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カモメ賢者と黒髪の少女  作者: ジャパンプリン
第五章 新たな旅立ち(真の番編)
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第50話 叡者の試練

初めての口付けで恋心を取り戻したシェリー。

そして、再びカモメに戻った俺。

俺たち二人は宿に(こも)り、時間も忘れて他愛もない話に没頭していた。


夕刻、ドアがノックされる。

母アストリッドが宿に戻ってきたのだ。

シェリーが返事をすると、静かにドアが開き、母が部屋へと入ってきた。

そして、シェリーを一瞥(いちべつ)し、驚きの声を上げた。


「シェリーちゃん、その髪どうしたのさ?」


一度(いちど)目を伏せ、母を見つめるシェリー。

そのまなざしは、いつもに増して鋭く、奥行きを感じさせる。

一呼吸置いて、シェリーは答えた。


「切ったんです。自分で。

 ソフィアのことに、けじめをつけたくて」


母は何かを察したのか、目じりを下げて表情を緩ませる。


「そうかい、いい顔になったじゃないか。

 この一日で、何かあったのかい?」


母の問いに、シェリーの顔はハッとした表情を見せた。

だが、即座に眉尻を下げ、目線は斜め下へと向かう。

視線が定まらない。

これは……思い出してるな。

俺が替わりに答えるか。


「ああ。まあ、色々な」



――――――


「――それで、モーゼスと過ごす瞬間(いま)を大事にしようって」


妄想の世界へと旅立ちかけたシェリーだったが、俺の説明を聞くうちに理性を取り戻したか、最後は彼女が締めてくれた。

口づけの事は、別にいいだろう。

母に言うことじゃない。


「ふ~ん……いいところに着地したね。

 私もそう思うよ。成長したね」


母がシェリーに近寄り、頭を撫でる。

同時にシェリーは目を伏せた。

その様子は、どこか心地よさそうだ。


ん?

母さんがこっち見て目配せしてる。

参ったな、全部お見通しか。

それでもシェリーに言わないのは、母の優しさか。


ひとしきり撫で終わると、母はシェリーから手を離した。

そして、(カモメ)に目をやり話題を変える。


「ところでルカ、いや、モーゼス。

 あんたにいいものを持ってきたんだ」


そう言って母がポケットを漁り、取り出したのは指輪だった。


「これさ。アンタなら、これが何か、分かるだろう?」


「叡者の指輪、か」


叡者の指輪。

それは、叡者の試練の一つ。

あの指輪は特殊な魔道具で、特定の手順を踏んで魔力を流すと発光する。

そんな代物だ。

その手順は、魔力の強弱。

いや、緩急と言ってもいいだろうう。

転生術で転生先を指定するのに似ているのだが、そのやり方、というか変化の波形が全然違う。

この技があるから、母アストリッドは僅か四ヶ月で転生術を習得出来たのだ。


「一週間だ。

 一週間でその指輪、光らせてみな」


そう言った母の目は、久しぶりに見る、師匠の目をしていた。


参ったな。

なかなか無茶を言う。

とは言え、転生術に用いる魔力制御に比べれば幾分易しいのも事実。

()()の挑戦的な眼差しは、『今のお前なら、それくらい出来るだろう?』、そんな言葉を背後に感じさせた。


――――――


あれから三日が経った。

この三日間、俺はひたすら指輪の特訓に励んでいた。

大分いいところまで来ている気がする。

この感じなら、今日にはおそらく出来るはず。


宿の中庭で、指輪を咥えて目を閉じ、集中を深める。

静から動、その瞬発力が肝心だ。

むむむ……。


眩し!!!


目がやられた!

何で俺はいつもこんな目に。


その時、(カモメ)の頭に手が置かれた。

この感じ、師匠だな。

頭上から、声が聞こえる。


「やるじゃないか、モーゼス。

 これでアンタも叡者の仲間入りだね」


その声は、師匠ではなく、母のものだった。



叡者か……。

正直なところ、その肩書きは、俺には重い。

なんせカモメだからな。

叡智を極めしカモメとか、それはもう、仙人の域だろう。


「能力の話なら歓迎するけど、

 肩書きなら遠慮しとくよ。

 カモメ賢者って言葉の響き、

 結構気に入ってるんだ」


「そうかい。

 そこはまあ、好きにすればいいさ。

 要件は満たしたんだ。

 人間に戻れたら、

 その時にでも名乗れば良い」


叡者の要件。

それは、火・水・風・土の基本四属性に加えて光・闇、そして治癒魔法も使えること。

そして、叡者の指輪を光らせる、魔力制御。


確かに、満たしてるな。

ただまあ、叡者がカモメなんて、前代未聞の話だろう。

その点、賢者なら……。

これも大概か。


まあ、良いだろう。

大事なことは、俺が一段上の技術を身につけたという事だ。


「さて、明日は学術院に行って、新たな叡者のお披露目といこうじゃないか」


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