第54話:体験入部② おにぎり大会
集合・ルール説明
放課後の家庭科室。
大きな調理台を囲むように、新入生と先輩たちが集まっていた。
実花が前に立ち、手をパンと叩く。
「それじゃあ――今日は おにぎり大会 をします!」
「おにぎり大会!?」
新入生たちから小さなどよめきが起こる。
杏子がすかさず両手を広げ、にやりと笑った。
「形も味も自由! いちばん美味しそうなおにぎりを作った人が勝ちだよ!」
「えっ、形も!? ハート型とか?」と一人がざわつく。
すかさず翔子が冷静に釘を刺す。
「忘れないで。審査は見た目、工夫、味……そして、片付けのスピードも加点対象だから」
「片付け!?」
一斉に新入生たちの声が裏返る。
「そっちも勝負なんですか!?」
「うわー、最後まで気が抜けない!」
教室は一気に笑いとやる気に包まれ、わいわいとした雰囲気に。
実花はその光景を見て、(よし、いい空気になってきた!)とほっと胸をなでおろすのだった。
具材紹介&チーム分け
調理台の上に、色とりどりの具材がずらりと並べられた。
鮭フレーク、梅干し、ツナマヨ、昆布、チーズ、唐揚げ、海苔……まるで小さなビュッフェのようだ。
杏子が胸を張って宣言する。
「ジャーン! 部室予算をフル投入した豪華ラインナップだよ!」
「すごい……!」
新入生たちの目が一斉に輝き、ざわめきが広がる。
「じゃあ、まずはチーム分けね」
実花が箱を取り出し、中に入った紙くじをシャカシャカ振る。
一人ずつ引いていくと、三つのチームに分かれることになった。
「わあ、初めての人と一緒だ」
「でも逆にワクワクする!」
そんな声が飛び交い、空気はすっかり和やかに。
その中で――新一年生たちの個性が早速爆発する。
几帳面な女子は、スッとノートを取り出した。
「えっと……鮭とチーズは相性がいいけど、梅干しと一緒だと味がぶつかる……。ここは組み合わせを整理して――」
まるで研究者のような真剣な眼差しに、周囲が「ガチだ…!」とざわつく。
一方、お調子者男子は唐揚げを掴み、キラキラ笑顔。
「よし、デカい唐揚げ入れようぜ! ドーン!って感じで!」
「いや、それもうおにぎりっていうか、唐揚げメインじゃん!」と即ツッコミが飛ぶ。
そしてスイーツ好き女子は、具材を前に悩み顔。
「チーズと海苔……いや、でもデザートっぽくしたい……。砂糖ご飯ってアリですかね?」
「え、それはチャレンジャーすぎない!?」と、隣の先輩が思わず吹き出す。
わいわい賑やかな声が重なり合い、家庭科室はすっかり「お祭り会場」みたいになっていた。
調理開始
「じゃあ、いよいよおにぎり作りスタート!」
実花がぱっと手を広げ、テーブルの真ん中に炊き立てご飯のボウルを置く。ふわっと立ちのぼる湯気に、新入生たちが「わぁ…!」と歓声をあげた。
「まずはね、ご飯をちょっと冷ましてから握るのがポイントだよ」
実花はしゃもじで手際よく混ぜ、湯気を逃がす仕草をしてみせる。
隣では翔子が、冷静に補足。
「ラップを使えば手も汚れにくいし、形も崩れにくいよ。効率を考えるならこっち」
実用的なアドバイスに、1年生たちは「なるほど!」と頷き、真剣にラップを手に取る。
そして杏子が、両手を腰に当てて笑顔で宣言。
「でもでも、見た目勝負なら――ハート型! 星型! ぜーんぶアリだからね!」
「え、星型!?」
「やってみたい!」
彼女のテンションに、場の空気が一気に華やぐ。
新入生たちは思い思いに挑戦を始めた。
几帳面女子は三角形をきっちり揃え、まるで教科書に出てきそうな完璧なおにぎりを完成させる。
お調子者男子はご飯を両手で豪快にまとめ――
「爆弾おにぎりだーッ!」
とドーンと机に置く。
「でかすぎ! それ何人前!?」と先輩たちから総ツッコミ。
スイーツ好き女子は、チーズをはさみ込みながら丸型をちょこんと作り、にっこり。
「これ、チーズが溶けたら最高なんですよ〜」
思わず頬が緩むような可愛い仕上がりに、見ていた子たちも「食べたい!」と声をあげる。
笑い声と感嘆の声が飛び交い、家庭科室はすっかり調理実習というより遊園地の屋台みたいな賑やかさになっていた。
審査タイム
調理台にズラリと並んだおにぎりの数々。
三角、丸、ハートに星、果ては「爆弾サイズ」まで――家庭科室のテーブルが、一瞬でおにぎりフェス会場みたいになった。
「わぁ…彩りがきれい!」
実花が目を輝かせて見渡す。鮭フレークの赤、青じその緑、チーズの黄色。海苔の黒がアクセントになり、どれも個性が際立っていた。
翔子は腕を組み、冷静に分析。
「具材のバランスもいいね。塩加減も控えめで、食べやすそう」
的確なコメントに、新入生たちが「やった!」と小さくガッツポーズする。
「でもやっぱ、これは映えるね〜!」
杏子が指差したのは、スイーツ好き女子が作ったカラフルなトッピングおにぎり。チーズと海苔の組み合わせに、ほんのりハート模様の型抜きがのっている。
「インスタでバズるやつ!」
「えへへ…!」と新入生は嬉しそうに頬を染めた。
そこへ顧問が顔を出し、テーブルを眺めて目を丸くする。
「……これだけあったら、晩ご飯いらないな」
そのぼやきに、部屋中がどっと笑いに包まれた。
爆弾おにぎりを掲げたお調子者男子は得意げに胸を張り、几帳面女子のおにぎりは「完璧な三角!」と皆から称賛される。
一つ一つに作った人の個性がくっきり表れていて、ただの“料理”というより、まるで小さな作品展のようだった。
結果発表&まとめ
「それじゃあ――優勝は……」
実花がドラムロールの真似をして場を盛り上げる。新入生たちは息を呑み、テーブルを見つめた。
「……几帳面女子さんの“彩りヘルシー三色おにぎり”です!」
「わぁっ!」
拍手が一斉に湧き起こる。赤・緑・黄色の具材が整然と並び、形も崩れず美しい。几帳面女子は顔を赤くしながらも、ちょこんとお辞儀した。
「でもね、どのおにぎりもすっごく美味しかったよ!」
実花が笑顔で全員に視線を向けると、空気がさらに和やかになる。
翔子はテーブルの片付けを見やりながら冷静に言った。
「今日みたいに協力すれば、大人数でもちゃんと回せるって分かったわね」
部員たちも新入生も頷き、実感がこもった笑みを浮かべる。
「次のイベントはもっと派手にやろうよ!」
杏子が拳を突き上げると、歓声と笑いが返ってきた。
片付けを終え、家庭科室を出る頃。
「楽しかったです!」
「次も絶対来ます!」
新入生たちは声を揃えて笑顔を見せ、足取り軽く帰っていった。
その背中を見送りながら、実花たち三人は小さく拳を合わせる。
――今年の料理部は、ますます賑やかになりそうだ。
おにぎり大会レシピ掛け合い会
実花「今日のおにぎり、みんな個性出てたね!じゃあ、今回のレシピを改めて整理しておこうか」
杏子「レシピって言っても、ご飯と具材と海苔があれば完成じゃん!あとはセンス勝負!」
翔子「はいはい、でも一応基本を抑えておかないと。――ほら、新入生たちもいるんだし」
基本のおにぎり(1個分)
ご飯(温かいもの)…100g前後
塩…ひとつまみ
好きな具材(鮭・梅干し・ツナマヨ・昆布など)…適量
焼き海苔…1/2枚
実花「ご飯は炊きたてを少し冷ましてからね。熱すぎると海苔がしんなりしないし、やけどの原因になるから」
翔子「ラップを使って握れば手も汚れないし、衛生的よ」
杏子「でも、直に手で握った方が“お母さんのおにぎり感”は出るんだよね〜」
アレンジ例
三色おにぎり(鮭+青菜+卵そぼろ)
唐揚げ爆弾おにぎり(大きめ唐揚げを丸ごとイン!)
チーズ&昆布の洋風おにぎり
顔つきデコおにぎり(海苔やチーズで顔をつける)
几帳面女子「彩りを考えると、赤・緑・黄の三色を入れると綺麗にまとまります」
お調子者男子「オレの唐揚げおにぎり、最強じゃね?一口でテンションMAX!」
スイーツ好き女子「甘じょっぱいチーズ昆布、めっちゃアリだと思うんですけど!」
杏子「いやいや、顔つきおにぎりがインスタで一番映えるでしょ!」
翔子「どれも“自分らしさ”が出てるのは確かね。文化祭メニューに活かせるかも」
実花「うん!今日みたいにバリエーションを楽しめば、みんなで作るのがもっと楽しくなるよ!」
基本の塩むすび(2個分)
材料
ご飯(炊きたてを少し冷ましたもの)…200g
塩…小さじ1/4
焼き海苔…1枚
作り方
ご飯を2等分にする。
手に塩を少量つけ、軽く丸めるように握る。
(ラップを使ってもOK)
形を三角、丸など好みに整える。
焼き海苔を巻いて完成。
定番アレンジ
① 鮭フレークおにぎり
塩むすびを握るとき、真ん中に鮭フレークを小さじ2入れる。
② 梅干しおにぎり
種を取った梅干しを具にする。疲労回復に◎。
③ ツナマヨおにぎり
ツナ缶(小さじ2)+マヨネーズ(小さじ1/2)を混ぜて具に。
④ 昆布おにぎり
佃煮昆布を小さじ2ほど具に入れると、ご飯とよく合う。
個性派アレンジ(今回の大会風)
三色おにぎり(几帳面女子作)
鮭フレーク、青菜炒め、卵そぼろを層にして彩りを出す。
唐揚げ爆弾おにぎり(お調子者男子作)
大きめ唐揚げを丸ごと1個入れる。食べ応え抜群!
チーズ昆布おにぎり(スイーツ好き女子作)
とろけるチーズ+昆布を具に。和洋ミックスで意外な美味しさ。
顔つきデコおにぎり(杏子推し)
三角おにぎりの表面に、海苔やチーズを切って顔をつける。インスタ映え!




