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カモメ賢者と黒髪の少女  作者: ジャパンプリン
第一章 カモメと少女(出会い編)
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第6話 少女の魔法

 魔法を使い始めて判ったのだが、シェリーの魔力は底無しだった。

出力は大した事はない。

反面、いくら使っても枯れる気配を見せない。

その秘密は黒髪にあった。

黒髪自体は珍しくもないが、シェリーのそれは特別だった。

すべてを吸い尽くすような深淵を彷彿させる黒。

それは異次元への扉の象徴。

シェリーはどうやら異次元から魔力を吸い取り行使できる、そんな能力を持っていた。

え? なんでそんなことが判るのかって?

それは俺様が賢者だからだ。

キリッ。

細けぇこたあいいんだよ。



「シェリーの魔力を考えると、

 直接使うより、槍と組み合わせた方が良い気がするな」

「ホント?」


「ああ。武器に魔法を付加して使う、

 俗にいう魔法剣ってやつだな。槍だけど。

 魔力消費が大きいのが難点で使い手は少ないんだが、

 シェリーだったら問題ないだろう?」

「そうね。無駄に魔力だけはあるみたいだし」


「早速だがやってみるか。

 魔法を放つときと同じ要領で魔力を練って、

 放出する代わりに穂先に集中させる感じで……」

「こんな感じかしら?

 ん~……。あ、出来た!」


「やっぱ良い筋してるな、シェリーは。

 教え甲斐があるぜ」


――――


 そんな日々を送りながら二年が経ち、シェリーの魔法槍にも磨きがかかってきた。

シェリーは現在15歳。

あれから少し背が伸びた。

そして、どことは言わないが順調に成長の兆しが見える。

それに伴って魔法の出力も上がってきているようだ。

そろそろ良い頃合いか。


「シェリー。今日は新しい技を授けようと思う。

 その昔、ハーコックという槍の達人が編み出したとされる、奥義の一つだ。

 その名もサウザンドピークス」


「なんだか格好いい名前ね。どんな技なの?」


 奥義と聞いて期待に胸を膨らませたのか、爛々と目が輝いている。

一見必殺、惚れ惚れするようなシェリースマイルだ。


「風と光の魔法を組み合わせて穂先の幻影を無数に作り出し、

 幻に紛れて必殺の一突きを放つ、

 文字通りの必殺技だ」


「えぇ……。

 なんか卑怯じゃない? それって。

 そんなインチキじゃなくて、

 もっと正統派の技がいいなぁ、私」


 シェリーの眼から徐々に光が失われる。

だがな、必殺技なんてものには大抵タネも仕掛けもある。

そんなものだ。


「それがな、この技は傍から見ると、

 高速で無数の突きを放っている様にしか見えない。

 とても恰好良い技なんだ。

 美人のシェリーが使えば、見栄えも文句なしだぞ」


「そうかしら。えへへ……。

 モーちゃんがそういうならやってみようかしら」


 チョロいな。

まぁこれでやる気が出るなら安いもんだ。


「何か言った?」

「い、いえ。 滅相もございません……」


 危ねぇ。

このエスパーの前で余計な事を考えるのはよそう。


――――


 そして3か月が過ぎた。


「ハーコック流奥義、サウザンドピークス!」


 ブババッと無数の穂先が現れるとともに鋭い突きが繰り出される。

見事だ。

これを初見で防ぐのは不可能に近い。


「見事だ、シェリー。よく頑張ったな。

 これならあの面倒な呪いも断ち切ることが出来るだろう」


 (カモメ)はシェリーの肩に飛び乗り、片羽を広げて頭を撫でる。


「ホントに?

 私、ヒキガエルにならずに済むのね。

 ありがとう、モーちゃん」


 シェリーは破顔しながら俺の脇に顔をうずめてくる。

泣いてるのか?


「グスッ。良かった。私……。

 あれから、もう2年も修行ばかりで、

 ずっとこのままで……もう解けないんじゃないかって……」


 もう片方の羽根も広げてシェリーの頭を包み込み、俺は慰める。

ずっと気丈にふるまってたが、内心は不安で溢れてたか。

そりゃそうだ。

俺に任せろと言ったあの日から今日まで、ずっと呪いを抱えていたんだ。

シェリーはまだ少女だ。

不安でないわけがない。

だが、それももう少し。

もう少しの辛抱だ。

この子を救ってみせる。

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