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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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79. タコス班、外国人客への対応で大盛況

――午後、文化祭の熱気に包まれた模擬店エリア。

焼きそばの香ばしい匂いと、カレーのスパイスが混ざり合う中で、タコス班のブース前にひときわ目を輝かせた客たちが現れた。


「Tacos!」

「¡Tacos, por favor!」


陽気に声を上げたのは、留学生のグループと、いつも英語の授業でお世話になっているALTの先生だった。


「え、外国の人たち!?」

「やば、なんか本場チェックされる感じ……!」


突然の“国際審査員”の来訪に、部員たちは一瞬固まる。慌ててトルティーヤを持つ手が震える新入生もいた。


だが、翔子はすぐに一歩前に出た。落ち着いた笑顔で、英語を交えながら問いかける。


「Hello! Do you want beef taco? Or chicken?」


ALTの先生がにっこり笑いながら答える。

「Beef, please. Looks so good!」


留学生たちも「Chicken!」「Both!」と楽しそうに指差す。


翔子が手際よく注文を聞き取り、仲間たちに日本語で伝える。

「ビーフ2、チキン3! 盛り付け急いで!」


緊張していた部員たちも「はいっ!」と声を張り、手際よく具材を詰めていく。


異国の言葉と文化祭の喧騒が交錯する中――タコスのブースが一気に“国際色”を帯びた瞬間だった。



――焼きたてのトルティーヤに、彩り鮮やかな野菜とスパイス香る肉を包み込む。

タコス班の手から渡された一皿を、外国人客たちが手に取った。


「Let’s try!」

「¡Vamos a comer!」


ぱくりと一口。次の瞬間――。


「Delicious!!」

「Muy bueno!!」


グループ全員が一斉に顔をほころばせ、親指を高々と立てる。

「ソースが最高だ!」

「これ、ほんとに文化祭で作ったの!?」と、英語混じりの歓声が飛び交った。


その様子を見ていた周囲の生徒や保護者たちがざわめく。

「え、外国人が『本場の味』って言ってるんだよね?」

「じゃあ絶対おいしいじゃん!」


じわじわと人垣が厚くなり、タコス班の前に新たな行列が生まれていく。


「わ、わたしたち、いま国際認定された……!?」

新入生女子が目を丸くしながら呟くと、

翔子が苦笑しつつも嬉しそうに答えた。

「そうね。タコスは国境を越える“国際食”。今日はそれを証明できたってわけ」


胸を張るタコス班。香りと笑顔に包まれたブースは、文化祭の中でひときわ異彩を放ち始めていた。



模擬店の前で、背の高い留学生の男子がタコスを指さしながら、にこやかに口を開いた。


「What’s inside?」


突然の英語に、新入生男子がカチコチに固まる。

「え、えっと……イン、インサイド……? あ、あの、中身は……!」


必死に口をパクパクさせているのを見て、隣で翔子がさりげなく一歩前に出た。

「Beef, lettuce, tomato, cheese!」

流暢な発音で答えると、留学生がぱっと笑顔を広げる。


「Oh, sounds great!」

「日本のタコスもいいね!」


その一言に、周囲の部員たちの肩が一斉にほぐれた。

「……通じた!」「説明、ちゃんと伝わった!」

達成感に満ちた声が交わり、緊張から解放された笑みが浮かぶ。


「へへっ、俺も言いたかったんだけどな……」と小声で呟く新入生男子に、杏子が笑いながら肩を叩く。

「でも、ちゃんと“心意気”は伝わったって!」


料理と笑顔、そして拙いながらも勇気を出した会話が織りなす光景。

タコス班のブースは、文化祭という枠を超えたちょっとした“国際交流の場”になっていた。



「タコスが国際的にウケてるって!」

どこからともなくそんな噂が広がり、生徒や保護者たちが列を作りはじめる。焼きそばの香ばしい匂いに負けじと、スパイスの香りとトルティーヤの焼ける香ばしさが風に乗って漂う。


「もう……すごい行列!」新入生女子が目を丸くする。

「これ、焼きそばと並んでるんじゃ……?」実花が驚いたように呟いた。


鉄板の向こう、翔子は冷静にオーダーを仕分けながら、きびきびとした動きで部員たちを導く。

「次はビーフ三つ、チーズ多め一つ!」

「ラジャー!」と声を揃える部員たち。


杏子が顔を上げ、にやりと笑う。

「ふふっ、隠れ本命どころか……もう二大看板でしょ!」


その言葉に、部室仲間たちが思わず顔を見合わせて頷く。

焼きそばとタコス――文化祭の模擬店エリアで、家庭科部のブースは確かな存在感を放ち始めていた。



夕暮れが近づき、模擬店エリアはますます賑やかさを増していた。

タコス班の前では、国際色豊かな笑い声が響き、食べ終えた留学生たちが「See you again!」と手を振っていく。


翔子はトルティーヤを焼く手を止め、ふっと小さく息をついた。

「……料理って、本当に言葉を超えて伝わるのね」


その言葉に、隣の新入生女子が目を輝かせる。

「タコスで国際交流できるなんて、想像もしてなかったです!」

「うん、なんか誇らしい気持ちになるね」実花も笑顔を見せた。


汗を拭いながら、杏子が胸を張る。

「食べてもらって“美味しい”って伝わるの、最高じゃん!」


笑顔と充実感に包まれながら、部員たちは視線を中庭全体に向ける。

焼きそばもタコスも、どちらも大盛況。歓声と香りが交じり合い、文化祭の熱気を一層高めていた。


「さぁ――初日の夜まで、まだまだ盛り上げていくよ!」


その声に、仲間たちが元気よく「おーっ!」と応じる。

家庭科部の模擬店は、まさに文化祭の中心に輝いていた。


◆文化祭初日まとめ・掛け合い


(部室、模擬店終了後。片付けを終えて、椅子に座り込む部員たち)


杏子:「ふぅ~……疲れたぁ! でも、焼きそばめちゃくちゃ売れたね!」


新入生女子:「行列が途切れなくて、まるで夏祭りみたいでした!」


実花:「会計も補充も大忙しだったけど……正直、あの活気は気持ちよかったな」


翔子:「タコスも負けてなかったわよ。外国人のお客さんが絶賛してくれて、こっちも大行列」


蓮(男子部員):「“Delicious!” とか“Muy bueno!” とか言われて、俺ちょっと感動したわ」


杏子:「あはは、食べ物の力ってすごいなぁ。焼きそばとタコス、二大看板って感じ?」


実花:「そうね。どっちも人気で、文化祭を盛り上げる役になれたのは間違いないわ」


新入生女子:「……先輩たちが言ってた、“準備の大切さ”って実感しました!」


翔子:「ふふ、明日もあるんだから気を抜かないで。だけど今日は――よく頑張ったわね、みんな」


(全員で笑顔になりながら)


部員たち:「おつかれさまーっ!」


(夕焼けに染まる窓の外、文化祭初日の余韻が温かく広がっていく)





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