第一章 出会い
ーーーだから、その日も
いつも通り、階段を上がり三階の窓際へ向かう。
いつも通り壁に寄り掛かり、
床へ座ろうとしたとき、窓と向かい合う部屋から"気配"を感じた。
肩が大げさなほど跳ねた。
ここ数日だったが、青日がいる間はずっと空だったはずだ。
人なのか、妖なのか。
青日は判断がつかないまま、恐る恐るドアノブに手をかけた。
ゆっくり音を立てずに中を覗き込む。
中では二人掛け用のソファーに足をはみ出したまま眠っているーー男がいた。
人の気配とは異なる気がした。だからといって、あの男が妖であるという確証も持てず扉を閉めた。
胸の奥が、嫌な音を立てて鳴り始める。
ここが安全な場所だった。青日にとってなくてはならない安息の場所になっていたから。
震える手を、握ることで誤魔化しその場から離れるべく歩き出した。
大学の門まで急ぎ足で向かい人の流れから抜けた途端、空気が変わった。
昼休みでざわついた気配が遠のき、代わりにーー背後から、粘りつくような視線を感じる。
青日は反射的に足を停めそうになりながらも、すぐに思い直した。
(見るな)
視線を合わせたら、終わりだ。
それは、事故の後嫌という程学んだ事だった。
妖にはいくつかの種類がいる。
目を合わせただけで追ってくる者。
理由もなく執着してくるもの。
そして、ただそこに在るだけもの。
今はーー二つ目だ。
足を停めずに動かして大学を出る。振り向かなくても付いてきていることはわかった。
青日は人通りの少ない道を選び、足早に歩きだした。
背後の気配には気づいていないというように、走らずただ早足で近くの神社へのルートを思い浮かべながら歩く。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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