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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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64.文化祭テーマ発表「二品同時出店」

文化祭テーマ発表


 体育館に、生徒たちのざわめきが広がっていた。

 生徒会長がマイクを握り、はっきりとした声で宣言する。


「今年の文化祭は――“二品同時出店”をテーマに行います!」


 一瞬の沈黙のあと、体育館が一気にざわついた。


「え、二品!?」「仕込み2倍じゃん!」

「去年だって一品でてんてこ舞いだったのに!」


 生徒たちの間から悲鳴にも似た声が次々に上がる。笑い混じりのどよめきが、まるで波のように体育館を駆け抜けていく。


 家庭科部の席でも、同じ反応が起こっていた。

 実花は思わず隣の杏子に小声でつぶやく。


「……に、二品って、本気?」


 杏子は腕を組み、少し考え込むような顔をした。

「普通に考えれば倍の手間。でも……うちらならチャンスかも」


 その言葉に、翔子が眉をひそめる。

「現実問題、調理器具や人員は増えないのよ。理想だけじゃ回らないわ」


 まわりの生徒たちが一斉に「大変そうだ」と顔をしかめる中で、三人の間に走ったのは――期待と不安が入り混じる、静かな緊張感だった。


部室での第一反応


 全校集会が終わり、家庭科部のメンバーは足早に部室へ戻った。

 調理器具が整然と並ぶ静かな空間に腰を下ろすと、さっきまでのざわめきが急に現実味を帯びて迫ってくる。


「二品って……正直、ハードじゃない?」

 実花がノートを開きながら、ぽつりと本音を漏らした。


 杏子はすぐに明るい笑顔で切り返す。

「逆に考えればチャンスだよ! 二品も作れるなんて、家庭科部の存在感を一気に出せるじゃん!」


「存在感はいいけど、器具と人員を分けないと大混乱よ」

 翔子は冷静に現実を突きつける。

「去年の一品でもギリギリだったのを忘れてないでしょ?」


 実花がうなずきかけたそのとき、遠慮がちに手を挙げたのは新入生の男子だった。

「あの……出すなら、“ご飯系”と“デザート系”とかにしたらどうですか? お腹も満たせるし、甘いのも楽しめるし」


 その素直な意見に、場がふっと和らぐ。

「なるほど……二本立てでメリハリをつけるってことね」

 実花がペンを走らせると、少しずつ戸惑いの色が挑戦の熱に変わっていく。


候補アイデア出し


 部室の黒板に、次々とチョークの音が走る。

「ご飯系……オムライス、カレー、サンドイッチ」

「デザート系は……シュークリーム、パフェ、タルト」


 白く並んだ文字を前に、部員たちの目が一斉に輝きだした。


「わぁ、どれも美味しそう! 全部作りたい!」

 新入生女子が両手を胸の前で握りしめる。


「いやいや! 二品どころか三品以上になっちゃうだろ!」

 新入生男子が即座にツッコミを入れる。


 杏子は腕を組み、わざとらしく悩ましげな声をあげる。

「カレーもオムライスも捨てがたいし……パフェだって華やかで映えるし……どうすればいいの!」


「気持ちはわかるけど、そんなに手が回らないわよ」

 実花が苦笑しながらフォローを入れるが、声のトーンには本気の心配が混じっていた。


 そこで一歩前に出たのは翔子。黒板を指しながら、冷静な声を響かせる。

「大事なのは“何を作るか”じゃなくて、“どう分担するか”よ。調理と提供の役割分けができなきゃ、結局どれも中途半端になる」


 彼女の一言に、部室のざわめきがすっと収まる。

 黒板に並ぶ料理の文字が、ただの候補から「現実に立ち向かう課題」に見えてきた瞬間だった。


責任感の芽生え


 黒板に並んだ候補を見つめながら、部室の空気は少し重く沈んでいた。

 そんな中で、実花が小さく息を吸い込む。


「……でもね」

 彼女の声が全員の視線を引き寄せる。

「せっかく新入生のみんなも入ってくれたんだし、この“二品同時出店”を一緒に乗り越えたいの。――部活としての最初の大きな挑戦だから」


 その言葉に、新入生たちの顔が一気に明るくなる。


「じゃあ、俺たちも全力で手伝います!」

「そうですよ! やるなら本気で挑戦したいです!」


 瞳に宿る真っ直ぐな光。まだぎこちないけれど、その意欲は本物だった。


 杏子がにっこり笑って拳を軽く掲げる。

「よーし、頼もしい後輩たちじゃない! だったら、みんなで分担してやり切ろう!」


「二品同時でも、協力すれば絶対できるわ」

 翔子も冷静に同意し、その口元にはほんの少し誇らしげな笑みが浮かんでいた。


 先輩と後輩の視線が交わり、部室に自然と熱を帯びた空気が広がっていく。

 挑戦は確かに厳しい。けれど――だからこそ、全員で乗り越える価値がある。


 そう実感した瞬間、家庭科部はひとつのチームとして一歩踏み出したのだった。



前向きな締め


 沈んでいた空気を吹き飛ばすように、杏子がぱんっと手を叩いた。


「考えてみればさ、二品同時出店って……むしろ、うちの部にぴったりじゃない?」


 その声は明るく、挑戦を歓迎するような響きを持っていた。


 翔子は腕を組み、すっと顎を上げる。

「……まぁ、やるからには完璧に仕上げるわよ」

 その冷静さと自信が、部員たちの背中を押す。


 実花が黒板を叩き、笑顔で宣言する。

「よし! じゃあまずは――“何を出すか”から決めよう!」


「「「おーっ!!」」」


 部室に一斉に響いた声は、驚きと不安の混じったものではなく、これからに向かう決意に満ちた声だった。


 文化祭という大きな舞台に向かって、家庭科部の挑戦がいま動き出した――。



レシピ掛け合い会


黒板には大きく「候補レシピ」と書かれ、上から順に

【ご飯系】オムライス/カレー/サンドイッチ

【デザート系】シュークリーム/パフェ/タルト

と並んでいる。


杏子がチョークを握り、くるっと振り返る。

「じゃあここから本気のディベートタイムね!」


翔子は腕を組み、冷静に切り込む。

「オムライスはインパクトがあるけど、卵を大量に焼くのは大変。提供速度がネック」


「それ言ったらカレーだって、煮込み時間が長いじゃん?」

実花が即座に突っ込み、部屋に笑いが広がる。


新入生男子が手を挙げる。

「でもカレーって、作り置きできるし回転率いいと思います!」


新入生女子も負けじと声を上げる。

「パフェは映えます! 絶対SNSで話題になります!」


「SNS、ねぇ……。でも氷や生クリームの管理がシビアよ?」

翔子が現実的に返すと、女子は「ぐぬぬ」と言葉を詰まらせる。


杏子はにっこり笑ってまとめる。

「いいじゃん、その熱量! やっぱり“食べたい!”って思えるメニューが大事だよ」


「ならタルトも外せない。見た目の華やかさは一級品だし」

実花が黒板に丸をつけると、後輩たちが「いいですね!」と盛り上がる。


「……結局、どれも捨てがたいってことね」

翔子が小さくため息をつきながらも、口元はどこか楽しそうだった。




ご飯系候補:カレーライス(文化祭向け)

材料(約20人分)


牛肉または鶏肉 … 1.5kg


玉ねぎ … 3kg(大きめで約10個)


にんじん … 1.2kg


じゃがいも … 2kg


市販カレールー … 1kg(辛さを調整)


水 … 5L


サラダ油 … 適量


ご飯 … 約10kg(1人分200〜250g想定)


手順


玉ねぎは薄切りにして、油でじっくり炒め甘みを出す。


肉、にんじん、じゃがいもを一口大に切って炒める。


大鍋に炒めた具材と水を入れ、煮込む。


アクを取りながら野菜が柔らかくなるまで煮る。


火を止めてルーを割り入れ、よく溶かす。


弱火でとろみがつくまで煮込む。

大鍋で一気に仕込めて、提供も早い。


デザート候補:苺タルト(文化祭用アレンジ)

材料(直径18cmタルト×6台分/約36カット)


タルト台(市販または手作り) … 6枚


カスタードクリーム … 約2L


生クリーム … 500ml


苺 … 約3kg


ナパージュ(艶出し用ゼリー) … 適量


手順


タルト台を用意し、カスタードクリームを流し込む。


泡立てた生クリームを薄く広げる。


苺をスライス&丸ごと混ぜて華やかに並べる。


ナパージュで表面をコーティングして輝きを出す。

見た目の華やかさ抜群!カット販売で提供可能。


提供スタイル案


カレーライス:紙皿+スプーンでスピーディ提供。


苺タルト:カットして透明カップに入れ、フォーク付き。

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