74. 夏休み特別活動② 夜のキャンプでバーベキュー
夕暮れの山あい。森に囲まれたキャンプ場は、ひぐらしの声と川のせせらぎが重なり合い、夏休みの特別感を全力で演出していた。
料理研究部の面々は、大きなクーラーボックスや食材の詰まった袋を抱えて、ぞろぞろとキャンプ場に到着する。
「うっ……重っ……これ、本当に一泊分の荷物!?」
新入生男子が腰をかがめながら情けない声を上げる。
「根性よ、根性!」
杏子は両手いっぱいに炭袋を抱え、なぜか笑顔。汗だくでもテンションは高い。
「こっちのクーラーボックス、かなり重い……!」
実花が息を切らしながら後ろを振り返ると、翔子は涼しい顔でエプロン姿のまま歩いていた。
そして、キャンプ場の広場に荷物を下ろすと同時に、翔子はきりりと声を上げる。
「よし。今日は“アウトドア調理”の実践よ!」
その言葉に、部員たちの表情が一斉に引き締まる……かと思いきや、すぐにわくわくした笑顔に変わる。
「アウトドア……つまり、バーベキュー!?」
「やったー!夏っぽい!」
「でも……私、火おこしなんてやったことないんだけど……」
期待と不安が入り混じる部員たち。
森に吹く涼しい風に、これからのドタバタ劇の予感が混じっていた。
広場の真ん中に、キャンプ場備え付けのバーベキューコンロが設置された。炭を並べ、いよいよ火おこしに挑戦。だが――。
「……全然、火がつかないんですけど!」
新入生男子がマッチを擦っては炭に近づけるが、ぱちっと一瞬火が灯るだけで、すぐに消えてしまう。
「もーっ、こういうのは勢いだよ!」
杏子がうちわを手に取り、バッサバッサと全力で扇ぎはじめた。
その瞬間、煙がもくもくと立ち上り――
「げほっ、げほっ……! 目がぁぁぁぁーっ!」
涙目で顔を押さえながら、杏子が大げさにのたうつ。
「ちょっ……杏子先輩、やりすぎ!」
新入生女子が慌てて水を持ってくる。
「ふぅ……落ち着いて。火おこしはコツがあるの」
実花が冷静に口を挟むと、新聞紙を細く丸め、さらに着火剤を下に忍ばせる。
「ほら、こうやって空気の通り道を作れば――」
ぼっ、と小さな炎が広がり、炭にじわじわと赤い火が移っていく。
「おおっ……! ついた!」
新入生男子が歓声を上げ、杏子も涙目のまま「やったー!」と両手を上げる。
炎が安定し、炭が白く色づいていく様子に、全員の顔がパッと明るくなった。
こうして、夜のバーベキューへの第一歩が成功したのだった。
火が安定したコンロの上に、じゅうじゅうと音を立てて並べられる食材。
牛肉、鶏肉、ソーセージ、彩り豊かな野菜串、そして丸ごとのとうもろこし。
「いい? 強火ゾーンと弱火ゾーンを分けて、焼きすぎないように!」
翔子がトングを片手にリーダーらしく指導する。
「は、はいっ!」
新入生男子が必死に肉をひっくり返すが――
「うわっ、焦げる焦げる!」
慌てて持ち上げたソーセージから、ぱちっと脂が弾ける。
「アハハ、火に愛されてるねぇ!」
杏子がケラケラ笑いながら、今度はとうもろこしを転がす。
表面にこんがりと焦げ目がついていくたび、香ばしい匂いが辺りに広がった。
「#キャンプ飯 #夜の青春……っと」
真琴は手を止めてスマホを構え、肉と野菜の輝く断面をパシャリ。
「いいね、映えるわ」
テーブルの端では、実花がホイルにきのことバターを包み、火の端にそっと置いた。
「じっくり蒸し焼きにすれば、きのこの香りが閉じ込められるから」
「へぇーっ、さすが実花!」
さらに杏子が「デザートだ!」と叫び、マシュマロを串に刺して炙り始める。
ふわりと溶けて、外はカリッと、中はとろとろ――。
「んんっ、これは反則だわ!」
「甘っ! でも最高!」
笑い声と煙が夜の森に溶け、バーベキューはまさにクライマックスを迎えようとしていた。
じゅうじゅう――というより、バチバチッ!と音を立てながら煙がもうもうと立ちのぼった。
「……ちょ、ちょっと待って!これ、真っ黒じゃない!?」
実花が慌てて網の上の肉をひっくり返す。そこに現れたのは、炭のように黒光りするチキン。
「え、石炭ですか!?」
新入生男子が絶叫。
「いやいや、炭火焼きってこういう……レベルじゃないな!」
杏子が箸で突いて、カチンッと音を鳴らす。まさかの“硬質化”。
さらに追い打ちをかけるように――。
「やばっ、火強すぎ!?」
野菜串に炎が走り、一瞬で表面が真っ黒。ピーマンもナスも、炭の仲間入り。
「ぎゃー! 全滅だぁぁぁ!」
慌てる後輩たちに対し、翔子は冷静に指示を飛ばした。
「落ち着きなさい! 焦げた部分を削ればまだ食べられるわ!」
実花がナイフで丁寧に黒い部分をそぎ落とすと、まだ瑞々しい野菜の断面が顔を出す。
「ほら、リカバリー完了」
「おおおっ!」
杏子は真っ黒ソーセージをかじり――
「……うん、外はカリカリ、中はジューシー。意外とアリ!」
「それ無理してない!?」
一同が総ツッコミ。
そんなドタバタを繰り返しながらも、笑い声は絶えなかった。
煙にむせび、涙目になりながら――それでも箸は止まらない。
「やっぱり外で食べるって最高だな!」
誰かの言葉に、全員が「うん!」と声をそろえた。
じゅうじゅう――というより、バチバチッ!と音を立てながら煙がもうもうと立ちのぼった。
「……ちょ、ちょっと待って!これ、真っ黒じゃない!?」
実花が慌てて網の上の肉をひっくり返す。そこに現れたのは、炭のように黒光りするチキン。
「え、石炭ですか!?」
新入生男子が絶叫。
「いやいや、炭火焼きってこういう……レベルじゃないな!」
杏子が箸で突いて、カチンッと音を鳴らす。まさかの“硬質化”。
さらに追い打ちをかけるように――。
「やばっ、火強すぎ!?」
野菜串に炎が走り、一瞬で表面が真っ黒。ピーマンもナスも、炭の仲間入り。
「ぎゃー! 全滅だぁぁぁ!」
慌てる後輩たちに対し、翔子は冷静に指示を飛ばした。
「落ち着きなさい! 焦げた部分を削ればまだ食べられるわ!」
実花がナイフで丁寧に黒い部分をそぎ落とすと、まだ瑞々しい野菜の断面が顔を出す。
「ほら、リカバリー完了」
「おおおっ!」
杏子は真っ黒ソーセージをかじり――
「……うん、外はカリカリ、中はジューシー。意外とアリ!」
「それ無理してない!?」
一同が総ツッコミ。
そんなドタバタを繰り返しながらも、笑い声は絶えなかった。
煙にむせび、涙目になりながら――それでも箸は止まらない。
「やっぱり外で食べるって最高だな!」
誰かの言葉に、全員が「うん!」と声をそろえた。
焚き火の炎が小さくなり、夜の森はしんと静まり返っていた。
でもその静けさの中で、部員たちの心は妙に高鳴っている。
「なんかさ……今日のキャンプ、ただのバーベキュー以上だったよね」
実花がぽつりとつぶやく。
「うん。火起こしから片付けまで、みんなで力を合わせてさ」
新入生男子も頷く。
「つまり――夜のキャンプは、チームワーク強化&思い出作り、だな!」
誰かがそうまとめると、輪の中に「そうそう!」という声が重なり、笑い声が広がった。
そして――。
「なぁなぁ、やっぱ最後はアレだろ!」
杏子が焚き火に竹串を突き出す。先端にはふっくらしたマシュマロ。
「はい出ました! 焼きマシュマロおかわりタイム!」
歓声があがり、全員が再び火の周りに集まる。
マシュマロはじゅわっと焦げ目をつけられ、とろりと溶けて甘い香りを漂わせた。
「熱っ……でもうまっ!」
「おかわり! もう一個!」
「これ、文化祭でも出せないかな?」
笑顔と笑い声が止まらない。
――星空の下、甘く香ばしいマシュマロを頬張りながら。
この夜は、きっと誰の心にも忘れられない「夏の一コマ」として焼きついていった。
◆レシピ掛け合い会(夜のキャンプ場、焚き火を囲んで)
翔子:「さて、今日のBBQの総括をするわよ。成功点と改善点、次に繋げるために」
杏子:「あーい、先生! 一番の成功は“焼きマシュマロは正義”です!」
実花:「……それ、料理研究としてはどうなんですか」
新入生男子:「でも確かに、シンプルなのに盛り上がりましたよね。あれ文化祭の隠しメニューにどうです?」
真琴:「SNS映えもするし、いいアイデアかも」
翔子:「ふむ……。じゃあ次は肉の焼き方。反省点、ある?」
実花:「火力管理が大雑把すぎましたね。野菜が炭化しかけました」
杏子:「でもあの“焦げ救済作戦”は神だったよ! 焦げたとこ削って塩ふったら意外とイケる!」
新入生男子:「いやいや、あれは完全に応急処置ですから!」
真琴:「私は“ホイル焼き”が印象的だったな。キノコとバター、香りが最高だった」
翔子:「そうね、包み焼きは失敗が少ないしアレンジが効く。次は魚とかチーズも試してみましょう」
杏子:「賛成! てか次は“チーズ伸び〜”の写真撮って、絶対バズらせよ!」
実花:「結局そこなんですか……」
翔子(微笑んで):「まとめると――今日の教訓は“火加減と段取り”。でも、それ以上に“楽しさ”が味を引き立てる、ってことかしら」
全員:「はいっ!」
焚き火のぱちぱちとした音と共に、笑い声が夜の森に溶けていった。
◆レシピ掛け合い会(焚き火を囲んで)
翔子:「じゃあ、今日の成果を“レシピメモ”にまとめましょう。文化祭にも応用できるしね」
1. 牛肉の焼き方
新入生男子:「表面は強火で一気に焼いて、肉汁を閉じ込める! そのあと端によけて中火でじっくり火を通すのがコツですね」
翔子:「そう。強火一本調子だと炭になるわ。表面と中を“二段階で仕上げる”のが基本」
2. 焼きとうもろこし
杏子:「バターしょうゆ最強~! でも途中でアルミホイルに包んで蒸し焼きにしたら、芯まで甘くなった!」
実花:「直火で焦げ目をつけてから、ホイル蒸し。これで香ばしさと甘みの両取りですね」
3. 野菜串
真琴:「ピーマンやナスは火が通りすぎると崩れるから、オリーブオイルを軽く塗ってから焼くとジューシーに仕上がるわ」
翔子:「色味を考えるなら、パプリカやズッキーニを混ぜると映えるし、火加減も安定するのよ」
4. ホイル焼き(きのこ&バター)
実花:「アルミホイルは“二重にして口をしっかり閉じる”のがポイント。蒸気を逃さないで、きのこの旨味を凝縮できます」
杏子:「そこにチーズとか味噌とか足したら、絶対ご飯泥棒だよ!」
5. 焼きマシュマロ
新入生男子:「火の“炎”じゃなくて“熾火”に近づけると、表面が均一にきつね色になります!」
杏子:「あれは危険だよ…! 甘すぎて無限に食べちゃう!」
真琴:「写真映えも抜群。串からとろ~んと落ちる瞬間がベストショットね」
翔子:「まとめると――今日の教訓は“火加減を操ることが最高の味付け”。文化祭でも絶対に役立つわ」
全員:「はいっ!」
焚き火の光に照らされたノートには、青春の“実践レシピ”がしっかり刻まれていた。




