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あれから、五年が経った。俺は二十三歳になった。五年の間に、事態も少し変化した。
試作品が完成させた祖父たちはデモンストレーションとして、イベントを開いた。操縦は説明を受けていた俺が務めた。デモンストレーションを成功させ、もっと世間に関心をもってもらうため、また、試作品の稼働状態を見て改善点を見つけるためである。
デモンストレーションは成功し、政府に興味を持ってもらえた、と祖父が嬉しそうに話していたのを覚えている。だが、改善点がなかったわけではない。ロボの機動性と弾丸とモーターの熱の兼ね合い。ロボは直線的な走行は速いのだが、小回りが効かないのが難点である。これは広い街並みなら問題ないが、住宅街となると路地に逃げ込まれると撃退が難しくなる。
思い悩んでいた祖父たちを救ったのは、政府公認の研究員たちだった。彼らは普通の殺虫剤が効かなくなったので、より強力な物を作っていたのだ。だが、新型の殺虫剤でも殺すまでにはいかない。その代わりに、奴らの好きな臭いを開発し、奴らをおびき出すことに成功したのだ。
一番の改善点はモーターの熱と弾丸との兼ね合いである。奴らには普通の弾丸は効かないのは分かりきっていることである。そこで採用されたのが、氷の弾丸。鋼の甲羅をそんなもので打ち抜けるとは、初めは思わなかった。だが、純粋な水から作られた水百パーセントの氷は、鋼鉄の三倍の硬さがある。
ウォーターカッターという案もあったらしいが、それでは射程距離が調節しにくく、道を傷つけるということで却下になった。
何よりの問題は、モーターの熱が氷を溶かしてしまうところだった。起動時は問題なく稼働するが、三時間もすればタンクの氷が水に変わってしまう。そこで、背中に積んでいたタンクを両肩に移し、胴部に搭載されていたモーターを、胴と背中、両脚の四つに分けた。こうして熱源から離すことで氷の弾丸が溶ける問題をなくした。
そうして出来たのが、対G型戦闘機、コッコローチキラー――通称CKである。今は五台が制作されている。
そして、祖父が死んだ。四台目の製作途中に逝ってしまった。老衰である。作業員たちは祖父を失った悲しみを抱きながら、遺志を継ぎ、五台目まで完成させた。
そんなこんなで、俺たちはこの日、反撃の狼煙を上げる。
「用意できた?」
ユニフォームに着替えた俺を松田さんが呼びに来る。
「勿論」
俺は松田さんの後について会議室に入った。会議室には俺以外の操縦士四人と、整備士たちの顔がある。俺は空いていた席につき、松田さんは全員の前に立った。
「全員が揃ったから、今回の作戦の説明をするわ」