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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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32.文化祭最終日・完売達成

――文化祭、三日目。

朝の空気は、昨日までとはどこか違っていた。少しひんやりしているのに、胸の奥は熱い。


模擬店の前でエプロン姿の四人が円を作る。

「よし、今日でやり切るぞ!」と、杏子が真っ先に拳を突き上げる。

翔子も負けじと「完売して気持ちよく終わる!」と宣言。


実花は手元のメモを見ながら、冷静に口を開いた。

「材料は全部使い切る計算でいくからね。追加はもうないから、無駄はゼロで」

その目は真剣そのもの。まるで戦場の指揮官だ。


そこへ顧問がやってきて、軽く腕を組む。

「最後まで事故なくな。いいか、三日間やってきた経験をちゃんと活かせよ」

言葉は短くても、その目にはちゃんと信頼が宿っている。


「おーっ!」

全員で声を揃え、朝日を背に気合いを入れる。

今日一日、このチームで走り抜ける――そんな確信があった。


――文化祭、三日目。

朝の空気は、昨日までとはどこか違っていた。少しひんやりしているのに、胸の奥は熱い。


模擬店の前でエプロン姿の四人が円を作る。

「よし、今日でやり切るぞ!」と、杏子が真っ先に拳を突き上げる。

翔子も負けじと「完売して気持ちよく終わる!」と宣言。


実花は手元のメモを見ながら、冷静に口を開いた。

「材料は全部使い切る計算でいくからね。追加はもうないから、無駄はゼロで」

その目は真剣そのもの。まるで戦場の指揮官だ。


そこへ顧問がやってきて、軽く腕を組む。

「最後まで事故なくな。いいか、三日間やってきた経験をちゃんと活かせよ」

言葉は短くても、その目にはちゃんと信頼が宿っている。


「おーっ!」

全員で声を揃え、朝日を背に気合いを入れる。

今日一日、このチームで走り抜ける――そんな確信があった。



午前十時。開店と同時に、模擬店前はすでに人の気配でにぎわっていた。


「甘党のみんなー! 今日がラストチャンスだよー!」

杏子の声が校庭に響く。昨日までで鍛えられた呼び込みは、もはや職人芸。看板を軽く掲げる動きも自然で、通りがかった人を次々と足止めする。


その隣、翔子は鉄板の前で鮮やかな手さばき。

「はい次、生地流すよ、カットお願い!」

熱気をものともせず、一定のリズムで焼き上げる姿はまるで厨房のプロだ。


焼き上がったクレープを、佐伯先輩がすばやく盛り付ける。

「チョコ多めのお客さん、こっちに回すぞ」

淡々としているが、仕上がった一皿にはきちんと華がある。


そして全体を俯瞰する実花は、材料残量をこまめにチェックしながら声を飛ばす。

「翔子、あと生クリーム二本で新しいの開けるからね」

その管理の精密さは、軍の補給係さながらだ。


お客さんの中には、昨日も見た顔がちらほら。

「昨日のクレープ、美味しかったからまた来ちゃった」

そんな声が次々と届くたび、四人の動きは自然と軽くなる。


文化祭最終日の午前は、まるで流れる音楽のようにスムーズに進んでいった。




昼が近づく頃、厨房の片隅で実花が眉をひそめた。

「……あれ? 生クリームの減り、ちょっと早くない?」


冷蔵庫を開け、奥から慎重に最後の予備ボトルを取り出す。

「これがラスト一本。午後までもたせないと……」


その一部始終を見ていた杏子の目が、きらりと輝いた。

「お客さーん! 生クリーム、これが最後のストックでーす! 食べ逃したら後悔するよー!」


途端に、並んでいた人の動きがざわめきに変わり、列が一気に伸びる。

「えっ、じゃあ今のうちに!」

「急げ急げ!」


鉄板の前で翔子が慌てて手を動かしながら、じろりと杏子をにらむ。

「お前……完全に売り切れ商法じゃねーか!」


「結果的に売れるんだから、いいでしょ?」と杏子はにこにこ顔。

その後ろで実花は、複雑な表情でラスト一本のクリームを冷蔵庫に戻した。

「……午後の分、ほんとにもたせるからね?」



午後の陽射しが傾き始めたころ、調理台の横で佐伯先輩が手元のメモを確認した。

「……あと10食くらいだな。これで全部だ」


その声を聞くなり、杏子が反射的に顔を上げる。

「みなさーん! ラスト10個です! 最後のチャンスですよー!」


その一言に反応して、近くを歩いていた生徒や保護者がぞろぞろと列へ吸い込まれていく。

「え、もう終わっちゃうの?」「急げー!」と声が飛び交い、店先は再び熱気に包まれた。


翔子は額の汗をぬぐいながら、鉄板に生地を流し込む手を止めない。

「……くそ、疲れてるのにテンション上がってきた!」


実花も素早くトッピングを準備し、佐伯先輩は盛り付けをテンポよく仕上げていく。

全員の動きが加速し、店全体がひとつの生き物みたいに動いていた。


「よーし、最後まで突っ走るぞ!」

杏子の声が、祭りの終盤を告げるファンファーレのように響き渡った。



鉄板の上で、最後の一枚となる生地がじゅわっと音を立てて広がった。

翔子はいつも以上に丁寧な手つきで焼き色を見極め、ひっくり返す。

「これで、本当に最後だな……」


隣で待ち構えていた杏子が、焼き上がったクレープを受け取ると、チョコソースとフルーツを素早く盛り付ける。

「よーし、フィナーレ仕様!」


実花が笑顔で受け取り、カウンター越しにお客さんへ手渡した。

「お待たせしました!」


受け取った客が「ありがとう!」と満面の笑みを見せ、その瞬間、全員が声をそろえた。

「ありがとうございましたー!」


「――完売だ!」

佐伯先輩の短い宣言に、空気が一気に弾けた。


「やったー!」と杏子が叫び、勢いのまま翔子に飛びつく。

「ちょっ、あっついから! 鉄板の熱残ってるって!」

必死に抵抗する翔子の横で、笑い声が弾け、最終日の幕がゆっくりと閉じていった。



第32話 文化祭最終日・完売記念レシピ掛け合い(文化祭仕様)


翔子「よし、今日は完売まで突っ走る!」

杏子「声出しは任せろ!最終日ボーナスボイスでいく!」

実花「材料、全部使い切る計算で組んであるからね」

佐伯先輩「事故なくな。最後まで集中だ」


【今日のメニュー】


完売祈願クレープ

 - 生地:昨日の黄金比をさらに改良(実花監修)

 - クリーム:数量限定・最終日スペシャルホイップ

 - トッピング:お客様の笑顔保証付き(※杏子の自己申告)


杏子「ラスト○個!急げ急げー!」

翔子「売り切れ商法やめろ!」

実花「でも効果はある…」

佐伯先輩「さすが呼び込みの鬼」


【仕上げの一皿】


最後の1枚は翔子が焼き、杏子が盛り付け、実花が渡す。


客の「ありがとう!」で完売達成。


全員「ありがとうございましたー!」でフィニッシュ。


杏子「来年もやろうぜ!」

翔子「……今は休ませて」

実花「片付け終わったら、打ち上げ行こう」

佐伯先輩「飲み物は全員冷たいのな」



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