60. 春スイーツ実習:苺タルト
放課後の家庭科室。
窓から差し込む春の夕日が、作業台に並んだボウルや泡立て器をきらりと照らす。
黒板の前に立った実花が、チョークで大きく書き上げた文字は──
「春スイーツ:苺タルト」。
「今日は旬の苺をたっぷり使ったタルトを作ります!」
実花が声を張ると、ぱっと空気が華やぐ。甘酸っぱい苺の香りが漂ってきそうな期待感に、新入生たちはざわめいた。
「仕上げは見た目が勝負!」
杏子が頬に手を当て、楽しげに笑う。
「苺をどう並べるかで印象が変わるから、可愛く盛り付けようね」
「生地やクリームは手際が肝心」
翔子は腕を組み、冷静に言葉を添える。
「段取りを意識して進めれば、失敗なく仕上がるはずよ」
「苺スイーツだ!楽しみ〜!」
「絶対おいしいやつじゃん!」
新入生たちは一斉に声をあげ、作業台に身を乗り出した。
甘い香りと笑顔に包まれた、春のスイーツ実習が今、始まる──。
作業台に、きちんと並べられた材料。
薄力粉にバター、砂糖と卵──タルト生地用のセット。
その横には、牛乳と卵黄、バニラエッセンス。カスタードの香りを思い浮かべるだけで、甘さに頬が緩みそうだ。
そして、バスケットいっぱいの真っ赤な苺。洗ってヘタを落とすだけでも、可愛らしくて存在感がある。
「分量をきっちり計るの、大事ですね!」
1年女子の几帳面タイプが、真剣な眼差しでスケールを覗き込む。
一方で──
「苺、つまみ食いしそうになる……!」
お調子者の1年男子が、こっそり苺を摘もうと手を伸ばしかけて、慌てて実花に睨まれる。
「こら、まだ早い!」
実花が軽く咳払いして、黒板の前から手を叩いた。
「まずはタルト生地から作るよ。冷やす時間もあるから、段取りを考えながらね」
材料の確認が済んだ教室には、苺の甘酸っぱい香りと、作業開始前の高揚感が満ちていた。
調理台の上で、ボウルにバターと砂糖が入れられる。
木べらで混ぜるたびに、バターの黄色と砂糖の白が少しずつ馴染み、クリーム色に変わっていく。
「バターが柔らかすぎてもダメ、冷たすぎてもまとまりにくいよ」
翔子が冷静な声で注意を飛ばす。彼女の手元はリズムよく動き、まるでお手本のようだ。
「ここで空気を含ませると、焼き上がりがサクサクになるんだよ!」
杏子は楽しげに木べらを上下させ、ふわっとした生地を見せつけるように掲げる。
新入生たちは真似をして、ボウルの中で木べらを回すが──
「うわっ、意外と力いる!」
「手が疲れてきた……でも楽しい!」
笑い声を交えながら、生地は少しずつひとつの塊になっていく。
バターと粉が手の温度でまとまり、春の苺タルトの土台が、ここでようやく形を取り始めていた。
小鍋で温められた牛乳から、ふんわりと甘い湯気が立ち上る。
その横で、新入生たちは卵黄と砂糖、薄力粉を混ぜたボウルを必死にかき混ぜていた。
「はい、ここで少しずつ牛乳を加えて……焦がさないように混ぜ続けるのがポイント!」
実花が真剣な声で指示を飛ばす。
「わ、わっ……とろみがついてきた!プリンみたい!」
新1年女子が目を輝かせ、スプーンを持つ手を止めかける。
「手ぇ止めない!ダマになるよ!」
慌てて翔子がツッコミを入れると、場がちょっとだけ笑いに包まれた。
「はいはい〜。できたクリームは粗熱を取って、冷やすときはラップをぴったり密着させてね。表面が乾いちゃうと美味しさ半減だよ」
杏子がラップを手に、にっこりとお菓子屋さん顔負けのコツを伝授する。
鍋の中では、しっとりとなめらかなクリームが黄金色に輝いていた。
甘い香りと一緒に、新入生たちの期待もふくらんでいく──。
オーブンの中で、タルト台がじんわりと色づいていく。
重石のカラカラとした音が家庭科室に響き、甘く香ばしい匂いが漂った。
「焼き時間と色をよく見てね、焦げないように」
翔子が真剣な眼差しでオーブン越しに告げる。まるで審判のような緊張感に、新入生たちは思わずごくりと息を呑んだ。
やがて焼き上がったタルト台を取り出すと、ほんのり黄金色。
「おおーっ!」と拍手が上がる中、実花がカスタードをスプーンで広げ、丁寧に敷き詰めていく。
「よし、ここからは苺の飾り付け!」
「俺、苺をハート形に並べたい!」
勢いよく手を挙げたのは、新1年男子。
「お、いいじゃん。可愛さ重視もアリだね!」
杏子が笑いながら応援し、ついでに「インスタ映えするよ!」とウインク。
「映えって大事ですよね〜!」
新1年女子も嬉しそうに苺を花びらのように配置し始める。
赤い苺がカスタードの黄色の上に並ぶたびに、タルトはどんどん華やかになっていった。
まるで春そのものを閉じ込めたかのような鮮やかさに、家庭科室の空気までぱっと明るく染まる。
焼きあがったタルトは、赤い苺と黄色いカスタードがきらきらと輝いていた。
みんなで息を合わせてナイフを入れると、サクッと軽やかな音が家庭科室に響く。
「わぁ……切るのも緊張するね!」
新入生女子がそっと皿に取り分けると、甘い香りがふわっと広がった。
「熱いから気をつけて!」と実花が声をかけつつ、自分の一切れを口に運ぶ。
「苺の甘酸っぱさとカスタードの相性抜群だね!」
自然と笑顔がこぼれる。
「盛り付けが班ごとに個性出てて面白い!」
杏子がテーブルを見回すと、ある班は花の形、別の班はハート形、そして豪快に山盛りの班まであって、それぞれが春の景色のように鮮やかだった。
翔子は満足げに腕を組んでうなずいた。
「作業を分担したから、スムーズに仕上がったね。全員で力を合わせた結果だよ」
「スイーツ作り最高!また挑戦したい!」
新入生たちの歓声が家庭科室に弾ける。
甘い香りと笑い声に包まれながら、放課後の実習は春の余韻を残して幕を閉じた。
苺タルト・レシピ掛け合い会
実花:「今日は春のスイーツ代表、苺タルトのレシピを掛け合い形式で紹介します!」
杏子:「完成したら“映え”間違いなし!友達に自慢できるよ〜」
翔子:「手順は多いけど、分担すれば効率よく作れるから安心してね」
材料(18cmタルト型1台分)
薄力粉 … 150g
バター … 75g
砂糖 … 50g
卵 … 1個
牛乳 … 250ml
卵黄 … 2個分
薄力粉(カスタード用)… 20g
バニラエッセンス … 少々
いちご … 1パック
粉砂糖 … 少々(仕上げ用)
作り方
①タルト生地作り
翔子:「バターと砂糖をすり混ぜて、卵を加える。粉を入れてさっくりまとめてね」
実花:「まとまったらラップして冷蔵庫で30分休ませるのを忘れずに!」
新入生男子:「あ、寝かすってパンみたいですね!」
杏子:「でも生地は寝かせすぎ注意、固くなりすぎちゃうよ」
②タルト台焼成
翔子:「生地を伸ばして型に敷き、フォークで穴を開ける」
実花:「重石をのせて空焼き。焦げないように色を見てね」
新入生女子:「きつね色になってきた〜!」
③カスタードクリーム
杏子:「牛乳を温めて、卵黄+砂糖+薄力粉を混ぜたボウルに少しずつ加えるよ」
実花:「焦がさないように混ぜ続けて、とろみをつける!」
新入生女子:「プリン作ってるみたいで楽しい!」
翔子:「冷やすときはラップを表面にぴったり貼って、乾燥を防ぐのがポイント」
④組み立て
実花:「焼き上がったタルト台にカスタードをたっぷり敷き詰めます」
新入生男子:「苺をハート型に並べたい!」
杏子:「いいね!可愛さ重視もアリ!インスタ映え確定」
翔子:「彩りも意識して並べるとプロっぽいよ」
⑤仕上げ
実花:「最後に粉砂糖をふって完成!」
新入生たち:「わぁ〜!春の宝石箱だ!」
ポイントまとめ
生地は冷やす→扱いやすさUP
カスタードは焦がさない&ラップで乾燥防止
苺の並べ方で個性が出せる
杏子:「苺タルトは“味+見た目”で春らしさを演出できるよ!」
翔子:「段取りを意識すれば、班でも失敗なし」
実花:「次は誰がアレンジタルトに挑戦する?」
新入生たち:「やってみたい〜!」
苺タルト レシピ(18cmタルト型1台分)
材料
◆タルト生地
薄力粉 … 150g
バター(無塩・冷たいもの) … 75g
砂糖 … 50g
卵 … 1個
◆カスタードクリーム
牛乳 … 250ml
卵黄 … 2個分
砂糖 … 50g
薄力粉 … 20g
バニラエッセンス … 少々
◆飾り
苺 … 1パック(お好みでたっぷり)
粉砂糖 … 少々(仕上げ用)
作り方
1. タルト生地
バターをボウルに入れ、砂糖を加えて白っぽくなるまで混ぜる。
溶き卵を少しずつ加え、よく混ぜる。
薄力粉をふるい入れ、ゴムベラでさっくりと混ぜ、生地をまとめる。
ラップに包み、冷蔵庫で30分休ませる。
2. タルト台焼成
冷やした生地をめん棒で伸ばし、型に敷き込む。
フォークで底に穴を開け、オーブン用シートと重石をのせる。
180℃に予熱したオーブンで15分焼く。重石を取り、さらに10分ほど焼いて色を付ける。
3. カスタードクリーム
牛乳を小鍋で温める。
ボウルに卵黄・砂糖を入れ、白っぽくなるまで泡立て器で混ぜる。
薄力粉を加えてよく混ぜ、温めた牛乳を少しずつ加えて伸ばす。
鍋に戻し、中火でとろみがつくまで絶えず混ぜる。
バニラエッセンスを加え、バットなどに移してラップを表面に密着させて冷やす。
4. 組み立て
焼き上がったタルト台にカスタードクリームを均一に広げる。
苺を好みの形に並べる。(ハート形や円形に並べると可愛い)
仕上げに粉砂糖をふる。
ワンポイント
生地は冷やすことで扱いやすく、焼き上がりもサクサクに。
カスタードは焦げやすいので火加減注意。
苺の並べ方で個性が出せる → “インスタ映え”に直結!
完成!
見た目も春らしく、苺の甘酸っぱさとカスタードの濃厚さが相性抜群のタルトです




