75. 蓮の和風バーベキューが大好評
夏休みの活動報告をまとめていた部室。
黒板には「カレー合宿」「キャンプBBQ」の文字が残っていて、そこに一人、手を挙げた男子部員がいた。
「……あの、俺も、得意料理を披露してみたいんだ」
照れくさそうに言うのは、料理部の数少ない男子、蓮。普段は黙々と調理をこなすタイプだが、今日は妙に真剣な表情だ。
「お、蓮が前に出るなんて珍しい!」
杏子がすかさず冷やかす。
「何やるつもり? まさかまた唐揚げ?」
蓮は首を横に振った。
「いや、俺がやりたいのは……和風BBQ」
「「「和風……バーベキュー!?」」」
部員たちが一斉に声を上げた。
想像できない組み合わせに、実花は首をかしげる。
「BBQって、肉を豪快に焼くイメージですけど……和風ってどうするんですか?」
翔子はニヤリと笑った。
「いいわね、挑戦的で。じゃあ次の特別活動は蓮が主役。“和風BBQ”をみんなで試すわよ」
「ええっ、ほんとにやるんですか!?」
驚く後輩たち。けれどその顔には、わくわくとした期待もにじんでいた。
「……蓮の料理なら外れないから、ちょっと楽しみかも」
真琴がスマホを構えながらつぶやくと、蓮は少しだけ照れて頬をかいた。
部室に、夏休みの新たな計画の空気が広がっていった。
次の活動日。合宿所の調理場に集まった部員たちの前に、蓮がずらりと並べたクーラーボックスの中身を披露した。
「今日のラインナップは……鶏もも肉の味噌漬け、それから鮭とホタテの柚子胡椒だれ。野菜はしいたけ、ししとう、長ネギを醤油だれに浸して……あと、焼きおにぎり用に味噌と醤油バターも用意してきた」
「……なんか、本格的!」
実花が思わず声を上げる。
テーブルの上に並べられた食材は、色鮮やかさこそ少ないが、タレの香りがふわりと立ちのぼり、部屋の空気を一瞬で和風に変えてしまう。
「見た目はちょっと地味めだけど……香りがすごいわね」
実花が鼻をくすぐる匂いにうっとりしながら呟いた。
「へぇー……唐揚げよりヘルシーって感じ?」
杏子が首をかしげつつも、すでに串打ちの手を伸ばしている。
「ふふ、でも逆にご飯が進んじゃうパターンかもしれないわよ」
翔子が微笑んで釘を刺すと、杏子は「うわ、それ絶対ヤバい!」と慌てて笑った。
蓮はそんな皆の反応に、少し照れながらも自信をのぞかせる。
「……外で炭火で焼いたら、もっと香ばしくなるから。楽しみにしてて」
部員たちは一気に期待を高め、食材の準備を手際よく進め始めるのだった。
キャンプ場の炊事場横、炭火の赤い光がゆらめく。
蓮は軍手をはめ、静かな所作で炭を組み替え、火力を調整していく。
「……よし、温度はちょうどいい」
そう呟いて網に味噌漬けの鶏肉をのせると、じゅわっと音を立てて油が滴り落ち、甘辛い味噌の香りが一気に立ちこめた。
「うわっ……これ絶対うまいやつじゃん!」
新入生男子が目を丸くし、杏子は「早く食べさせてぇ!」と網に顔を近づけすぎて翔子に軽く引き戻される。
「……煙と湯気、すごくいい」
真琴はスマホを構え、煙越しに鶏肉を狙って夢中でシャッターを切っていた。
「#香りまで届きそう #和風BBQ」と呟きながら、角度を変えて撮影に没頭する。
蓮はそんな賑やかな声に苦笑しながらも、網の上に柚子胡椒だれをまとった鮭とホタテを並べていく。炭火の熱でじわじわと表面が焼け、柑橘の香りが混じり合い、さらに食欲を刺激した。
「普段のバーベキューより……なんだか、しっとり大人っぽい雰囲気ね」
翔子が感心したように呟くと、実花もこくこくとうなずく。
「……和風だからこそ、香りが主役になるんだ」
蓮の言葉に、部員たちはさらに期待を高めていくのだった。
「じゃあ――いただきます!」
掛け声とともに、部員たちは一斉に箸を伸ばした。
まずは焼きおにぎり。
蓮が刷毛で味噌だれを塗り、網の上でじゅっと焦げ目をつけると、立ちのぼる香ばしい匂いに全員の胃袋が刺激される。
「か、香ばしさ爆発だこれ!」
新入生男子がひと口かじって、目を見開いた。
外はカリッ、中はほくほく。さらに味噌の風味が炭火で一段と引き立っている。
続いて魚介。柚子胡椒だれをまとった鮭とホタテを口に入れると、じわっと広がる旨味と、爽やかな香りが夏の暑さを一気に吹き飛ばす。
「わ……爽やか! さっぱりしてるのに、ちゃんと食べごたえある!」
実花が感動したように箸を止め、みんなも夢中で次の一口へ。
しいたけ、ししとう、長ネギの野菜串は、醤油だれと鰹節が絡んで箸が止まらない。
「え、普段より野菜がどんどん進むんだけど……!」
普段は肉一筋の杏子まで驚き、もぐもぐと食べ続ける。
「和風でもボリューム感あるじゃん! 全然物足りなくない!」
杏子が親指を立てると、蓮は少し照れくさそうに笑った。
「お祭りメニューにも応用できそうだよね。焼きおにぎりとか、絶対行列できる!」
実花が目を輝かせ、翔子も「確かに文化祭の候補に入れていいかも」とうなずく。
炭火の香りと笑い声に包まれながら、部員たちは和風バーベキューの魅力を存分に堪能するのだった。
「じゃあ――いただきます!」
掛け声とともに、部員たちは一斉に箸を伸ばした。
まずは焼きおにぎり。
蓮が刷毛で味噌だれを塗り、網の上でじゅっと焦げ目をつけると、立ちのぼる香ばしい匂いに全員の胃袋が刺激される。
「か、香ばしさ爆発だこれ!」
新入生男子がひと口かじって、目を見開いた。
外はカリッ、中はほくほく。さらに味噌の風味が炭火で一段と引き立っている。
続いて魚介。柚子胡椒だれをまとった鮭とホタテを口に入れると、じわっと広がる旨味と、爽やかな香りが夏の暑さを一気に吹き飛ばす。
「わ……爽やか! さっぱりしてるのに、ちゃんと食べごたえある!」
実花が感動したように箸を止め、みんなも夢中で次の一口へ。
しいたけ、ししとう、長ネギの野菜串は、醤油だれと鰹節が絡んで箸が止まらない。
「え、普段より野菜がどんどん進むんだけど……!」
普段は肉一筋の杏子まで驚き、もぐもぐと食べ続ける。
「和風でもボリューム感あるじゃん! 全然物足りなくない!」
杏子が親指を立てると、蓮は少し照れくさそうに笑った。
「お祭りメニューにも応用できそうだよね。焼きおにぎりとか、絶対行列できる!」
実花が目を輝かせ、翔子も「確かに文化祭の候補に入れていいかも」とうなずく。
炭火の香りと笑い声に包まれながら、部員たちは和風バーベキューの魅力を存分に堪能するのだった。
香ばしい煙がふわりと夜風に流れていく。
その匂いにつられるように、隣のキャンプ客たちがひょこひょこと顔を出した。
「すみません……すっごくいい匂いがして。何を焼いてるんですか?」
「え、和風の……バーベキュー?」
半信半疑の視線に、蓮は少し照れながらも焼きおにぎりを切り分け、鮭の切れ端を添えて差し出した。
「よかったら、少しどうぞ」
遠慮がちに受け取った人たちがひと口食べた瞬間――。
「……うまっ! え、これ売り物レベルですよ!」
「柚子胡椒ってこんなに合うんだ!」
予想外の絶賛に、部員たちは目を丸くした。
「ほら、言っただろ? 絶対うまいやつだって!」
杏子が胸を張って蓮を指さすと、蓮は顔を赤らめて視線を逸らした。
その様子を見ていた翔子が、ふっと口元を緩める。
「……文化祭で“和風BBQ丼”とか出せるかもしれないわね」
「「「それ絶対行列できる!!」」」
部員たちは一斉に盛り上がり、夜のキャンプ場に笑い声が響き渡った。
和風バーベキュー――蓮の企画は、思わぬ形で部の新たな目玉候補となったのだった。
夜の森に、焚き火の赤い火がぱちぱちと音を立てる。
ランタンの柔らかな灯りに照らされて、部員たちは丸く座り込んでいた。
「……なんか、こんなに喜んでもらえるとは思わなかったな」
蓮が照れくさそうに頭をかきながら笑う。
その笑顔に翔子がにっこりと頷いた。
「蓮の料理スキル、これからどんどん頼りにさせてもらうわ。今日で確信したもの」
「和風BBQ……これ、唐揚げとカレーに並ぶ“部の三本柱”だね!」
杏子が勢いよく指を立てると、実花も「確かに!」と即座に同意。
「じゃあ文化祭メニューはどう組み合わせる?」
「唐揚げと和風BBQ丼で二本柱とか? いや、三つとも出す?」
焚き火を囲んでの会話はどんどん盛り上がり、夜の空気に溶けていく。
星明かりの下で交わすアイデアは、まるで未来の文化祭を先取りしているかのようだった。
――夏の夜は静かに更けていく。
その時間すら、料理部にとっては大切な「青春の一皿」になっていた。
蓮の和風バーベキューレシピ
1. 鶏もも肉の味噌漬け
材料(4人分)
鶏もも肉 … 2枚(約500g)
味噌 … 大さじ2
みりん … 大さじ1
醤油 … 大さじ1
酒 … 大さじ1
作り方
調味料を混ぜて漬けだれを作る。
鶏もも肉を食べやすい大きさに切り、たれを揉み込む。
冷蔵庫で半日~一晩漬け込む。
網の端や弱火ゾーンでじっくり焼く。焦げやすいので途中でアルミホイルを敷いてもOK。
2. 魚介の柚子胡椒だれ焼き(鮭&ホタテ)
材料(4人分)
鮭切り身 … 2切れ
ホタテ貝柱 … 8個
醤油 … 大さじ1
オリーブオイル … 大さじ2
柚子胡椒 … 小さじ1/2(お好みで調整)
作り方
醤油・オリーブオイル・柚子胡椒を混ぜてたれを作る。
鮭・ホタテに軽くからめて10分ほど置く。
網で両面を香ばしく焼く。表面が白くなり火が通れば完成。
3. 香味野菜串(しいたけ・ししとう・長ネギ)
材料(4人分)
しいたけ … 4枚
ししとう … 8本
長ネギ … 1本
醤油 … 大さじ2
みりん … 大さじ1
鰹節 … 適量
作り方
野菜を食べやすい大きさに切り、串に刺す。
醤油とみりんを混ぜ、刷毛で野菜に塗る。
焼き上がったら鰹節をふりかけて仕上げ。
4. 焼きおにぎり(味噌・醤油バター)
材料(4人分)
ご飯 … 2合分(おにぎり8個程度)
味噌だれ:味噌大さじ1 + みりん小さじ2
醤油バターだれ:醤油大さじ1 + バター10g
作り方
ご飯を小ぶりの三角おにぎりに握る。
網の上で両面を素焼きして表面を固める。
片面に味噌だれ or 醤油バターを塗って再度焼く。
香ばしい焦げ目がついたら完成。
ポイントまとめ
味噌漬けは「焦げやすい」ので弱火ゾーンでじっくり。
柚子胡椒は辛みが強いので控えめに。
野菜は焼きすぎると水分が抜けるのでサッと。
焼きおにぎりは「素焼き→たれ塗り」で崩れにくくなる。




