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第2話・ガンシューティングの天才

憂鬱を全身で体現したような翔馬は、やたらと元気な環太の後ろについて歩いていた。


(近接実戦訓練……。魔獣学の知識があっても、魔獣に辿り着く前に俺は死ぬ。俺の身体能力は、平和な日本の高校一年生レベルなんだぞ)


そんな絶望的な思考をグルグルさせているうちに、二人が着いたのは、いつもの体育館ではなかった。

室内全体が強化ネットで覆われ、奥の壁には吸音材が貼られた、本格的な訓練施設だ。


「んっ??射撃場??」


翔馬が呆然とつぶやくと、環太が横で笑った。


「なんだよ、今日から射撃訓練だろ」

「えっ??そうだっけ??」

「おいおい、近接実戦が嫌になりすぎて先生の話聞いてなかったんだろう」

「はははっ、仰る通りです」


『射撃』


その単語を聞いた瞬間、翔馬の体にスイッチが入ったかのように元気が戻る。

理由はただひとつ。


翔馬は――


「ま、満点……だと?」


――ガンシューティングゲームの天才だったからだ。


翔馬がゲームで培ったスキルは、数種類に及ぶ銃器の特性、反動の計算、そしてコンマ数秒でヘッドショットを決める反射神経。

それらは全て、ディスプレイの向こう側での出来事だったが、彼の身体、特に指先と眼球は、その全てを鮮明に記憶している。

握ったのは小型の光線銃。

20メートル先には、魔獣のシルエットをかたどった標的。

それぞれに得点が書かれている。


「世渡」


ゴツい男性教師が、翔馬の勢いよく肩を持つ。


「はっ、はい?」

「近接のときはどうなるかと思ったが……射撃が得意、どころではないな」

「まあ、ちょっとだけ……」

「なにがちょっとだけだ初めての射撃訓練で満点を取るなんて学校始まって以来のことだぞ」

「そうなんですか?」

「あぁ、お前の将来が楽しみだな。ハッハッハッ!」


先生が笑う声を聞きながら、翔馬は心の奥でそっと思う。


(この世界でも、俺……やっていけるかもしれない)


射撃訓練の成功が、初めて翔馬に小さな希望を灯した瞬間だった。


「さすがだな、翔馬」


環太が嬉しそうにポンと肩を叩いてくる。


「射撃ならワンチャンあるとは思ってたけど……想像以上じゃねぇか」

「あっ、ありがとう」


(環太にここまで言わせるなんて……この世界の俺も、やっぱりガンシューティングが得意だったのか?)


胸の奥がくすぐったくなる。

別の世界だけどやはり彼は“俺の知っている環太”なのだと、翔馬は少し安心した時、訓練場に張り詰めた声が響いた。


「世渡の満点も凄いが、85点。さすが諏訪尊の息子だな」


先生の言葉に、クラス中の視線が、一人の少年――諏訪すわまことに集まる。

クラスメイトは前の世界と同じ顔ぶれだが、この真だけは“雰囲気”が微妙に違っていた。

真の父・尊は、前の世界ではオリンピック射撃の金メダリスト。

それがこの世界では、人類最強の一角とされる最高ランク・Sランクハンターだ。

真は170cmほどだが、無駄のない中肉の体つきには“毎日の鍛錬”が自然と滲み出ている。

茶色のさらさらとした髪が光を受けて柔らかく揺れ育ちの良さを思わせる端正な顔立ち。

涼しげな目元には、父であるSランクハンターへの憧れと、自分の道を歩みたいという静かな決意が宿っている。


「やめてください、先生。父は関係ありません」

「すっ、すまない」

「あっ、違います。父と仲悪いわけじゃないですよ。父は尊敬しています。でも……僕は僕の力を証明したいだけなんで」


真はその偉大すぎる父を尊敬し目標にしつつも、常に比較されることへの葛藤も抱えているらしい。

そんな彼が、ふいに翔馬のところへ歩いてきた。


「世渡くん」

「なっ、何?」

「君があれほど銃を扱えるとは思わなかったよ。よかったら、コツを教えてもらえるかな?」


真からの質問に翔馬は思わず目を丸くした。

入学して二ヶ月、この世界に来てまだ一ヶ月。

前の世界では挨拶を交わす程度だった相手が、こんなにもフレンドリーに話しかけてくるなんて。


「えっと……ガンシューティングゲームをやり込みまくった結果かな?」

「ゲームでそこまで上達するなんて....ゲームもバカには出来ないね」

「いやぁ、ホントそう思うよ」


真はふっと微笑むと、まるで旧友のように言った。


「もしよかったら、そのゲームを今度教えてくれないか?」

「いいけど」

「よし、じゃ約束だ」


差し出された手を、翔馬は少し照れながらもしっかりと握り返した。

この度は読んでいただきありがとうございます。

この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。

よろしければ感想・評価よろしくお願いいたします。

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