第7話・課外学習:泉ヶ岳討伐戦④
泉ヶ岳ゲート脇に併設された管理棟。
その一室【管理室】には壁一面に多数のモニターが並んでいた。
中央には、現在【泉ヶ岳ゲート】内を進む学生たちをGPSで捉えた位置情報。
その両脇には、追跡ドローンがリアルタイムで撮影している各班の様子が映し出されている。
「今年も無事に終わりそうですかね」
中央モニターに視線を向けながら、皆方高校校長の衣笠は安堵の息をつく。
衣笠は、五十代半ばで綺麗に整えられた口髭と、落ち着いた渋い白髪が印象的で、自然に背を伸ばしたその立ち姿に美しさが際立つ。
落ち着いた低音の声と、穏やかながらも鋭い眼差しは、教育者としての深い洞察力を感じさせた。
「ええ。今のところ大きなトラブルはありません」
そう答えたのは、翔馬たち二組担任の飛島。
飛島は教師らしからぬ、がっしりとした体躯を持つ強面の男。
常に目を細め、周囲を威圧するようなその雰囲気は、彼が歴戦の元ハンターであることを無言のうちに物語っている。
「一番奥まで進んでいるのはどの班ですか?」
「二組三班です」
「ほう、確か乃木ハンターの班ですよね」
「そうですね」
「最後に出発したのに一番奥に進んでるなんて...優秀ですね」
「あの班は一学年の中でも精鋭を揃えてますから」
衣笠は興味深そうに目を細める。
「詳しく聞いても?」
「歴代一学年の中でもトップレベルの射撃技術を持つ世渡。近接戦闘成績一学年トップレベルの犬童。女子成績上位の愛宕、市ノ瀬。そして、Sランクハンター諏訪尊の息子、諏訪真の五名です」
「なるほど……乃木ハンターに忖度した選抜ではないのですか?」
「そう思われても仕方ありませんが、顔合わせも当日のみで、満足な打ち合わせができませんでした。そのため学年で一番優秀なメンバーを集めたというのが理由ですね」
「なるほど、よく考えていますね...しかし、飛島先生のクラスにそんな優秀な生徒が集まってるのもすごいことですね」
「恐縮です」
衣笠は、ゆっくりと腕を組み画面に映る五人の若者を見つめる。
「しかし、そんな優秀だと聞くとこの五人の今後が楽しみになりますね」
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ドサッ。
突然の音と共に、絢がお尻からその場にへたり込んだ。
「市ノ瀬さん、大丈夫」
しおりが素早く駆け寄る。
「お腹空いたぁ......」
お腹を両手で押さえながら、絢は弱々しい声で訴える。
ゲートを通過して約二時間。
時刻は13時を回ろうとしていた。
「そうね........前の休憩から一時間経っているし、ここで食事にしましょう」
「やったぁ」
しおりが許可を出すと、絢は小動物のようにぴょんと跳ねて喜んだ。
「絢さん、あんまり大きな声出すと、魔獣に見つかっちゃいますよ」
「うっ、ごめん、真央ちゃん」
真央に注意され、絢は両手で口を塞ぐ。
「ふぅ........」
翔馬も深く息を吐きながら、そっとその場に座り込んだ。
「大丈夫?世渡くん」
しおりが心配そうに翔馬に声をかける。
「身体は.....大丈夫です」
(身体的な疲労よりも、常に警戒していたから精神的な疲労が尋常じゃない........))
しおりは全てを見透かしたように、柔らかく微笑む。
「初めてにしては十分よ。常に周囲へ意識を張るのって、本当にきついものだから。私も最初そうだったわ」
翔馬は力のない苦笑いを浮かべた。
「ははっ、ほんとかなりキツいです」
「今だけは少し休んでていいわ。これが慣れてきたら、疲れもなくなって無意識にできるようになるわよ」
「はい」
翔馬はリュックから学校支給のおにぎりを取り出し、食べ始める。
「いっただきまーす。....はむっ....おいしぃ!」
満面の笑みでおにぎりを頬張る絢。
「よく元気よく食べれるな」
環太が呆れて言うと
「だってお腹空いてたんだもん」
と、絢はリスのように頬を膨らませて返した。
「ところで乃木さん」
少し落ち着いたところで、真が口を開く。
「何かな?」
「休憩後はどうするんですか?」
「そうね.....帰投時間まであと二時間切ったのでゲートに戻りましょうか」
「わかりました」
しおりは一呼吸置いて、五人を見渡す。
「しかし.....君たち本当に優秀ね。指示は出してたけど、私ほとんど見てただけだったもの」
「そんなことないですよ。特に世渡くんを見れば一目瞭然です」
真が、目線を翔馬に移す。
「乃木さんも全方位に警戒してるはずなのに、この疲れ方。レベルの違いがよくわかります」
(ホントその通りだよ。これが経験値の差か……)
「まぁまぁ、これも経験よ」
乃木はそう言って笑った。
そして、食事を終えた五人は装備を整え、帰路に向けて歩き出す。
疲労を抱えつつも、足取りはしっかりしていた。
この度は読んでいただきありがとうございます。
この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。
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