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カモメ賢者と黒髪の少女  作者: ジャパンプリン
第五章 新たな旅立ち(真の番編)
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第51話 総帥との邂逅

叡者の指輪を光らせることに成功した、その翌々日。

俺たち三人は、ノエリア学術院の前に居た。

正面には、幾つもの石柱が等間隔に立ち並ぶ、石造りの建物がある。


「こうして近くで見ると、壮観ね」


頭上からシェリーの声がする。

今日の(カモメ)は、彼女の腕の中だ。


「ああ、大したもんだな。

 見てみろよ、あの石柱の太さ。

 権威の為に、そこまでやるか」


遠目には分からなかったが、石柱の間隔は、通路ほどの幅がある。

石柱の幅も同程度。

これほどの巨大な建造物、どれだけの資金と労力をかけて建立(こんりゅう)したのか、ちょっと想像がつかないな。


「あれ?

 モーゼス、もしかして来るの初めて?」


「ああ、よく分かったな」


「分かるわよ、それくらい。

 なんかキョロキョロしてるし。

 でも、なんか意外ね。

 賢者になった時にも来なかったの?」


そう言ってシェリーが首を下げ、俺の顔を覗き込んでくる。

小首を傾げてきょとんとした表情は、柔らかさと美しさを両立する。

後光が差して見える。


……っと、イカンイカン。

見惚(みと)れてる場合じゃなかったな。


「そうだな。

 普通なら、ここで試練を受けて賢者の証を貰うんだが。

 叡者サメロスは特別なんだよ。

 サメロスは、これと認めた弟子に賢者の証を渡せるのさ。

 俺はあの島で証を貰ったから、ここには来なかったんだ」


母であり師でもあるアストリッドは、かつて叡者サメロスの称号を冠していた。

その母がこちらを向き、会話に入りたそうにしている。

俺は頷き、母にバトンを渡す。


「そう。

 だから、弟子入りに来る奴が後を絶たなくてね。

 でも、大抵は碌なもんじゃない。

 それもあって、あの島に引きこもってたのさ。

 性に合ってたってのもあるけどね」


母の言葉にシェリーは顔を上げ、相槌を返す。


「そうだったんですね。

 ちなみに、モーゼスの修行時代って、どんな感じだったんですか?」


「え、シェリー?

 そういうのは、俺の居ないところでやってほしいんだが」


唐突な話題転換に抗議の声を上げる俺。

だが、俺の声は無視され母が話題に乗りに行く。


「ははは、たまにはいいじゃないか。

 アンタはそうだねえ。

 まあ、器用だったと思うよ」


む。

意外と悪くない。

師匠の目にもそう見えてたか。

安心したぜ。


「やっぱり。

 魔法で光と音を同時に出したりしてて、

 凄いなって思ってたんです」


「ほう。どんなことやってたんだい?」


「アステロンに向かう頃、大道芸で路銀を稼いでた頃があって――」


あ、ちょっと。やめて。

黒歴史をバラさないでー。


――――――


「はっはっは。

 カモメの賢者もなかなかやるじゃないか、モーゼス。

 目的はともかく、音と光を同時に操るとか、大したもんだよ」


そう。

(カモメ)が大道芸で使った魔法は高度なものだ。

風魔法で音楽を鳴らしつつ光魔法の演出も行う。

更に土魔法の粒槍(ミニスピア)も仕込んでみせた。

並みの魔法使いではここまで出来まい。


そんな他愛もない話をしながら、俺たちは柱の間を通り抜けた。

そして、柱の奥に控える建物入口へと向かった。

入り口前には槍を携えた大男が二人、仁王立ちしている。

母は、その片割れに向かって手を上げ、合図する。


「これはサメロス様。お通り下さい。」


流石に叡者サメロスの貫禄か。

アステロンの時とは大違いだな。


入り口を抜けると扉をくぐると、右手にカウンターがあった。

その奥には初老の女性が座っている。

司書の様なものだろうか。

母は女性に近づき、要件を伝える。


「総帥と面会したいんだが、時間は空いてるかい?」


女性は傍らから手帳を取り出し、何やら確認している。

そして、答えた。


「はい。総帥は只今昼食中です。サメロス様のご要請と有れば」


「なら、案内してくれるかい?」


「かしこまりました。

 案内の者をお呼びします。

 少々お待ちください」


そう言って女性は頭を下げ、手元の呼び鈴を鳴らした。


――――――


案内役に連れられて、向かった先は総帥の執務室だった。

部屋の扉をくぐると、ソファとローテーブルが目に入る。

ソファには白髪の老人が座り、昼食を取っている最中だった。

この老人が学術院の総帥か。


「やあ。今良いかい? 新たな叡者を連れてきたよ」


母の口調は、友人にでも話しかけるかの様だ。

老人は、手元のナプキンで口元をふき取り、答えた。


「構わんが、その、少女が…‥?」


表情、声色ともに困惑の色を隠せない老人。

片や母はというと、片口を上げてニヤリと笑い、

(カモメ)を指さした。


「いや、そこに抱かれてる、カモメさ」


「カモ、メ?」


小首を傾げる老人。

別に可愛くはない。

などと考えていると、母が顎をしゃくり、俺を促した。


「モーゼス、挨拶しな」


なるほど。

コホン。


「初めまして、総帥殿。

 私がサメロスの最後の弟子、ルカーヴあらためモーゼスです」


キリっとな。

ついでに光魔法で後光を入れとくか。


いや、母が手で制してきた。

勘が良いな。

同時に頭上から囁くような声が聞こえる。


「(モーゼスが、丁寧な言葉使ってる……)」


こら、シェリー。聞こえてるぞ。

時と場合って、分かってるか?

だが、俺の心配は杞憂に終わったようだ。


「カモメが、喋った?」


老人は目を丸くし、俺を指さしている。

コイツも失礼な奴だな。

だが、俺は紳士だ。


「はい。私はここより北東に位置するエンシェルムで転生術を修め、転生しました。

 そして、カモメになってしまいました。

 前世同様魔法は使えますし、叡者の指輪の試練も終えています」


老人は、テーブルに手をつき、時折頷きながら、俺の話に耳を傾けていた。

話し終わると、老人は顎に手を当て返答をよこす。


「ふ~む、なるほど。

 サメロス様のお墨付きだし、受け答えもしっかりしている。

 まずは貴公の言、信じよう」


「さすが、話が分かるじゃないか」


一瞬心の声が漏れたかと思ったが、それは母の声だった。

代弁してくれたんだな、きっと。

持つべきものは、母だ。

うむ。


そこで老人は立ち上がり、襟を正して口を開いた。

低く、落ち着いた声だ。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。

 失礼した。

 私が、学術院現総帥、ロリコム・テオクレスである」


ロリ……コム???

目の前の老人の衝撃的過ぎる自己紹介に、

(カモメ)は一瞬言葉を失った。

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