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カモメ賢者と黒髪の少女  作者: ジャパンプリン
第二章 過去と向き合う旅(再会編)
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第12話 魔法と転生術

 アマルティシア教授の研究室。

雑多な物で溢れかえる、その部屋の一角。

壁際に置かれた角机の角を挟む様に、ティシアとシェリーは椅子に腰掛けている。

俺はシェリーのお膝の上。

時折りシェリーが背中をそっと撫でてくる。

さながら、老婆の膝上で丸くなる、ネコになった気分だ。


ネコは(カモメ)の天敵。

敵を知り、己を知れば百戦危うからず。

つまり、俺はただ(くつろ)いでいるわけではない。

むしろ、来たるべき会戦に向けて、牙を研いでいるのだ。


今、俺の頭上ではティシアとシェリーがガールズトーク(おっぱい談義)に花を咲かせている。

吾輩は空気である。

なるほど。ネコ(天敵)の気持ちとはこういうものか。

幸せそうだな、アイツらも。



「ルカはね、口では拘って見せるけど、本音のところでは興味ないのよ」


「そうなんですか、でも、そんな風に見えなかったというか……。

 頭の中は、ずっとそればっかりでしたよ?」


「実はね、彼は気のある相手の体にしか興味ないの。ちょっと実験してみましょう。

 ほら、こうやって腕で挟んで寄せて……」


む。 胸部境界が変形したか。

特異点分布の変動を見るに、主極が移動した訳では無さそうだ。とすると極の位置は…… 」


「ほらね。」


「ホントだ……って、え?どうしよう? モーちゃんが壊れちゃった……」


「大丈夫。私には解る話をしているわ。

 次に。 ほら、挟み込む様にして、抱っこしてご覧なさい?」


「えっと……こうかしら。」


……遠くから俺を呼ぶ声がする。

シェリーの鼓動だ。

そして、やわらかいものを感じる。

これは、俺だけに許された布団。

この布団は、俺の心を癒してくれる…… 」


「ほらね。試しに、私も同じ事してみましょうか?」


「だ、ダメです!」


……コイツら、仲よさそうだな。

やり方はともかく打ち解けたみたいだし、もう放っておいても大丈夫そうだ。


 さてと。

この隙に、たまには基礎のおさらいでもするか。

困った時には基礎に立ち返る。

古来より受け継がれてきた鉄則だ。


――――――


 魔法使いの資質を決める要素は何か。

大雑把には、三つある。


まずは、出力。

これが大きいほど魔法の威力が上がったり、範囲が広がったりと、これ次第で出来ることの幅が広がる、基礎的かつ重要な要素だ。


次に、容量。

魔法の行使には魔力の消費を伴う。

これは、その者が一度、例えば一日に消費可能な最大魔力量を表す。

一般に、行使する魔法に込める魔力量を増やすほど、威力や範囲といった効果も高まる。

容量が大きいと、大魔法を連発できるといった具合だ。


出力と容量は、身体の成長とともに発達するが、訓練で伸ばせるものではない。

先天的な資質を意味する。

また、これらの資質は女性の胸の大きさと相関がある事が知られている。

男性にも高い資質を持つ者は存在するが、女性の場合身体的な資質と胸部からの影響が重畳(ちょうじょう)するため、一般的には女性の方が魔法に対して高い資質を持つ。


三つめの要素は、制御だ。

魔法使いは、魔力を制御し、多彩な魔法を操っている。

他にも、体内の魔力を魔法へと変換する効率であったり、魔法の範囲を絞って密度を上げ、その威力を高めたりと、同じ魔法であっても結果に差をもたらす、いわゆる技術に相当する。


この資質は、修練によって後天的に伸ばすことが出来る。

それ故に、男性魔法使いにとってはこの部分が生命線になる。

とはいえ、女性であっても技術がなければ魔法を使えないのは同じ事。

結局は修練が必要になる。


――――――


「……というわけで、ここアステロン魔法大学で学ぶ学生は、

 制御技術について専門的に学んでるのよ」


「へえ〜。という事は、

 ティシアさんは、その制御技術を究めて賢者になったんですか?」


シェリーの目線はティシアの胸元へと向かう。

そう。ティシアのそれは、大きくはない。

先ほどすれ違った学生達などは、風船でも入れてるのかと思うほどだったが。


「ちょっと……どこ見てるのよ。

 失礼ね、私だってそんなに負けてないわよ?」


「ご、ごめんなさい。つい……」


「ただ、大きさが全てってわけでもないの。

 あれはあくまでも傾向だから。

 例外は存在する。

 私みたいにね」


と言い放ったティシアの言葉は、力強さを感じさせるものだった。

だが、言葉とは裏腹に、その表情はどこか投げやりに見える。

同時に、シェリーが指先に力をこめたのが、羽根を通じて伝わってくる。

シェリーも違和感を捉えたようだ。


でも、痛いから。羽根……離して?


――――――


「それで、改めて貴方たちの話を聞かせてもらえるかしら?」


「ああ」


それから俺は、ここに至るまでの経緯(いきさつ)を説明した。

シェリーとの馴れ初めから、呪いを解いて婚約に至るまで。

そして、逆転生術行使への手掛かりを求めて、ここへ来たこと……等々だ。


「ふ〜ん。 相変わらず器用な事するのね。

 気になったのは、一度人間に戻った話、かしら。

 後は、婚約の所も大事ね」


いや、婚約云々は関係無いだろ、常識的に考えて。

無視だ無視。


「ああ、あれは転生術の応用でな……」



 転生術は、大別して二つの要素に分割される。

一つは時間操作。

自身の体を一旦分解して、過去または未来へと結像させる。

操作出来る時間の長さは、術に込める魔力量に比例する。


もう一つは転生先の指定だ。

通常、未来の姿は不確定なので、これを指定して初めて術は成立する。

この()()とは、自身の魔力を転生神に捧げ、お伺いを立てる事である。

拒否された場合は未来を結像出来ず、術は失敗する。


過去への時間操作は、()()が無くても行使出来る。

これが、シェリーの時に使った術だ。

だが、これは神の承諾を得ていないので、その姿で定着出来ず、時間で元に戻る。

シェリーを一時成長させたのも、この術の応用だな。


――――――


「なるほど。一旦整理しましょうか。要点は三つね。


・過去への時間操作は、出来ない事はない

・転生先の指定は出来ない

魔力暴走(オーバードライブ)を使わないと、どちらも出来ない


つまり、魔力量の問題を何とかしないと元に戻れないって訳ね」


「そうだな。でも、魔力暴走(オーバードライブ)をここで試すのはナシだぞ。

 あれは負担が大きいし、それでも魔力が足りないのは実証済みだからな」


「そうね。でも、一つ思い当たる方法があるわ。

 ここじゃ何だから、ちょっと場所を変えましょうか」


ティシアに促されて俺たちは立ち上がり、隣の部屋へと移動した。

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