と返すだろう。私の場合は自分で自分が好きなのか嫌いかなんて考えたこともなかったから分からない、意味も理解できなかった。

「生きている人たちのなかに自分のことが嫌いな人はいないと私は思います。だって好きだからこそ生きて、多くの人は自分を変えようと必死なのでしょう?口では嫌いだと言っている人がいますが、それは本心、本音でしょうか?ただ真っすぐに自分のことが好きだと言えないだけであったり、他人と自分を比べて自信がなくなったからそう言っているんだと私は思います。他にも理由はあると思いますが」

 なんでだろう。なんでこんなにもポジティブに考えることができるのだろう?

「実は今の同僚からの受け売り。この言葉が無かったら私は考えを変えることをしなかったと思う。他人と自分を比較してきた自分をね」

 そう言って笑う長老様を見て少し気が抜けた。けど私は

「・・・長老様やお友達の考えはプラス思考で良いと思います。けれどみんながみんなそういう考えには繋がらないんです」

 更に暗くなっていくナジュール。なんだか全てにやる気を無くしているかのような発言だ。

「そうね、考え方は人それぞれ違う。だから楽しい、おもしろいんじゃない?」

 今の私には長老様の言葉さえ綺麗事に聞こえて、なにも信じられなかった。

「・・・私のことなんて本当に理解してくれる人なんていないってわかりました、私の周りにはそう言ってくれる人もいませんし・・・あっ」

 長老様に失礼な態度をとってしまったと気付いた時には遅かった。全てを言った後だったから。恐る恐る長老様を見たけど、長老様は怒っている様子はなくキョトンとしていた。

「ナジュール」

 どきっとした。怒られると思ったから。

「これから何かあったら、些細なことでもいいから私に話して、そうしたらあなたの事を理解する人になれるわ。私じゃ役不足かしら?」

「・・・いいえ・・・ありがとうございます」

 長老様の優しい言葉を聞いて目の前が見えなくなって、顔がぐしゃぐしゃになった。すごい嬉しかった。


 緑の小さな精霊と水色の大きな精霊は暫らく肩を寄せ合い話していたが、夕刻になると二人は手を振り合い違う方向へと歩いていった。




 日が暮れ、夜が近づいてきた。ある部屋からアイラは太陽のオレンジと月(夜)の暗い紫色が交じった不思議な空を眺めていた。

 ゆっくりと音をたてながら戸が開いた。人が一人室内に入る。

「アイラ、調子は?」

 問われてやっと室内に自分以外の人がいることに気付いたアイラは、聞き覚えのある声に振り向き答える。

「大丈夫だよ。そういえば今日、ノイのお友達が来てくれたんだよ」

「え!?オレの?」

 アイラは唐突に今日、彼女の部屋を訪ねてきたコリーという男性の話をはじめた。

「うん。とっても優しい人だったよ、そのお花も彼がくれたの」

「でもオレ、誰にもこのことは・・・」

 ノイのきょとんとした顔を背に、窓の前に置いてある花に目を向け微笑む。 コンコン

「はい?」

「失礼します」

 ガチャ

「アイラさん。あなた宛てにお手紙が」

 看護婦が一つの小さな、けれど立派な封筒をアイラに差し出す。

「ありがとうございます」

 手渡された封筒の差出人を見てアイラは動きを止めた。

「どうしたアイラ?中身見ないのか?」

「う、うん」

 ノイに促され封を切る。中から二枚の紙を取出し再び手が止まる。

 確かに彼らから手紙がくることなんて一億分の一に等しいほどの確立。奇跡に近い。送り主は魔法・召喚士を育成する所ではトップの名門校からの入学推薦書だった。

 アイラはノイにも分かるように声に出して読み始めた。

「拝啓 新緑の頃いかがお過ごしでしょうか。今回手紙を送らせていただいたのは、アイラ・インフェルノ様に我が学園に是非入学していただきたく、失礼ながらも手紙を出させていただきました。我が学園のリーガス教授が精霊占術で魔術・召喚術に素質があるものを選出した結果インフェルノ様が選ばれました。少しでも興味がありましたら、この手紙と一緒に入っている鍵をお受け取りください。心よりお待ちしております 敬具」

 筒を縦に振ると、手の上に一つの小さな銀の鍵が落ちてきた。長くその鍵を見ていると、心が奪われそうになった。

「で?アイラはどうしたい?」

「え?!私は・・・」

 黙ってしまったアイラをノイは優しい目で答えをまつ。彼女の心の中では既に答えが出ているようだが、言いづらいのか上目遣いに何度かノイを見る。

「私、行くよ。王都に行く」

「そうか」

 ガタン ノイは立ち上がり扉にむかう。

「ノイ?」

「当分会えないんだよな」

 ドアノブに手を掛けたまま、振り返りもせずに言う。

「そうだけど、ちゃんと帰ってくるよ」

「・・・無理しなくていいよ」

「?」

 バタン 意味はわからないけど、重く冷たい一言。その日からアイラが村を発つまでノイはアイラと話そうとしなかった。

今後とも深海瑠璃をよろしくお願いいたします(^-^)ゝ

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