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序章
母親はベッドの脇の椅子に腰を下ろすと、青日の手を離さないまま、何度もその顔を確かめるように見つめた。
「ほんとうに…目が覚めたのね」
声は掠れていて、泣いていたことが伺える。
「…母さん」
青日は自分の声に、違和感を覚える。そして現在の状況にも。
青日の頭の中では、いつも通り部活を終えて帰宅している道中での信号待ちの交差点…だった。
「どれくらい…?寝てた?」
母親は一瞬だけ言葉に詰まり、視線を落とした。
「…二週間よ」
二週間。
青日はその言葉を頭の中で反芻した。
「…そんなに?」
信号待ちでの交差点で途切れている記憶は、つい先ほどの様でも母親の見たことない弱った表情を見ればそうではないことは理解できた。
「…大会」
無意識にこぼれた言葉に、母親は顔を上げる。
青日は3年生が卒業したあと、2年生へ昇級してすぐレギュラーに選ばれた。
初めての公式戦までひと月だった。二週間経っているのなら、もう大会まで半月。
青日は、少しだけ視線を逸らす。
「バスケ…もうすぐ大会だったんだ。」
母親はすぐに察したようで、困った様に笑う。
「しばらく…しばらく運動は出来ないわよ。二週間も寝ていたのよ」




