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アメリカ全土が私の知恵で輝き、かつて私を追い出したボストンの兄から救済を求める手紙が届いた件

印刷所と『貧しいリチャードの暦』がもたらした成功の波は、フィラデルフィアの小さな街から溢れ出し、アメリカ植民地全域を飲み込む勢いで広がっていた。どこへ行っても私の暦が置かれ、私の格言が引用され、人々の生活が私の提唱した合理的で勤勉なスタイルへと変貌していく。


街の経済は私の印刷所を中心に強固なネットワークを築き、商業的な成功は盤石のものとなった。情報の流通を握ることは、民衆の思考の基盤を握ることに等しい。私は若きカリスマとして、アメリカという新大陸の知の象徴となっていた。


そんなある日、印刷所の机に一通の封書が届いた。差出人の名前を見て、私は微かな溜息を禁じ得なかった。ボストンの兄。かつて私が丁稚として働き、私の才能に嫉妬して理不尽な暴力を振るい、私を家から追放した張本人だ。


「フランク、顔色が優れないようだが、何かあったのか?」


商会の帳簿をチェックしていたウィリアムが、私の気配を察して顔を上げた。私は封書を彼に放り投げた。中身を読んだウィリアムの眉が、信じられないものを見るかのように跳ね上がる。


「これは……。経営不振による印刷所の閉鎖寸前、かつての弟に助けを求める泣き言か。フランク、これをどう処理する? 君にとって思い出深い場所とは言い難いだろう」


兄の手紙は、かつての傲慢さが嘘のように消え失せ、すがりつくような卑屈な言葉で埋め尽くされていた。自分の印刷所が立ち行かず、借金取りに追われ、最後には私の成功を耳にして、かつて縁を切った弟に救済を求めてきたのだ。


私はインク壺にペンを浸し、窓の外を流れる活気あるフィラデルフィアの街並みを見つめた。私が追放され、無一文でこの街に漂着したあの日、絶望の中にいた私に、未来を切り開くためのすべての原動力は備わっていた。兄が私を追い出したことは、結果として私を自由にし、さらなる高みへと押し上げるための「必要な試練」だったのだ。


「ウィリアム、ボストンに行こう。僕の成功が、どのように彼らの目に映るのかを確認しに行く必要がある」


ボストンへの旅路は、かつて夜逃げした時とは比較にならないほど優雅なものだった。ウィリアムが手配した馬車は、植民地で最高の品質を誇り、私たちは道中で各地域の有力者たちから歓待を受けた。


かつて私を「何者でもない丁稚」として扱った親戚たちが集まる屋敷に到着したとき、彼らは私の変貌ぶりに驚愕し、言葉を失っていた。仕立ての良い衣服に身を包み、堂々たるオーラを纏った私を前に、彼らはかつての軽蔑の眼差しを、恐怖に近い畏敬へと変えていた。


兄は、埃にまみれた印刷所の奥で、痩せ細った姿で私を待っていた。彼が私を見た瞬間に浮かべた表情は、驚きと、それ以上に深い羞恥心に満ちていた。


「フランク……まさか、本当にお前が来るなんて」


「久しぶりだ。状況は手紙で読んだ。印刷所を畳みたいという話だったな」


私は部屋を見渡した。古い機材は手入れもされず、効率も悪い。ここには現代知識の欠片もなく、ただ停滞と古い慣習だけが澱んでいる。兄は私の足元に膝をつき、絞り出すような声で言った。


「ああ、私の負けだ。お前を追い出し、罵倒したことが、どれほど愚かなことだったか、ようやく理解した。頼む、この印刷所だけでも救ってくれないか。お前の成功のやり方を、少しでもいいから貸してくれ」


かつて私を叩いたその手が、今では震えながら私の靴に触れようとしている。私は椅子に深々と腰掛け、彼をじっと見つめた。復讐などという低俗な感情は、今の私にはない。ただ、彼らの器の小ささが、自分をどれほど狭い場所に閉じ込めていたのかを、残酷なほどに浮き彫りにしただけだ。


「いいだろう。だが、君の印刷所としてではなく、僕の商会の末端として組み込む。君たちの古いプライドは捨てろ。明日から僕が指導する工程を、一から学んでもらう」


兄は、私の言葉を聞くと涙を流して感謝した。彼は己の矮小な自尊心が、どれほどの機会を喪失させていたのかを痛感し、心からの謝罪を繰り返した。


私はウィリアムに目配せをした。ウィリアムは手際よく契約書を取り出し、彼らの再起のための最小限の条件を提示した。それは、彼らにとっては再出発のチャンスであり、私にとっては商会の地方拠点を確保するための合理的な一手だ。


「フランク、これで納得したかい? 君の慈悲深さは、時として相手を再起不能にするほど厳しいものだが、彼らにはこれ以上ないチャンスだ」


帰りの馬車の中で、ウィリアムが私に問いかけた。私は窓から流れる風景を眺めながら、不敵に微笑んだ。


「僕が望んでいるのは、誰かを叩き潰すことではない。僕の理想のインフラが、この国全体に浸透することだ。彼らの印刷所も、僕のシステムの一部になる。それだけで、彼らは僕の成功の恩恵に預かることになるんだ」


かつて私を追い出した者たちが、今では私の傘下で働き、私の暦を刷り、私の格言を世に広めることになる。これこそが、圧倒的な実力による「聖人」のざまぁだ。私が手にした財力と、圧倒的な知の力の前では、過去の因縁など取るに足らないエピソードに過ぎない。


アメリカという広大な大地に、私の名前を刻んだ新しい時代の印刷機が、リズムを刻み始めている。ボストンでの出来事は、私の物語の通過点に過ぎない。私はウィリアムと肩を並べ、次の目的地へと想いを馳せた。


知識を広め、社会を効率化し、誰もが豊かになれる国家を創る。その目標に向けた道のりは、まだ始まったばかりだ。私はペンを握り、日記の次なるページに、新たな成功への設計図を書き記し始めた。最高の仲間、最高の経済、そして揺るぎない名声。すべてを手に入れた今、私はもはや誰にも止められない。私の歩む道は、どこまでも明るく、希望に満ち溢れている。

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