第13話・バイトという名の社会見学??
七月に入り、まもなく夏休み。
生徒たちの表情はどこか軽く、浮き足立っている。
そんな季節の空気とは正反対に、環太は深刻な顔で腕を組んでいた。
「うーん........どうすればいい?」
「どうした?そんな顔して」
翔馬が声をかけると――
「........金がない」
「........はい?」
「だから、金がないんだよ」
「なんでそんなにお金がないんだよ」
「ふっふっふ、翔馬それを聞くか?」
環太は妙に不敵な笑みを浮かべる。
「あっ、いや、やっぱいいや」
翔馬は一瞬で察した。
「え、聞いてくれよー」
「いや、どうせハニリプのグッズ買いすぎたんだろ?」
「おぉ、さすが親友。大・正・解!!」
親指を立てて満面の笑みの環太
しかし次の瞬間、顔色が再び曇る。
「八月に東京でライブあるからその遠征費がないんだよ」
「ないんだよじゃないよ........チケットはどうした?」
「当たった」
「強運だな........でも、お金がない、と」
「そうなんだよー」
その時、にこにこ顔の真が近づいてきた。
「ちょっと、環太くん」
「なんだよ、真。その笑顔は」
「バイト、紹介しようか?」
その一言で、環太の表情がガラリと明るくなる。
「マジで!?」
「うん、夏休み入ったら父さんがバイトしないかって?」
「........父さん?........って諏訪尊が?」
「うん」
その瞬間、環太はクルッと翔馬の肩を掴み、耳元で囁く。
「なぁ翔馬........大丈夫だと思う?これ」
「なにが?」
「諏訪尊のバイトだぞ。なんか、恐ろしいことが待ってそうで........」
「まぁまぁ、内容聞いてみようよ」
そして、二人そろって真に向き直る。
「真、バイトの内容は?」
「えっと、鬼首の間欠泉確認って言ってたかな」
「確認??簡単そうに聞こえるけど?」
「そう思うでしょ。鬼首って【鳴子ゲート】の奥にあるから危険度Bの魔獣がうようよいるし運悪いと危険度Aも出るかもしれないって」
「超危険じゃねえかよー!!」
環太の魂の叫びに、翔馬と真は吹き出しそうになる。
笑うのを堪えながら翔馬は口を開く。
「真くん、ところで間欠泉の確認って何のためにするの?」
「間欠泉の周りって魔獣の棲家になりやすいみたいなんだよ。だから年二回ぐらい、調査と討伐を兼ねて確認する必要があるらしいよ。父さんからはそれに帯同してみないかって」
「危険しかないバイトって聞くだけで行く気なくすんだが......」
環太は不貞腐れ、天井を見上げて「京行きは諦めるか……」という表情になっている。
「そっかぁ......でもバイト代は捕獲した魔獣の懸賞金の1割渡すって言ってたんだけどな......」
その瞬間、環太の顔が一瞬で変わった。
「なにぃ!?........一人に一割!?」
「に、人数によると思うんだけど........ちょっとわからない」
「行く!!」
「気持ちの切り替え早っ!」
「翔馬、一割だぞ。一億だったら一千万ももらえるんだぞ。危険度Bがうようよいるんだ、合計金額いくらになるんだ!?」
環太の目が、完全に¥になっていた。
「翔馬くんはどうする?」
「環太が心配だから行くよ」
「わかった、じゃあ、父さんに連絡しておくよ」
とスマートフォンを取り出し連絡を取る真。
そして数十秒後――
「今日、家これる?」
「「えっ??」」
真は画面を見せながら淡々と告げる。
「父さんが『今日二人連れてきなさい』って」
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「おぉ、いらっしゃい」
立派な一軒家に入り、玄関で翔馬たちを出迎えたのは、真の父、諏訪尊だった。
尊は、真を十数年熟成させたような顔立ち。
真より頭一つ分高く短く整えられた黒髪には少しだけ白いものが混じり、肩幅は倍ほどに感じられるほどがっしりしている。
静かにそこに立っているだけで、Sランクハンター特有の、気圧されるような威圧感を放っていた。
「お、お邪魔します」
Sランクハンターを目の前にして、緊張を隠せない翔馬と環太。
「まぁ、座ってくれ」
リビングに案内された二人。
テーブルに乗っていたのは大きな寿司桶が二つ。
並んで座る二人の目の前に尊は座り、その隣に真も座った。
「二人ともいつも真と仲良くしてもらってありがとう」
尊はにこやかな顔で言った。
「いえ、こちらこそ」
「これは、仲良くしてもらってるお礼だと思って遠慮なく食べて。腹が減っているだろう?」
「「はい、いただきます」」
緊張しつつも箸を伸ばし、食事は和やかに進む。
寿司の美味しさに少しずつ緊張が溶けていくのが分かった。
だが、尊がふと手を止めた瞬間――空気が変わった。
「それじゃあ、本題に入ろうか」
食事の途中で、尊は表情を真面目なものに変える。
リビングの空気が一瞬で引き締まった。
「今日来てもらったのは分かっていると思うが、バイトの件だ」
翔馬と環太も自然と表情を引き締める。
「まず日にちは七月二十七日。人数は君たち二人、真、そして私の他にAランクハンターが二人入る。全員で六人だ。真から聞いたと思うが【鳴子ゲート】は危険度が高い」
尊は静かに言いきる。
「我々がいる限り君たちには絶対に危険は及ばせない。それは約束しよう」
その言葉には、Sランクハンターとしての確固たる自信と責任感が滲んでいた。
「そして、バイト代だが、捕獲した魔獣の一割ずつ渡そう。危険度Bランクの魔獣だったら一体五百万ぐらいで取引されるから、一体五十万ぐらいの計算になる」
「ご、ご、五十万……!」
環太は目を見開き、大きく息を飲んだ。
その横で翔馬が意を決したように口を開く。
「あの....一つ聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「なんで、僕たちに声をかけてくださったんですか?」
「そうだねぇ、君たちに期待してるからかな」
尊は、隣で静かに頷く真に目を向けた。
「真が、他人のことをあんなに褒めるなんて今までなかったからな。親バカではあるが、真にはハンターとしての才能があると思ってる。だからこそ、君たち二人のことが気になっていたんだよ」
真は、少し照れながらも、うんうんと頷いている。
「バイト代は、高校生に渡す金額ではないが、将来ハンターになるなら、もっと稼ぐ。今のうちからお金の稼ぎ方や使い方を覚えていくのも損はない」
そして、尊はしっかりと二人を見据えて言う。
「今回の経験は、ただの小遣い稼ぎではない。社会見学だと思って参加してほしい」
その言葉は、将来ハンターになることを前提とした、Sランクハンターからの期待の言葉だ。
翔馬と環太は深く頷いた。
「「はい、お願いします」」
こうして食事を終え、真の家をあとにした二人は、期待と緊張の入り混じった顔で夏の夕暮れの中を歩いていった。
この度は読んでいただきありがとうございます。
この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。
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