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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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67. タコス試作①トルティーヤ作り

家庭科室の調理台に、普段あまり見ない粉の袋がずらりと並んでいた。

小麦粉、コーン粉、コーングリッツ、塩に油……まるで異国の実験場だ。


「タコス試作――トルティーヤ!」

翔子がチョークを走らせ、黒板に大きくそう書きつける。

宣言と同時に、その場の空気がピリッと引き締まった。


「タコスの命は皮、つまりトルティーヤよ」

腕を組み、凛とした声。研究者モード全開の翔子に、部員たちが思わず姿勢を正す。


すると杏子が、気の抜けた調子で口を挟んだ。

「えー、パンケーキじゃダメなの? なんか似てるじゃん」


「……似て非なるものよ」

翔子の即答に、杏子は「ひえ」と肩をすくめる。


新入生たちはそのやり取りを見て、思わずひそひそ。

「本格的……」

「なんか、ただの調理実習じゃないぞこれ……」


家庭科室に、ちょっとした緊張感と期待の熱が漂い始めた。

ここから文化祭メニュー研究部(仮)の、新たな挑戦が始まるのだった。



「次は私の番ね」

翔子が袖をまくり、真剣な目つきでボウルにコーン粉をざらりと入れる。黄色がかった粉が舞い上がり、調理台が少しだけ南国の空気を帯びたように見えた。


「コーングリッツを増やすと……本場に近づくはず」

水を加えてこねると、生地は少しざらつき、扱いづらそうにひび割れていく。


フライパンで両面を焼き上げると、部屋に香ばしいコーンの香りが広がった。まるでメキシコ屋台の風景が一瞬、部室に浮かぶよう。


「おおっ!香りがすごい!」

新入生男子が目を輝かせる。だが、手に取った瞬間、ぱきりとヒビが入って中身がこぼれ落ちた。

「わっ……でも、すぐ割れます!」


杏子が慌ててフォローしながら言う。

「いや、美味しいのはわかるけど……屋台でこれ配ったら大惨事でしょ!」


翔子は眉をひそめ、悔しそうにトルティーヤを見つめた。

「……やっぱり本格さを追求すると、実用性との衝突は避けられないわね」


部員たちの間に「本物っぽさ」と「扱いやすさ」、その二つの基準が並び立つ空気が流れる。


――文化祭という舞台にふさわしい答えは、まだ先にある。


「よし、次は私がやってみる!」

実花が前に出て、ボウルに小麦粉とコーン粉を半々ずつすくい入れる。しゃらりと混ざり合う粉の色合いが、まるで“妥協点”を探しているみたいだ。


「両方のいいとこ取りを目指そう」

水と油を加えながらこねると、生地はさっきよりもしっとりして、扱いやすさと香ばしさの予感を同時に秘めていた。


フライパンで焼き上げると――。

表面はこんがりと香ばしく、中はもちもちと柔らかい。香りはしっかり立ちつつも、手に持っても崩れにくい。


「……おおっ!」

最初にかぶりついた新入生が、目を見開いた。

「モチモチなのに、香ばしい!これ一番食べやすいかも!」


杏子も腕を組んでうなずく。

「たしかに。これなら屋台で出しても混乱しなさそう」


翔子はじっと焼き色を見つめ、静かに結論を口にした。

「……文化祭で使うなら、この折衷案が一番現実的ね」


実花は胸をなでおろしながら笑った。

「研究した甲斐があったね!」


香ばしさと実用性――二つの要素が交わった瞬間、家庭科室の空気は少し誇らしげに温まった。


カツン、とチョークの音が響く。

翔子が黒板に「比較表」と大きく書き、その下に三列を引いていく。


「はい、整理するわよ」

彼女の書く文字が、粉チョークの白に浮かぶ。



◆レシピ掛け合い会(トルティーヤ編)


家庭科室のテーブルに、焼き上がった3種類のトルティーヤが並ぶ。

まだ湯気を立てている皮を囲みながら、部員たちはワイワイと感想を交わす。


杏子「まずは小麦粉バージョン! これは……なんかナンっぽい?」

新入生女子「パンみたいで食べやすいです!初心者でも安心!」

翔子「でもタコスって感じは薄いわね。文化祭らしい親しみやすさはあるけど、本場感ゼロ」


実花「次はコーン粉バージョンね。うわ、香りがすごい!」

新入生男子「うん、香ばしい!……けど、折りたたむとすぐ割れちゃう」

杏子「これ屋台でやったら、秒でクレーム来るわよ。『皮が破れましたー!』って」

翔子「扱いづらさが最大の欠点ね。でも味のインパクトは最強」


実花「じゃあ、最後にブレンド方式!」

(みんなで一口)

部員たち「あ、これいい!」

杏子「モチっとしてるのに、ちゃんとコーンの香ばしさもある!」

新入生女子「食べやすいし、本格っぽさも残ってます!」

翔子「……文化祭で使うなら、これが現実解ね。改良次第で化けるわ」


実花「よーし、じゃあトルティーヤはブレンド方式をベースに決定!次は――具材の研究だ!」

全員「おーっ!」


種類|特徴|欠点

小麦粉 |食べやすい/柔らかい |本場感に欠ける

コーン粉|香ばしい/本格的   |割れやすい/扱いにくい

ブレンド|両方のバランスが良い |要調整


「結論――」翔子がチョークを置いて振り返る。

「ブレンド方式をベースにして改良ね」


実花が両手をぱんっと合わせ、にっこり笑った。

「じゃあ次は“具材”の研究だ!」


「おーっ!」

部員たちの声が家庭科室にこだまし、さっきまで粉で白くなっていた空気が、次の挑戦に向けて熱を帯びていく。


青春の研究は、まだまだ続く――。




タコス用トルティーヤ(ブレンド方式)

材料(約10枚分)


薄力粉(小麦粉) … 100g


コーングリッツ(またはコーンフラワー) … 100g


塩 … 小さじ1/2


水 … 120ml(生地の状態を見て調整)


サラダ油 … 大さじ1


作り方


粉類を混ぜる

ボウルに小麦粉・コーングリッツ・塩を入れてよく混ぜる。


水と油を加える

少しずつ水とサラダ油を加え、まとまるまで手でこねる。

→ まとまりが悪ければ水を大さじ1ずつ追加。


生地を休ませる

ラップをかけ、常温で20分ほど寝かせる。

→ グルテンが落ち着いて伸ばしやすくなる。


生地を分けて伸ばす

生地を10等分し、麺棒で直径15cmくらいの薄い円形に伸ばす。


フライパンで焼く

強めの中火で片面30秒~1分ずつ焼く。

→ 焼き色がついたらすぐ返す。焼きすぎると割れやすくなるので注意。


ポイント


小麦粉:コーン粉=1:1 → モチモチ感と香ばしさの両立。


焼いたら 清潔な布で包んで保温 → パサつき防止。


大量調理時は、事前に焼いてジップ袋で保存→温め直しOK。




レシピ掛け合い会 ― トルティーヤ編


(家庭科室、焼き上がったトルティーヤを囲んで試食タイム)


杏子:「うん!もちっとしてるけど香ばしい!屋台で売るならこれだな!」

翔子:「やっぱりね。小麦粉だけだとパンっぽくて、コーンだけだと割れる。ブレンドが現実解よ」


新入生女子:「でも焼くとき、ちょっと焦がしちゃったらどうなるんですか?」

翔子:「……それはあなたの腕次第」

杏子:「おいっ、そこまでバッサリ言うな!でも確かに焼きすぎるとパリパリになっちゃうな」


実花:「私はこの“布で包んで保温”ってテクが気に入ったな。柔らかさキープできるし」

新入生男子:「へえ、パン屋さんみたい!でも文化祭で忙しい時に、ちゃんとできるかなあ?」

杏子:「そこは段取り勝負!…って言っても、焦って破いたら終わりか」


翔子:「要するに――生地は“ブレンド方式”、焼きは“慌てない”が鉄則ね」

実花:「はいはい、文化祭用レシピメモに書いておくから」

杏子:「おーし、次は具材だな!肉か?野菜か?やっぱチーズか!?」

新入生たち:「楽しみー!」



トルティーヤ(ブレンド方式)レシピ

材料(約8枚分)


コーン粉(コーングリッツ/マサ粉でも可)…100g


薄力粉 …100g


強力粉 …50g


塩 …小さじ1/2


水 …150〜170ml(生地のまとまりを見ながら調整)


サラダ油 …大さじ1


作り方


粉を混ぜる

ボウルにコーン粉・薄力粉・強力粉・塩を入れ、よく混ぜる。


水と油を加える

少しずつ水と油を加え、手でこねながらまとまりのある生地にする。

耳たぶくらいの柔らかさが目安


休ませる

生地をラップで包み、室温で15分ほど休ませる。

休ませることで伸ばしやすくなる


伸ばす

生地を8等分に分け、麺棒で直径15cmくらいの円形に伸ばす。

文化祭では伸ばした状態で冷凍・冷蔵保存しても可


焼く

熱したフライパンで両面を1分ずつ、中火で焼く。

焦げ目が少しつけばOK。焼きすぎると割れやすくなるので注意。


保温する

焼き上がったものは布巾で包み、乾燥を防ぐ。


ポイント


小麦粉多め → モチモチ、食べやすい


コーン粉多め → 香ばしいが割れやすい


ブレンド方式 → 文化祭向けの“いいとこ取り”


提供の工夫(文化祭用)


事前に大量に焼いて、布巾 or 保温ケースにストック。


少し温め直してから具材を包むと、香りが立って美味しい。



タコス具材レシピ(文化祭向け)

1. 定番ミートタコス

材料(8個分)


牛豚合い挽き肉 …300g


玉ねぎ(みじん切り)…1/2個


にんにく(みじん切り)…1片


サラダ油 …大さじ1


調味料


ケチャップ …大さじ3


中濃ソース …大さじ2


カレー粉 …小さじ1


塩・こしょう …少々


作り方


フライパンに油を熱し、にんにく・玉ねぎを炒める。


挽き肉を加え、ポロポロになるまで炒める。


調味料を加え、水分が飛ぶまで煮詰める。


文化祭向けポイント:スパイス控えめで日本人好みに。大量調理しやすい。


2. チキン照り焼きタコス(和風アレンジ)

材料


鶏もも肉 …2枚


サラダ油 …大さじ1


タレ


醤油 …大さじ3


みりん …大さじ2


砂糖 …大さじ1


酒 …大さじ1


作り方


鶏肉を一口大に切り、皮目からこんがり焼く。


タレを加えて照りが出るまで煮絡める。


日本らしさを出せる具材。焼き鳥感覚で人気が出やすい。


3. ベジタコス(女子人気・ヘルシー枠)

材料


レタス …適量


トマト …1個(角切り)


アボカド …1スライス


チーズ …適量


サルサソース(市販可) …適量


作り方


野菜を食べやすく切る。


トルティーヤに野菜・チーズをのせ、サルサをかける。


簡単・映える・軽い!「映え重視の女子高生」層を狙える。


4. スイーツタコス(番外・デザート枠)

材料


ホイップクリーム …適量


カットフルーツ(イチゴ・バナナなど)…適量


チョコソース …少々


作り方


トルティーヤを軽く温める。


ホイップとフルーツを包み、チョコソースをかける。


文化祭で「甘いのも欲しい」層に対応。SNS映えで話題になりやすい。


提供スタイル案


定番ミート …メイン商品


チキン照り焼き …和風アレンジ枠


ベジ …女子人気・ヘルシー枠


スイーツ …数量限定・映え枠

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