第10話・ハニリプ宮城公演
日本一のアイドルグループ【Honey☆Ripple】。
そのメンバーである乃木しおりがアイドルになったきっかけは中学二年生の冬、新グループオーディションが発表され、姉が勝手に応募したのが始まりだった。
書類審査が通っても、しおりは「どうせすぐ落ちるだろう」と思っていた。
だが、気づけば最終審査の“7人”の中にいた。
当時からハンターになることを夢見ていたしおりが、最終審査という誰もが成功を願う場で放った一言は、伝説となった。
「私は、ハンターになりたいのでアイドルにはなりません!」
普通ならオーディション辞退。
だがあの日、極限の緊張の中、堂々と言い切ったその一言が、事務所社長の心を撃ち抜いた。
彼は、その度胸と異質な輝きを大変気に入り、乃木しおりを何としても口説き落とせと指示した。
そこから事務所スタッフが、宮城の乃木家へ毎日のように通い、最終的に「ハンターと兼務でも構わない」という異例の条件で事務所に所属することになる。
しおりは中学卒業後、宮城を離れ東京のハンター育成学校【東鳳学園】へ入学した。
そして、高校一年の冬、七人組のアイドルとしてデビュー。
それから五年。
出す曲すべてがストリーミング一位。
ライブは即完売で、プラチナチケット化。
【Honey☆Ripple】は名実ともに“日本一”のアイドルとなっていた。
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課外学習から約一ヶ月。
五人の怪我もすっかり癒え、日常生活も問題なく送れるまで回復していた。
その五人がやってきたのは仙台市の北東に隣接した利府町にあるセキスイハイムスーパーアリーナである。
開演二時間前。
会場前にはすでに多くのファンで賑わっていた。
「おーい、環太さーん」
翔馬が環太の目の前で手を振る。
「なんだよ」
「お前が会場見ながらボーっとしてるからだろ」
「俺は、感動してんだよ」
環太はツアーTシャツにしおりのタオル。
完全にガチ勢ファンの格好だった。
「環太くん、ホントに好きだったんだね」
絢が微笑む。
彼女の笑顔は、以前より少し柔らかい。心の傷も、少しだけ癒えてきたのだろう。
「私、ライブ初めてなのでちょっとワクワクします」
「僕もだよ」
とサイリウムを両手に持つ真央と真。
全員が、非日常的なステージに期待を膨らませていた。
「ところで関係者窓口ってどこ?」
絢がキョロキョロと見渡す。
飛島から言われたのは”二時間前に会場に着いたらまず関係者窓口に行け”だった。
関係者窓口を探し当てた五人。
窓口で学校名を伝えると、少し待つよう言われる。
すると――関係者入口から一人の女性が現れた。
「えっと、皆方高校の愛宕さん、市ノ瀬さん、犬童さん、諏訪さん、世渡さんですね?」
「「はい」」
「お待ちしてました。私、Honey☆Rippleのマネージャー、櫻井と申します」
差し出された名刺を環太が震える手で受け取る。
「しおりから伺っています。これから楽屋へご案内しますので、このパスをつけてくださいね」
「........えっ、楽屋........?」
「はい」
環太は、驚きのあまりそのまま後ろに倒れる。
「あっ、大丈夫ですか」
櫻井が駆け寄る。
「なんか........めんどくさくなってきたね」
「同感だわ........」
翔馬と絢は顔を見合わせ呆れる。
倒れた環太を翔馬と真が協力して引っ張りながら、櫻井の後に続いて行った。
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「こちらで少々お待ちください」
楽屋の前に到着し、櫻井が先に部屋に入ってからすぐ出てくる。
「どうぞお入りください」
五人が部屋へ足を踏み入れた瞬間――
「ごめんなさい。私がいながら怪我をさせて」
中にいたしおりが、五人の顔を見るなり、急に深く頭を下げてくる。
「えっ、ちょ、ちょっと、乃木さん」
「頭上げてください」
「別に乃木さんのせいじゃないですって」
その不意打ちに、五人は慌てふためいた。
「ありがとう。でも........」
そういったしおりは、そっと絢の手を握る。
「市ノ瀬さん........大丈夫?やめたくなったら、やめてもいいんだよ」
あれから誰も絢に言えなかったこと、聞けなかったことを、しおりは真っ直ぐに問うた。
ふと目線を落とす絢。
だが、すぐ笑顔を見せる。
「........大丈夫です。と言えばウソだけど........やっぱりまだ怖い気持ちは……あります」
「うん、今はそれでいいの。無理しなくていい。もし、戦うのが怖いって思うなら逃げたっていい。誰も恨んだりしないから」
と言ってしおりは絢を抱きしめた。
絢は、しおりの胸の中で堰を切ったように大きな声で泣き始めた。
それは、恐怖を一人で抱え込んできた絢にとって、必要な時間だった。
その数分後――
「もう、大丈夫かなぁ??」
部屋の奥からメンバーの一人が声をかけてきた。
「な、凪ちゃん!?」
環太が叫ぶ。
「私たちもいたんですけど........」
「か、かっきー!?」
環太は再び崩れ落ち、翔馬が慌てて支える。
「翔馬、俺はもう........死んでもいい........」
「じゃあ、放す」
翔馬は環太を放し、環太は地面に叩きつけられる。
「いたっ........放すなよ」
その後、メンバーと記念撮影をしたり、サインを書いてもらったりと、環太にとっては夢のような時間を過ごし、楽屋を後にした。
席へ移動する道中。
「やべぇ、興奮してきた!」
「もう倒れないでくれよ」
「わかってるよ!」
やがて、開演時間になり場内が暗転した瞬間――
光が弾け、音が走り、Honey☆Rippleの歌声が会場を包み込んだ。
宮城の夜に、歓声と熱気の渦が巻き起こった。
この度は読んでいただきありがとうございます。
この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。
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