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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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82. 実花、味のブレ修正で厨房を走る

 文化祭二日目の午前、焼きそばとタコスの屋台は昨日を超える勢いで賑わっていた。中庭に漂うソースの香りに誘われて、行列は途切れる気配がない。


 ――その喧騒の中。

 実花は厨房の隅にしゃがみ込み、鉄板から取り分けた焼きそばをひと口だけ味見した。


「……あれ?」


 眉をひそめる。昨日のあの濃厚で香ばしい風味と比べると、どうも物足りない。ソースのパンチが薄れている。


 ちょうどその頃、隣のタコス班からも声があがった。

「なんか今日のソース、濃いような……」


 偶然の一致に、実花はすぐさま立ち上がる。

「焼きそばは薄いのに、タコスは濃い……?」


 忙しさに追われる部員たちは気づいていなかったが、実花だけは見逃さなかった。

 味が――ブレている。


 ざわつく厨房。ピークの忙しさの中で、実花の胸に小さな警鐘が鳴り響いた。


 実花はすぐさま厨房スペースに飛び込み、髪をひとまとめに結び直した。

「ちょっと材料見せて!」


 焼きそば班の鉄板を覗くと、キャベツから水分がじわりとにじみ出ていた。炒めきれずに蒸されてしまい、ソースの味が薄まっている。

「……なるほど。キャベツの水分でソースが逃げちゃってるのね」


 次にタコス班の調理台へ駆け込む。そこで目にしたのは、チーズを具材の下に敷き込んでいる後輩の姿。

「チーズ、先に入れたの?」

「はい! そのほうが溶けやすいかと思って……」


 一見合理的だが、実花は首を振る。

「それじゃ味が偏っちゃう。チーズは温かい具材の上に重ねてこそバランスが取れるの」


 焼きそばは水っぽさ、タコスはチーズの順番。どちらも小さな違い。だが、その積み重ねが「味のブレ」という大きな差になって表れたのだ。


 実花は大きく息を吸い込み、両ブースに向かって声を張り上げた。

「みんな、原因わかった! 細かい手順がズレてたの! 今から直すから、ちゃんと聞いて!」


 忙しさの渦中でも、その声はしっかりと仲間に届いていった。


 実花は両手を腰に当て、きっぱりと指示を出した。

「焼きそばは――最後にソースを回しかけて、強火で一気に炒めるの! 水分を飛ばして香りを立たせれば、昨日の味に戻るはず!」


 鉄板前の翔子が目を見開いた。

「なるほど、だからコクが薄まってたのね!」


 続いてタコス班へ振り向く。

「タコスはチーズを必ず温かい具材の上に重ねて! その熱でとろけたチーズが全体をまとめてくれるから」


 具材を包んでいた杏子が、手を止めてうんうんとうなずいた。

「そっか……順番だけで味のバランスが変わるんだな!」


 実花は真剣な眼差しで仲間を見渡す。

「いい? 味の軸は絶対に変えちゃダメ。昨日のお客さんと同じ“感動”を、今日も届けるんだから!」


 一瞬、厨房の空気がぴんと張り詰める。

だが次の瞬間、みんなの返事が重なった。

「「「了解!」」」


 その声に、実花の胸に小さな誇らしさが灯る。


 「はい、次の焼き上がり――ソース投入はラスト!」

 翔子の手元に視線を走らせた実花は、タイミングを確認して大きくうなずく。強火の炎にソースがジュワッと広がり、甘辛い香りが一気に立ち上る。

「……うん、これなら昨日の味!」


 すぐさまタコスブースに駆け込む。

 杏子が具材を包む直前にチーズを重ねるのを見て、実花は小さくガッツポーズ。

「いいね! チーズのとろけ具合、完璧!」


 味見用の小皿を受け取り、口に運ぶ。――昨日と同じ濃厚なバランス。

「これならOK! 昨日の感動をちゃんと再現できてる!」


 部員たちがほっと息をつき、顔を見合わせる。

「よかった、昨日の味に戻った!」

「やっぱり実花先輩が頼りになるな……」


 実花は汗をぬぐいながらも、頼もしげに笑った。

「まだピークは続くけど――この味なら胸を張って出せる!」


 その声に、厨房の空気がぐっと引き締まり、再び戦場へ挑む士気が高まった。


実花は、走り回ったせいで前髪まで額に貼りついていた。肩で息をしながらも、みんなを見回して言う。

「……小さな違いでも積み重なると、大きな差になるんだよ。でも、みんなで直せば大丈夫!」


 部員たちが一斉にうなずき、誰かが声をあげた。

「やっぱり実花先輩、料理部の要だな!」


 その言葉に、思わず実花は頬を赤らめて笑う。


 ちょうどそこへ、焼きそばを受け取ったお客さんが「昨日と同じで美味しい!」と笑顔を見せた。

 続いてタコスをかじった別の生徒も「うまっ!」と親指を立てる。


 歓声に混じって、鉄板の音やスパイスの香りがまた広がっていく。

 実花は汗だくのまま、それでも心からの笑顔を浮かべた。

「……よし、これなら最後まで走り抜けられる!」


 文化祭のクライマックス――完売と大団円。その瞬間へと、料理部全員の士気が高まっていった。


実花は、走り回ったせいで前髪まで額に貼りついていた。肩で息をしながらも、みんなを見回して言う。

「……小さな違いでも積み重なると、大きな差になるんだよ。でも、みんなで直せば大丈夫!」


 部員たちが一斉にうなずき、誰かが声をあげた。

「やっぱり実花先輩、料理部の要だな!」


 その言葉に、思わず実花は頬を赤らめて笑う。


 ちょうどそこへ、焼きそばを受け取ったお客さんが「昨日と同じで美味しい!」と笑顔を見せた。

 続いてタコスをかじった別の生徒も「うまっ!」と親指を立てる。


 歓声に混じって、鉄板の音やスパイスの香りがまた広がっていく。

 実花は汗だくのまま、それでも心からの笑顔を浮かべた。

「……よし、これなら最後まで走り抜けられる!」


 文化祭のクライマックス――完売と大団円。その瞬間へと、料理部全員の士気が高まっていった。





レシピ掛け合い会(実花編)


舞台:部室。黒板に「文化祭の味を再現しよう!」と書かれている。


実花「じゃあ今日は、文化祭で評判だった焼きそばとタコスをもう一度作ってみよう。ブレない味を目指すよ!」


杏子「焼きそばは任せろ! 鉄板相手なら筋肉痛込みで付き合うぜ!」


翔子「そこまで根性出さなくても……。でも、手順は大事だからね。実花、もう一回確認して」


実花「はいはい。じゃあまず、焼きそばから」


【焼きそばの手順】


キャベツ・肉を炒める

 実花「キャベツは水っぽいと味が薄まるから、しっかり水切り!」

 翔子「昨日はそこが甘かったのね」

 杏子「おっしゃ、強火でガンガンいくぜ!」


麺投入

 実花「麺はあらかじめほぐしてから入れること。鉄板の上で固まりを崩そうとすると、焦げやすいから」

 杏子「焦げは香ばしさの証!」

 実花「それ、言い訳だから!」


ソースを仕上げに回しかける

 翔子「最初に入れると薄まるんだっけ?」

 実花「そう。最後に強火で一気に絡めて、香りを立てる!」

 杏子「おお、屋台の匂いがよみがえるな!」


【タコスの手順】


トルティーヤを温める

 実花「乾燥すると割れやすいから、軽く蒸気で温める」

 杏子「え、電子レンジでチンじゃだめ?」

 翔子「……やっぱり君は雑すぎる」


具材の順番を守る

 実花「チーズは必ず温かい具材の上! これを忘れると味が崩れる」

 杏子「あー、昨日それやったな……。チーズが先だと冷え冷えだった」

 翔子「順番まで味に影響するのね」


味のバランス確認

 実花「最後に必ず味見! 塩気やスパイスの濃さをチェックするのは必須!」

 杏子「そこまで徹底するのが実花流か」

 翔子「要するに、彼女が走り回ってたのは無駄じゃなかったってことね」


実花「ふふん、どう? これならブレないでしょ」

杏子「よし、これで次は完売間違いなし!」

翔子「むしろ……完売して筋肉痛にならない工夫も考えたいわ」

実花「それは……各自の体力次第かな」



文化祭の味レシピ

焼きそば(4人分)

材料


中華麺(蒸し麺)…4玉


豚バラ肉…200g


キャベツ…1/4個(ざく切り)


にんじん…1/2本(細切り)


サラダ油…大さじ2


焼きそばソース…大さじ6〜7(お好みで調整)


塩こしょう…少々


青のり・紅しょうが…適量


作り方


下準備

 麺は袋のまま軽く電子レンジで温め、ほぐしておく。キャベツはしっかり水切り。


炒める

 フライパンまたは鉄板に油を熱し、豚肉を炒める。色が変わったらキャベツ・にんじんを加える。


麺投入

 麺を加え、中火で全体を炒める。固まりはほぐしながら。


仕上げソース

 最後にソースを回しかけ、強火で一気に炒めて香りを立たせる。


仕上げ

 器に盛り、青のりと紅しょうがを添える。


ポイント:


キャベツの水分で薄まらないよう注意。


ソースは最後に絡めると香りUP。


タコス(4人分/8枚)

材料


トルティーヤ…8枚


合いびき肉…250g


玉ねぎ…1/2個(みじん切り)


ピーマン…1個(みじん切り)


サラダ油…大さじ1


ケチャップ…大さじ3


チリパウダー…小さじ1


塩こしょう…少々


ピザ用チーズ…80g


レタス、トマト、サルサソース…適量


作り方


具材炒め

 フライパンに油を熱し、玉ねぎ・ピーマンを炒める。ひき肉を加えて炒め、ケチャップ・チリパウダー・塩こしょうで味を調える。


トルティーヤ準備

 乾燥を防ぐため、フライパンまたは電子レンジで軽く温める。


具材を重ねる順番

 温かい具材 → チーズ → レタス・トマト → サルサソース。


仕上げ

 折りたたんで完成。


ポイント:


チーズは必ず「温かい具材の上」に置く。


味見をして塩気・スパイスを調整するのが大切。




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