第1話 追放から始まる物語
放課後の教室。私は窓の外をぼんやり眺めていた。神代美桜――どこにでもいる普通の女子高生のはずだった。
――その瞬間、空間が歪む感覚が走った。
白い光に包まれ、次の瞬間には見知らぬ大理石の広間に立っていた。
「勇者候補の皆さま、ようこそ」
荘厳な声が響く。前に立つのは、黄金の王冠を戴いた異世界の王。
どうやら私たちは、よくある「異世界召喚」に巻き込まれたらしい。
周囲のクラスメイトに次々と浮かび上がるステータスウィンドウ。
『勇者』『聖女』『剣聖』――皆、華やかな称号を手にして歓声を上げている。
けれど、私のウィンドウには――
『神代美桜 称号:不適合者』
ざわめきが広間を満たした。
「な、なんで私だけ……?」
胸がざわつく。
王の冷たい視線が私を貫く。
そして、宣告が下された。
「その者は追放せよ。我らが国に不必要だ」
光の輪が私を包み込み、次の瞬間――見知らぬ荒野に立っていた。
誰もいない。風だけが荒野を駆け抜ける。
ステータスウィンドウを開くと、そこには一つだけスキルが表示されていた。
『固有スキル:■■■(封印中)』
意味不明。だが心の奥で、何かがざわめいた。
「……これ、多分すごい能力だ」
こうして、クラス全員が英雄として讃えられる世界の影で、私は一人で物語を始めることになった。
追放から始まる、新しい英雄譚――。