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秋の季節に

作者: α


 ずっと変わらないものが素晴らしいことかもしれない

 おじいちゃんが言っていた


 季節は秋で庭の木々の葉っぱは緑から赤茶色に変わっていた

 おじいちゃんは秋の季節になると毎日庭に出てこの移り変わった葉っぱたちを見ていた

 庭の椅子に腰をかけて、昼間からというのにお酒を飲み、タバコを吸った

 あんなに苦い飲み物を大人はなぜ飲めるのかが不思議で仕方なかった

 おじいちゃんには昔、最愛の人がいたらしい

 それもおばあちゃんと結婚する前のことだ

 おじいちゃんは太平洋戦争に行く前にその人に出会った


 おじいちゃんが21歳の時、戦争の兵隊として徴兵された

 おじいちゃんにはそれまでずっと仲が良かった幼馴染がいた

 吉田よねこさんという女性だった

 

 おじいちゃんの家とよねこさんの家は近所でお母さん同士がとても仲が良く

 知らず知らずのうちにおじいちゃんとよねこさんは仲良くなっていった

 小、中、高と学校も同じでよく2人で遊んでいた

 おじいちゃんはいつしかよねこさんのことを好きになっていった

 おじいちゃん曰く、よねこさんも同じ気持ちだったそうだ


 そして、おじいちゃんが21になった時、2人は離れ離れになった

 

 戦争が終わり、おじいちゃんは運よく生き残り、家に帰れた

 しかし、ご近所さんたちがおじいちゃんを中傷した

 なぜなら、戦争でお国のために死んでいった人たちがいたからだ


 おじいちゃんはよねこさんに会いたかった

 また会うためには死ぬわけにはいけなかった

 だから周りから何を言われようが構わなかった


 おじいちゃんが家に帰ったときには、もうよねこさんの姿は無かった

 激しい空襲で落ちてきた建物にうもれてしまったんだとよねこさんのお母さんが話してくれた

 

 もし、おじいちゃんがずっとかわらずによしこさんと一緒にい続けることができたなら

 もし、そもそも戦争なんか起こらず、平凡な毎日が繰り返されていたならば

 ぼくはずっときみを愛し続けただろう

 とおじいちゃんは言っていた


 来年もまた秋の季節が巡り

 毎年、巡りめぐってくる侘しい秋の到来を

 おじいちゃんは心の底から待っているのかも知れない


 

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