第24話 夏休み特別活動① 合宿でカレー作り
合宿初日の昼下がり。
郊外のキャンプ場に着いた瞬間、蝉の声と川のせせらぎが一斉に耳に飛び込んできた。
炊事場の屋根越しに見える空は、これでもかというくらいの青さだ。
「よーし、これより一泊二日の調理部夏合宿を開始する!」
佐伯先輩が腕を組んで宣言すると、杏子が手を挙げて不満顔を見せた。
「えー、キャンプっていったらさ、やっぱ肉焼いてバーベキューじゃないの!?」
彼女の視線はすでに空想のステーキに向かっているらしい。
「残念、今日のメインはカレーだよ」
実花がクーラーボックスを開け、中からごろごろと野菜を取り出す。
「しかもルールは、持ってきた食材を全部使い切ること。余らせたら負け」
「……肉成分、足りない予感しかしない」
杏子は肩を落とすが、その隣で翔子は早くも調理器具を確認中だ。
こうして、野外調理体験とチームワーク強化を兼ねた、調理部の夏合宿が幕を開けた。
炊事場のテーブルに、カラフルな食材とスパイス瓶がずらりと並ぶ。
顧問の先生が手を叩いて、にやりと笑った。
「せっかくだから、今日はチーム戦にしよう。テーマは――“カレー味比べ大会”だ!」
「おもしろそう!」と杏子が即反応。
その一方で、翔子は「勝負となると負けられないな」と目を細める。
チーム分けはあっさり決定した。
チームA(翔子&佐伯先輩):香りと刺激で攻める“スパイシー派”
チームB(実花&杏子):野菜をふんだんに使う“ヘルシー派”
「お肉少なめでも、野菜で満足させてみせるよ!」
実花が頼もしく宣言すると、杏子はすぐさま反論。
「いやいや、野菜だけじゃ物足りないから、隠し味にソーセージを――」
「それ、もうスパイシー派寄りじゃない?」と翔子にツッコまれ、
杏子は「細かいことはいいんだって!」と笑い飛ばす。
こうして、同じ鍋の中でも決して交わらない(予定の)2種類のカレー作りが始まった。
炊事場のテーブルに、カラフルな食材とスパイス瓶がずらりと並ぶ。
顧問の先生が手を叩いて、にやりと笑った。
「せっかくだから、今日はチーム戦にしよう。テーマは――“カレー味比べ大会”だ!」
「おもしろそう!」と杏子が即反応。
その一方で、翔子は「勝負となると負けられないな」と目を細める。
チーム分けはあっさり決定した。
チームA(翔子&佐伯先輩):香りと刺激で攻める“スパイシー派”
チームB(実花&杏子):野菜をふんだんに使う“ヘルシー派”
「お肉少なめでも、野菜で満足させてみせるよ!」
実花が頼もしく宣言すると、杏子はすぐさま反論。
「いやいや、野菜だけじゃ物足りないから、隠し味にソーセージを――」
「それ、もうスパイシー派寄りじゃない?」と翔子にツッコまれ、
杏子は「細かいことはいいんだって!」と笑い飛ばす。
こうして、同じ鍋の中でも決して交わらない(予定の)2種類のカレー作りが始まった。
炊事場の片隅、チームB・野菜派の作業台。
実花はまな板の上で、じゃがいも・にんじん・玉ねぎを同じ大きさに揃えてカットしていく。包丁の音が規則的に響き、見ているだけで安心感のある手つきだ。
その隣で杏子は、玉ねぎのみじん切りに挑戦中――しかし。
「っ…うぅ、目ぇ痛い…!」
包丁を動かすたびに、目尻から涙がぼろぼろこぼれ落ちる。
実花がちらっと横目で見て、くすっと笑った。
「ほら、涙は隠し味ってやつ」
杏子は慌てて首を横に振る。
「そういう料理漫画理論やめて! これ、ただの苦行だから!」
鼻をすすりながら、半分泣き笑いで抗議する。
「はいはい、じゃあ切るの交代する?」
「……いい。もうここまできたら意地で切る!」
そう言いつつ、さらに玉ねぎと格闘する杏子の目は、涙でキラッキラだった。
炊事場のもう一方――チームA・スパイシー派の作業台。
翔子は小瓶からターメリック、クミン、コリアンダーを計り入れ、手元で軽く混ぜると、熱した鍋にサラサラと投入。
じゅわっと広がる香りに、周囲が思わず振り返る。
「……おお、これだけで一気に本格派だな」
佐伯先輩が鍋をのぞき込み、感心した声を漏らす。
「市販のルーでも、こうやってちょっと足すだけで深みが出るんですよ」
翔子は涼しい顔で木べらを動かしながら説明する。
「じゃあ、隠し味にコーヒー少し入れるか」
スパイスの香りを嗅ぎながら、翔子がさらっと提案。
その瞬間――背後から顧問の声が飛んだ。
「おい、飲みかけは入れるなよ」
カップを手に持った顧問が、じと目で牽制する。
翔子は「あ、バレた」みたいな顔をしてカップを引っ込める。
佐伯先輩は苦笑しながら「それなら新しく淹れたやつにしとけ」とフォローした。
煮込みが進む午後の炊事場。
野菜派の鍋から、ふと焦げた匂いが立ちのぼった。
「……あれ?」
実花が慌てて木べらを動かすが、鍋底に茶色い膜がこびりついているのが見える。
「火、強すぎた!」
杏子がすぐに火を弱める。
「まあ、表面だけだし……混ぜなきゃバレない?」
「そういう問題じゃない!」と実花が半分笑いながら突っ込んだ。
一方、スパイシー派。
翔子が鍋に乾燥唐辛子をパラリと落とす……予定だったのだが、袋の口が大きく開き、どさっと投入。
次の瞬間、鍋から立ち上る刺激的すぎる香りに、二人同時に「げほっ!」とむせる。
佐伯先輩は急いで蓋をして、換気扇代わりにうちわをあおぐ。
「そっちも事故か」
「そっちこそ」
目を赤くしながら、二組は視線を交わし、思わず吹き出した。
そして、お互いの鍋をちょっとずつ味見しては、水を足したり、具を増やしたり――なんとか立て直しを図るのだった。
夕暮れ前、炊事場に二つの鍋の香りが立ちこめる。
野菜派の鍋は、じゃがいももにんじんも形を保ったまま、ごろごろと存在感を放つ。
味は素朴で優しく、ほっとする家庭のカレーそのもの。
一方、スパイシー派は、香りだけで汗がじわっと滲む大人の風味。
スパイスの層が舌の上で次々と変化していく。
「……これは決められないな」佐伯先輩が腕を組む。
「じゃあ、混ぜよっか!」杏子が無邪気にスプーンを手に取る。
半信半疑で両方をよそい、ひと口。
野菜の甘みがスパイスの刺激をやわらげ、逆に香りが野菜の旨味を引き立てる。
「おお……ありだ」
「新メニュー誕生だね」実花が微笑む。
その夜、キャンプ場のテーブルには、両派のいいとこ取りをした“ハーフ&ハーフカレー”がずらりと並び、全員が笑顔でおかわりを繰り返すのだった。
合宿カレーのレシピ掛け合い
実花「野菜は大きめに切った方が食べ応えがあるよ」
杏子「でも大きすぎると火が通らないじゃん!」
実花「そのために下ゆでするの。手間は裏切らない」
翔子「スパイスは油で軽く炒めると香りが立つ」
佐伯先輩「市販ルーに加えるだけで、だいぶ味が変わるぞ」
杏子「じゃあ私も隠し味でチョコ入れたい!」
翔子「甘くなりすぎるから、量は耳かき半分」
杏子「ちょっと! その単位おかしくない!?」
実花「カレーは煮込んだら休ませる時間も大事」
佐伯先輩「でも今回はキャンプだから、作ったらすぐ食べるしかないな」
杏子「じゃあハーフ&ハーフで2倍楽しむ!」
翔子「それ、最近の杏子の口癖だよな…」




