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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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80. 杏子、接客で英語(カタコト)を

文化祭二日目の午前、タコス班のブースにはもう香ばしい匂いが漂っていた。

焼き上がるトルティーヤの音と、並び始めた生徒たちのざわめきにまぎれて――。


「お、また来たぞ!」

新入生男子が指差した先に、見慣れた顔ぶれが現れた。

昨日も来てくれた、英語教師のALTと、その友達らしい留学生グループ。背の高い子たちが「Tacos! Tacos!」と楽しげに声を上げながら歩いてくる。


「ほんとにもう一回来てくれるなんて!」

新入生女子が目を輝かせる。ブースの空気が一気に緊張と期待でざわめいた。


翔子は鉄板前で具材の準備に追われており、接客カウンターに立っていた杏子へと視線を送る。

「杏子、お願い。オーダー取って」


「えっ、わ、私!?」

杏子の目がまん丸になる。昨日までは翔子がスラスラ英語を使って注文をさばいていた。だが今日は調理の戦力が必要で、代わりに杏子に白羽の矢が立ったのだ。


外国人客たちがにこにこしながらカウンターに近づいてくる。

「Hello! Tacos please!」

明るい声に、杏子の喉がひゅっと鳴った。


(や、やるしかないっ!)


エプロンの裾を握りしめ、杏子はぎこちなく一歩前に出た。

「は、ハロー! タコス……えっと、ワン? ツー?」


部員たちが固唾を飲んで見守る。

文化祭二日目、タコス班の国際交流(?)は、杏子の勇気から始まろうとしていた――。


杏子は深呼吸をひとつして、笑顔を作った。

「ハ、ハロー! タコス……ワン? ツー?」


ぎこちない英語に、外国人客たちがぱっと笑顔になる。ALTの先生は「Two, please!」と指を二本立て、留学生の子も「I want three!」と元気よく答える。


「えっ、えっと……ツー? スリー?」

杏子は慌てて指を折りながら数える。自分の声がどんどん小さくなるのを自覚していた。


「Yes, yes! Five tacos!」

英語が一気に飛んできて、杏子の脳内は真っ白に。


「O-OK! Wait……プリーズ!」

カウンター越しに両手を前に出して、必死にストップジェスチャー。


その様子に、後ろで控えていた部員たちは「がんばれ……!」と心の中で拳を握った。

新入生女子が小声で「杏子先輩、すごい、ちゃんと通じてる……!」と呟く。


外国人客たちはそんな杏子の必死さににこやかにうなずき、「No problem!」「Take your time!」と笑顔で応じてくれる。


杏子は汗をかきながらも胸の奥でちょっとだけ安堵した。

(……なんとか、通じてる! よし、次もいける!)


緊張と笑いが入り混じる、タコス班の接客バトルはまだ続く――。


カウンター越しに、留学生のひとりが少し首をかしげて尋ねた。

「No spicy?」


杏子は一瞬固まったが、すぐに両手を振りながら、カタコトで叫ぶ。

「ノー! チリ、ノー! ソース……ライト!」


言葉は不格好でも、ジェスチャーを交えて伝える杏子の姿に、外国人客たちは声を上げて笑った。

「Good English!」


「っ……! サ、サンキュー!」

顔を真っ赤にして答える杏子。その姿があまりに全力で、見ていた部員たちも思わず笑みをこぼす。


新入生女子は手を叩きながら「杏子先輩、かっこいいです!」と小声で応援。

行列に並んでいた生徒たちまで「おおー!」と拍手を送る。


ちょっとしたやり取りが、模擬店の空気をぐっと和ませていく。

杏子は照れ笑いしながら、(……なんか、楽しいかも)と胸の奥で思うのだった。

できあがったタコスを紙に包み、杏子は少しぎこちない手つきで差し出した。

「Here! タコス!」


外国人客が笑顔で受け取りながら、はっきりとした発音で言う。

「Arigato!」


「……えっ!? 日本語!?」

杏子の目がまん丸になり、次の瞬間には大笑い。

「おぉ、日本語返し!? やば、なんかめっちゃ嬉しい!」


カウンターの奥で盛り付けをしていた翔子が、思わず小さく頷く。

「……ほんの一言でも、ちゃんと心に届くのよね」


新入生男子が感心したように呟いた。

「言葉って、ちょっとでも通じるんだなぁ」


部員たちの胸にじんわりと温かい気持ちが広がる。

異国の言葉も、日本語のひと言も、タコスと一緒に交わされたその瞬間――

そこにあったのはただ、笑顔と青春の文化祭らしい交流だった。


できあがったタコスを紙に包み、杏子は少しぎこちない手つきで差し出した。

「Here! タコス!」


外国人客が笑顔で受け取りながら、はっきりとした発音で言う。

「Arigato!」


「……えっ!? 日本語!?」

杏子の目がまん丸になり、次の瞬間には大笑い。

「おぉ、日本語返し!? やば、なんかめっちゃ嬉しい!」


カウンターの奥で盛り付けをしていた翔子が、思わず小さく頷く。

「……ほんの一言でも、ちゃんと心に届くのよね」


新入生男子が感心したように呟いた。

「言葉って、ちょっとでも通じるんだなぁ」


部員たちの胸にじんわりと温かい気持ちが広がる。

異国の言葉も、日本語のひと言も、タコスと一緒に交わされたその瞬間――

そこにあったのはただ、笑顔と青春の文化祭らしい交流だった。



◆掛け合い


杏子:「ハロー! タコス、ワン? ツー?」

新入生女子:「わ、杏子先輩すごい! ちゃんと英語で通じてました!」

杏子:「えへへ、ほとんどカタコトだけどね」

翔子:「カタコトでも、気持ちが伝わることが大事なのよ」

新入生男子:「俺も次やってみようかな……。でも、単語すら出てこないかも」

杏子:「大丈夫大丈夫! 笑顔とジェスチャーでなんとかなるよ!」

実花:「それって屋台のノリと同じじゃない? “元気で押す!”ってやつ」

一同:「あははははっ!」





文化祭タコス レシピ(約10人分)

◆材料


トルティーヤ(小サイズ) … 20枚


牛ひき肉 … 500g


玉ねぎ … 1個(みじん切り)


ピーマン … 2個(みじん切り)


トマト … 2個(角切り)


レタス … 1/2玉(細切り)


ピザ用チーズ … 200g


サラダ油 … 大さじ2


タコスシーズニング(スパイスMIX)


チリパウダー … 小さじ2


クミンパウダー … 小さじ1


パプリカパウダー … 小さじ1


塩 … 小さじ1


ブラックペッパー … 少々


サルサソース


トマト … 2個(粗みじん)


玉ねぎ … 1/4個(みじん切り)


レモン汁 … 大さじ1


塩 … 少々


◆作り方


牛ひき肉を炒める

フライパンに油を熱し、玉ねぎ・ピーマンを炒める。

牛ひき肉を加え、火が通るまで炒める。


スパイスで味付け

タコスシーズニングを加えてよく混ぜ、水大さじ3を加えて煮詰める。

→香ばしい“タコミート”完成!


サルサを作る

トマト・玉ねぎ・レモン汁・塩を混ぜ合わせる。


組み立てる

トルティーヤを温め、タコミートをのせる。

レタス・トマト・チーズをトッピングし、仕上げにサルサをかける。


◆ポイント


辛さ調整:チリパウダーを少なめにすれば子どもでも安心。希望者には「追加チリ」を別添え。


文化祭向け:


トルティーヤは一度にまとめて焼き、アルミホイルで保温。


具材はバイキング方式で置くと回転が速い。


国際交流感:

トッピングに「日本流」アレンジとして 照り焼きチキン や わさびマヨ を加えても盛り上がる。


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