表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/86

62. 歓迎会本番、先輩として初めての挨拶

放課後の家庭科室は、いつもの調理実習の雰囲気とはまるで違っていた。

壁際には色とりどりの紙飾りが揺れ、机の上には所狭しと並べられた料理が、まるでバイキングのように輝いている。


「うわぁ!豪華!」

新入生たちが思わず声をあげ、目を輝かせる。


大皿に盛られた筍ご飯の香り、チーズがこんがりと焦げ目をつけた春野菜グラタン、色とりどりのサンドイッチ。そしてデザートには、艶やかな苺が宝石のように並んだタルト。


杏子は料理を運びながら、ほっと息をついた。

「ふふ、みんなで頑張った甲斐があったね」


翔子も笑顔で頷く。

「これだけ並ぶと、さすがに圧巻だな。あとは本番を楽しむだけか」


教室に漂うのは料理の温かな香りと、少しの緊張感。

けれどそれは、試験前のような重苦しさではなく、舞台袖からステージを見守るときのような期待の高まりだった。


新入生たちは椅子に座るのも忘れて、料理をのぞき込みながら「どれから食べよう」と小声で盛り上がり、先輩たちは笑みを浮かべながらその様子を見守る。


――いよいよ、歓迎会の幕が上がろうとしていた。



「えっと……」

家庭科室の前方、黒板の前に立った実花は、両手に持ったメモをぎゅっと握りしめた。


黒板には大きく「新入生歓迎会」とチョークで書かれ、その下に並ぶ料理がまるで舞台の照明を浴びているかのように華やかに見える。


「今日の歓迎会は、先輩として……私たちが新入生を迎える最初のイベントです」


声は思ったよりもはっきり出た。けれど心臓の鼓動はどんどん速くなり、胸の奥に不安が膨らむ。

(ちゃんと笑顔で伝えられるかな。失敗したら、みんなの空気を壊してしまうかも……)


一瞬、視線が泳ぐ。


そのとき、横に座る杏子と翔子の目が自然と合った。

杏子はにっこりと、安心させるように微笑む。

翔子は小さくうなずき、「大丈夫、任せて」と目で語りかけてきた。


(……そうだ、ひとりじゃない。みんなで作った歓迎会なんだ)


胸に灯がともったように、実花の表情が少しずつ和らぐ。

その変化に気づいた新入生たちは、不安げではなく、むしろ期待に満ちた眼差しで彼女を見つめていた。


実花は小さく深呼吸をして、改めて笑みを浮かべる。

――先輩として、ここからが本当の出番だ。


実花は黒板の前に立ち、胸の奥の鼓動を抑えるように深く息を吸い込んだ。

目の前には、料理で埋め尽くされた机と、それを取り囲む新入生たち。

期待に輝く瞳が一斉に自分を見ている。


「……今日は来てくれてありがとう!」


声を張った瞬間、自分の中の緊張がすっと解けていくのがわかった。

言葉は自然に続いた。


「みんなで作った料理を囲んで、楽しい時間を過ごしましょう。

これから一緒に活動する仲間として、料理も勉強も、楽しみながら協力していきたいです!」


堂々とした声が家庭科室いっぱいに響き渡る。

その言葉を合図にしたように、会場がぱっと笑顔に包まれた。


「わぁ……!」

「いい先輩だなぁ」


新入生たちの小さな声が漏れ、すぐに温かい拍手が広がっていく。


(あ……伝わったんだ)


実花の胸がじんわりと熱くなる。

不安でいっぱいだったのに、いまは誇らしさで心が満たされていた。

拍手の中、杏子と翔子がこっそり親指を立てて見せる。


実花は思わず笑みを返した。

――先輩としての第一歩を、確かに踏み出せたのだ。



実花の挨拶が終わったあと、家庭科室にはしばし心地よい余韻が漂っていた。

ぱらぱらと続いた拍手がやがて笑顔に変わり、空気がやわらかくほどけていく。


「……緊張してたけど、先輩の言葉で安心しました!」

前列に座っていた新1年の女子が、ほっとしたように笑った。


「この部活、楽しそうでいいですね!」

別の男子がにこにこと声を上げると、周囲の新入生たちも一斉にうなずいた。


その言葉に先輩たちは思わず顔を見合わせ、安堵と喜びが胸に広がっていく。

会場の雰囲気は、さっきまでの緊張を忘れるほどに和やかで温かいものへと変わっていた。


実花は胸の奥で小さくつぶやく。

(……よかった。ちゃんと伝わったんだ)


自然と浮かんだ笑顔は、もう作り物ではなかった。

輪になった仲間たちの笑顔が、これから始まる日々の確かな絆を予感させていた。



料理の香りが漂う家庭科室に、笑い声が少しずつ満ちていく。

新入生たちは「どれから食べようかな!」と楽しげに皿を手に取り、先輩たちもそれを見守りながら自然と肩の力を抜いていた。


実花は胸に手を当て、深く息を吐く。

(……ちゃんと伝わったんだ。これからは私たちが、この部を引っ張っていかなきゃ)

不安で固まっていた心が、じんわりと温かい責任感へと変わっていく。


「最初の挨拶、バッチリだったね」

杏子がニヤリと親指を立てる。


「これで歓迎会も大成功のスタートだ」

翔子が落ち着いた声で続けると、実花は照れくさそうに笑った。


目の前のテーブルには、みんなで作った筍ご飯やグラタン、色とりどりのサンドイッチ、苺タルトが並んでいる。

それらを囲みながら輪になった新入生と先輩たちの姿は、もうすっかり“ひとつの仲間”だった。


実花はそっと口元をほころばせる。

「……よし、ここからが本番だね」


そう呟いた声は、これから続く日々への決意に満ちていた。


◆歓迎会メニュー・レシピ掛け合い会

1. 筍ご飯


実花:「筍は下茹でしてアクを抜くのが大事。鰹だしで炊き込むから、春の香りが広がるよ」

新1年女子:「大鍋で炊けば人数分一気に作れるんですね!」

翔子:「そう。盛り付けは小鉢に分けて取りやすくしてね」


2. 春野菜グラタン


杏子:「新玉ねぎや菜の花を入れて春っぽく!ホワイトソースはダマにならないように」

新1年男子:「オーブンの数、足りるかな?」

翔子:「交代で焼けば大丈夫。大皿で焼いて取り分けるのが効率的」


3. サンドイッチ


新1年女子:「彩りを考えて、ハムとレタス、卵、苺ジャムもいいかも!」

実花:「パンは前日に準備できるから、当日は具材を挟むだけ」

杏子:「切り口を揃えて並べると、見た目が一気に映えるよ」


4. 苺タルト


翔子:「タルト台は空焼きして、カスタードを敷いて苺を飾る」

新1年男子:「苺をハート形に並べたい!」

杏子:「いいじゃん!班ごとの個性が出るから楽しいね」

実花:「冷やす時間も考えて、段取り良く進めよう」


まとめ


実花:「みんなで協力して作れば、春らしい豪華なメニューになるよ!」

新入生たち:「わぁ、絶対楽しい!頑張ります!」




◆新入生歓迎会メニュー レシピ集

1. 筍ご飯(大鍋で炊く)


材料(20人分)


米 10合


茹で筍 600g


油揚げ 4枚


だし汁 1.8L


醤油 大さじ6


酒 大さじ6


みりん 大さじ4


塩 小さじ2


作り方


筍は薄切り、油揚げは細切りにする。


洗った米にだし汁・調味料を加え、具材をのせて炊く。


炊き上がったらさっくり混ぜ、小鉢に盛る。


2. 春野菜グラタン(大皿で取り分け)


材料(4大皿分・20人分)


マカロニ 400g


鶏もも肉 800g


新玉ねぎ 4個


菜の花 2束


牛乳 2L


バター 200g


薄力粉 200g


ピザ用チーズ 600g


塩・こしょう 適量


作り方


バターと小麦粉を炒め、牛乳を少しずつ加えてホワイトソースを作る。


茹でたマカロニ・鶏肉・玉ねぎを混ぜ、ソースと合わせる。


大皿に入れ、菜の花を散らしてチーズをのせ、オーブンで焼く。


3. サンドイッチ


材料(20人分)


サンドイッチ用パン 4斤(約80枚)


ハム 400g


卵 10個(卵サラダ用)


レタス 2玉


きゅうり 4本


マヨネーズ 適量


苺ジャム 適量


作り方


卵を茹でて潰し、マヨネーズで卵サラダを作る。


パンに具材を挟み、食べやすくカット。


断面が見えるように盛り付ける。


4. 苺タルト(デザート枠)


材料(直径18cm型×4台・20人分)


薄力粉 400g


バター 200g


砂糖 120g


卵 2個


卵黄 8個


牛乳 1L


バニラエッセンス 少々


苺 約3パック(600g)


作り方


タルト生地を作って型に敷き、重石をして空焼き。


卵黄+砂糖+小麦粉+温めた牛乳でカスタードを作り、冷やす。


台にカスタードを敷き、苺を並べて仕上げる。


提供の流れ


筍ご飯 → 大鍋で炊いて小分け


グラタン → 大皿ごと配膳、取り分け式


サンドイッチ → 並べて自由に取り分け


苺タルト → カットして小皿へ




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ