第36話・巧の実力【戦技祭⑨】
二人の動きは速い。
刀と刀がぶつかり合い、カバーで保護されているとはいえ、乾いた金属音が闘技場に響き渡る。
「かぐらちゃん、相変わらずのキレだね」
「お世辞でもうれしいですよ」
「お世辞じゃないんだけどなぁ」
軽い口調とは裏腹に、剣筋は鋭い。
その激闘を前に、翔馬は思わず目を丸くしていた。
「巧さんも凄いけど......あの人も凄い......」
「翔馬、天然理心流という流派は知っているか?」
隣で見守る政美が、低く、重厚な声で問いかけた。
「......名前くらいは」
「かつて新選組の近藤勇や土方、沖田が使ったと言われてる流派だ。あの二人はその道場で幼い頃から学んできたんだ」
「あの二人も幼馴染ってことですか?」
「あぁ、そして互いの手の内も、嫌というほど知っている」
翔馬は納得しかけて、すぐに首を振る。
「それはそれとして......攻撃、速すぎてもうよく分からないんですけど」
「なんだ、翔馬。弾丸は撃ち落とせるのに、剣は見えないのか?」
「それ言われると何も言えないですね……」
頬をかきながら苦笑する翔馬の横で、戦況が大きく動いた。
「ふっ!!」
巧の横一閃が、神楽の前髪をかすめる。
かぐらは、鮮やかに後方へ跳び、宙で一回転して着地する。
その一挙手一投足に、観客から吐息のような歓声が漏れる。
「ふう......やっぱり強いなぁ」
「そう言っていただけるなら、ありがとうございます」
にこりと微笑むかぐら。
「じゃあ......ちょっと、取るね」
「......はい?」
次の瞬間。
巧は腕のリストバンドを外し、地面へ落とした。
ドスッ。
(ドラゴンボールかよ)
翔馬は思わず心の中で全力のツッコミを入れた。
「それが、どういう意味......」
キンッ!!
「......っ!?」
「あ、よく受け止めたね」
「振りが......さっきより、速い......!」
明らかに変わった。
巧の剣速が、先ほどとは別物だ。
連撃。
それを必死に受け止めるかぐら。
「意味あったでしょ、あれ」
「た、確かに」
攻撃はさらに速くなる。
疾風のような剣筋に、かぐらは防戦一方。
そして――
弾かれた刀が、宙を舞った。
「あっ」
視線が宙を舞う刀に吸い寄せられた瞬間、巧の剣先が閃いた。
一瞬の間に叩き込まれる、精密な10連撃。
『勝者ぁ!片倉ぁ!巧ぉ!』
歓声に応えて軽く手を振る巧。
その足元では、かぐらがペタンと地べたに座り込んでいた。
「もー、また巧ちゃんに負けたぁ」
頬を膨らませて悔しがる姿は、先ほどまでの凛とした剣士とは思えない年相応の少女のものだ。
「巧ちゃん呼びに戻ってるし、そんな顔したら麗しい神宮寺かぐらのイメージが崩れるよ」
「今はいいの。遠くて誰にも見られないわよ」
差し出された手を掴み、立ち上がる。
「次こそは、絶対に勝つんだから」
「やめてよ、それは」
「何でよ」
「だって......」
巧は苦笑しながらリストバンドを拾い上げ、かぐらに向き直った。
「かぐらちゃんより、練習しなくちゃいけないじゃん」
二ッといたずらっぽく笑い、巧はゲートへと歩き出した。
「......はぁ、その顔はずるいわよ。本当に......」
呆れたように見送りながら、かぐらは呟く。
「それに......そんなもの毎日着けてたら、どれだけ練習しても追いつけないわよ」
凛とした背中で、自陣へ戻っていった。
「勝ったよー」
いつもの調子で戻ってくる巧。
「ご苦労......だが、主席なら勝って当然だ」
「ははは、政美ちゃんはやっぱり厳しいなぁ」
頭をかく巧。
「巧さん......そのリストバンド持たせてもらってもいいですか?」
「いいよー。はい、どうぞ」
受け取った瞬間、翔馬はよろけた。
「……重っ!?これ、何キロですか?」
「うーん、10キロくらい?」
「正直、舐めてました......」
返却しながら、翔馬は真剣な顔になる。
「そうだ、翔馬くんも重り着けて生活しなよ」
「えっ!?」
「毎日がトレーニングになるよ」
「......確かに」
顎に手を当て考え込む翔馬。
「まずは2キロから行こうか」
「......考えときます」
「よし、最後は私だな」
場の空気が一変した。
椅子から立ち上がった政美が、ゆっくりと、だが圧倒的な威圧感を放ちながら登場口へと歩みを進める。
「政美ちゃん、今日は祝勝会だよ」
「あぁ、もう用意してもらっている」
「はは、準備がいいこと」
「政美さん、頑張ってください」
「あぁ......任せろ」
政美は、右腕を上げ歩き出した。
戦技祭、最後の一戦。
二人の女傑による、学園の歴史に刻まれる最後の戦いが始まろうとしていた。
この度は読んでいただきありがとうございます。
この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。
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