第9話・課外学習:泉ヶ岳討伐戦⑥
大型熊型魔獣【グレートコディアック】
危険度Bに分類され、この泉ヶ岳ゲートで観測されるはずのない魔獣だった。
その巨体が、次に狙いを定めたのは腰を抜かして倒れ込んでいた絢だった。
「市ノ瀬さん、逃げて」
「乃木さん……こ、腰抜けちゃった……!」
魔獣は、巨大な一歩でじわりじわりと絢に近づく。
しおりは必死にライフルを連射。しかし――命中しているのに、まるで効いていない。
分厚い皮膚と毛皮に弾かれているのだろうか、魔物はしおりの方に見向きもしない。
そして、
「……あっ、弾が……!」
しおりのライフルの弾が切れ、絢を助ける手段が途絶えた。
振り上げられる巨体の右前足。
爪が陽光を受け、鋭い光を放つ。
「い、いやぁぁ」
絢に向け右前足が振り下ろされる、その瞬間。
「市ノ瀬さーん」
バァァン!
「グアァァァ!!」
突然の銃声と共に、グレートコディアックの苦悶の咆哮が山に響いた。
「えっ........」
しおりが音のした方を振り向くと――
「........世渡くん!?」
翔馬が銃を構え立っていたが、その場に崩れ落ちた。
放たれた弾丸は見事に左目へ命中し、グレートコディアックの視界を奪っていた。
左目から血を流しながら、グレートコディアックは怒りに震え、標的を翔馬に変更する。
「世渡くん」
しおりは無意識に翔馬の方へ走り出す。
翔馬の傍に着いた瞬間、しおりは彼のライフルを強引に取り上げる。
「世渡くん、借りるわよ」
彼女は右目を狙って連射しようとする。
だが、焦りからか銃弾は当たらず、木々の枝葉を無意味に吹き飛ばすばかり。
「ダメッ、焦っちゃダメってわかってるのに......」
普通、危険度Bの魔獣はBランクハンター数名で討伐するのが鉄則。
今、この場にBランクなのはしおり一人。
焦りは当然だった。
じりじりと距離を詰めるグレートコディアック。
ついにライフルの弾丸も尽きた。
もはや、打つ手なし。
グレートコディアックがしおりと翔馬に攻撃を仕掛けようと右前足を振り上げた。
しおりは翔馬を庇うように、覆いかぶさる。
しおりが、死を覚悟したその時――
ズンッ!
グオォォォ!
何かが“切り落とされた”音。
続いて魔物の苦悶の咆哮。
「えっ!?」
そこには、グレートコディアックの右前足を切り落とし、片手で長剣を構える神堂の姿があった。
「神堂さん!!」
「遅くなった。乃木、こいつは俺に任せろ。お前は生徒の状態を確認しろ」
「はい!」
しおりに指示を出した後、神堂はすぐさまグレートコディアックに駆け出した。
――Sランクに最も近い男、神童龍平。
ハンターの頂点とされるSランクへ昇格するには、品行方正と強さが必要だ。
強さの基準は危険度Aの魔獣を一人で倒せること。
その彼にとって、危険度Bの魔物など――
スパッ!!
神堂が一閃した瞬間、グレートコディアックの巨大な首が宙を舞い、そのまま巨体は静かに地に崩れ落ちた。
「こちら、神堂」
神堂は、右耳に着けている通信機で話し出す。
『.........はい、管理室』
「大型魔獣討伐完了。生徒四名重傷。至急救急ドローンを」
『........了解、至急送ります』
通信が切れ、神童は翔馬へ駆け寄る。
「大丈夫か!?......頭から血、胸も強く打ってそうだな。乃木、そっちはどうだ?」
「犬童くん、愛宕さんも頭から血、身体を強く打ってると思います。ただ、諏訪くんはスーツに爪痕が......」
神童は真の傍に駆け寄り、傷跡を見る。
「ふむ........さすが学校支給のスーツだな。防御に特化してる分、爪痕はついてるが、肉体の方は軽傷だな」
「はい」
「あとは、ドローンを待とう」
数分後、救急ドローンが到着し、翔馬たちは次々と搬送されていった。
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課外学習から一週間が経った。
「ふぁぁあ........」
あくびを噛み殺す環太。
翔馬、環太、真の三人がいる男子病室のディスプレイからは、オンライン授業を担当する教師の声が流れている。
『おい、犬童。オンライン授業だからって気を抜いてるんじゃないぞ。こっちから見えてるからな』
「す、すみません!!」
課外学習での大怪我により、五人はそのまま入院生活を余儀なくされ、病室は男子と女子に分かれている。
怪我の具合は――
翔馬・環太・真央が全治三週間、真が四週間。
そして絢は、身体より“心のダメージ”が大きく、最も深刻と言っていい状態だった。
授業が終わると、環太は大きく息を吐きながら天井を見上げる。
「……入院飽きたな、翔馬」
「仕方ないだろ、怪我人なんだから」
「わかってるけどよ......しかしさー」
「んー?」
「俺たち........あんなバケモンと戦わなくちゃいけない職業なんだな」
環太の言葉は、普段の軽口とは違い、重く沈んでいた。
「........そうだね」
「あの時、これくらいの怪我で済んだのって、逆に運が良かったのかもって思うわ」
その言葉に真が応える。
「これくらいの怪我で済んだのって、ハンタースーツのおかげだよ。僕のこの傷だって........あのハンタースーツじゃなかったらどうなってたか」
真は、自分の胸元の傷を押さえた。
「........しかしよー、絢のやつ、大丈夫かな?このままハンターやめちまうんじゃないか?」
「どうだろうね。どこまで心に深手を負ったことか、本人しかわからないし.......」
三人の空気が少し重くなった、その時だった。
病室のドアが開き入ってきたのは担任の飛島だった。
「おー、だいぶ元気になったみたいだな」
「先生、そう見えますか?」
不貞腐れた顔で返す環太。
「ハッハッハ、まあそうだろうな。だが、お前らにいい差し入れ持ってきたぞ」
そう言って取り出したのは、一枚の光沢あるチケットだった。
「........何ですか??」
真が首を傾げる。
「乃木ハンターからお前ら五人にって預かった、来月宮城で行われる【Honey☆Ripple】のライブのチケットだ」
「えっ?ハニリプ!?」
翔馬は、そのチケットがどれほどの価値を持つか、すぐに理解した。
一方、真はまだ状況を飲み込めていない。
そして環太は――
「…………」
一瞬、完全に固まり次の瞬間、爆発した。
「うおぉぉぉおおおおおお!!!!!」
叫びながら跳ね起き、そのまま白目を剥いてベッドに倒れ込む。
「環太ーーーー!」
翔馬のむなしい叫びが、静かな病室にこだました。
この度は読んでいただきありがとうございます。
この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。
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