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自然に感嘆の息が漏れる。
そこにあったのは、巨大な板。いや違うこれは足の裏だ。仰向けに寝かされているのだ。こちらからでは足の裏しか見えない。一対の巨大な足の裏、研磨された傷一つない鉄壁には、左右に大型トラックの車輪が備わっている。爪先がすこし上を向いている。
俺は足の裏から全体が見えるように右の壁際まで移動してみる。
横から見たこの巨大な物体――全体を見ると、ロボであることがわかる――の全貌がわかる。
足の大きさに合わせた太さを持った脚がスラッっと伸び、腰の部分がなく直接胴体に接続されている。胴体の上には胸が乗っかるように付いている。胴体から胸に移ると、コックピットだろう突起した部分がガラスに包まれている。あそこから外を確認するんだろう。頭はなく、肩から伸びる腕の先は銃口になっている。百八口径ぐらいはありそうだ。背中には胸から胴にわたりタンクを積んでいる。装甲が角張って、全体的に太く見える。色は発光しているような白銀。北海道の雪景色のようである。
これが祖父たちの作っていたロボ――人類が反撃するための、武器。
そういえば、祖父たちの姿が見えない。作業の音はしているから何処かにいるはずなんだが。コリーは尻尾を振りながら俺の方を見上げている。もう少し前に行ってみようか。
「わああああ!!」
俺が歩を進めようとしたとき、背後から出てきた手に肩を掴まれ、耳元で大声を出された。
「うわあぁぁぁ!!」
恥もなく出た俺の叫び声が建物の中を反響していく。腰を抜かした俺が後ろを振り返ると、青い作業着の女性が口元を押さえながら、笑っているのが目に入る
「ちょっと! 松田さん何するんですか!?」
「いやぁ、何かこそこそしている奴がいると思ってさ」と松田さんは、にやけた顔で答えた。
松田さん――本名は松田千佳さん。この研究所というか工場で働く立派な技術士の一人だ。確か専行はロボット工学だったはず。年は俺の三歳上なので二十二だったはず。大学を卒業してから住み込みで働いている。髪を邪魔にならないようにボブショートにして、気休め程度に薄く化粧している。重労働が多いのか作業着の上からでもスタイルのいいことが分かる。まぁ胸が少し寂しいと言えば寂しいが。身長は少し小さく百六十五ぐらいなので百七十の俺と話していると、自然と上目遣いになる。大らかで悪戯好きなところもある少し目の大きい顔。
言い忘れていたが、祖父たちのただでこの仕事をやっているわけではない。勿論、政府など大きな機関からもらっているわけではないが、幾つかの小さな機関から支援してもらっている。そこから給料や材料費を出している。
話が逸れてしまった。