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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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23/86

第23話 暑さとの戦い・調理室クーラー故障事件

放課後。

真夏の太陽がじりじりと校舎を焼き、廊下に漂う空気すら重く感じる。

調理室のドアを開けた瞬間、むわっとした熱気が全員を包み込んだ。


「……あっつ!!」

一番に声を上げたのは杏子だ。目を丸くして両手で扇ぎながら、

「え、ここサウナ? 岩盤浴コース?」

と、冗談半分に汗をぬぐう。


実花は慌てて壁の温度計を確認した。

「……三十二度、超えてるんだけど」

数字を見た瞬間、額にじわっと汗がにじむ気がする。


佐伯先輩がクーラーのリモコンを何度か押してみるが、室外機はうんともすんとも言わない。

「……クーラー、完全に沈黙だな」

低い声が、余計に暑さを際立たせた。


翔子は額の髪を耳にかけながら、冷静に言い放つ。

「この室温で生クリーム泡立てるのは……自殺行為だな」


空気まで溶けそうな、真夏の調理室。

今日の部活は、予定通りにはいかない予感しかしなかった。


調理室の片隅で、全員がうちわや手で仰ぎながら臨時の作戦会議が始まった。

佐伯先輩がスマホを耳に当て、クーラー業者と短くやり取りする。

数十秒後、ため息とともに一言。

「……すぐには来られないそうだ。最短でも三日後」


室温はじわじわと上がっている気がする。

翔子が腕を組み、扇風機のコードを引きずってきた。

「とりあえず、扇風機二台フル稼働。それから窓全開」

実花も頷き、冷凍庫から保冷剤をいくつも取り出す。

「これで少しはマシになるはず……」


そんな中、杏子がひらめいた顔で手を挙げた。

「はい! 氷枕を首に巻いて作業ってどう?」

「それ、動きにくいし結露でビショビショになるから却下」

即答で翔子に切り捨てられ、杏子は肩を落とす。


実花は手元のレシピノートを見ながら言った。

「この暑さだと材料も傷みやすいし……今日は火を使わない、冷たいレシピに変更しよう」

「賛成だな。練習メニューも冷製に切り替えるか」

佐伯先輩が頷き、作戦は決まった。


暑さとの戦いは、どうやらメニュー選びから始まるらしい。


調理台の上に氷袋がドサッと積まれた瞬間、部室の空気が少しだけ涼しく感じられた。

「じゃ、緊急企画。冷たいデザート大会、始めます!」

実花の宣言に、全員が一斉に動き出す。


翔子は氷をミキサーに投入しながら、濃いめのエスプレッソを抽出。

「アイスカフェラテ、冷たさと苦味の両立が命だ」

カラン、と氷の音が響くたび、ほんのりコーヒーの香りが漂う。


実花はフルーツ缶と炭酸水を用意し、彩り豊かなフルーツポンチを組み立てる。

「これなら火も包丁もほとんど使わないし、涼しげでしょ」

グラスの中で、赤や黄の果実がキラキラ揺れた。


杏子はというと、かき氷機のハンドルを全力で回し、勢いよく氷を削っていた。

「ふふふ、シロップは……全色いっちゃえ!」

結果、山盛りの氷が虹色に変わり、もはや芸術か事故か分からない状態に。


一方、佐伯先輩は落ち着いた手つきで冷やしぜんざいを準備。

「甘い小豆に氷を浮かべると、意外と夏でもいけるんだ」

器の中で小豆が涼やかに揺れ、他の派手なメニューとは対照的な存在感を放つ。


額に汗をにじませながらも、出来上がった冷たいデザートを前に、自然と笑顔が戻ってくる。

「これぞ、暑さとの共存!」

杏子のドヤ顔に、全員が小さく吹き出した。



ガリガリと氷を削っていた杏子が、勢い余ってボウルを傾けた。

「わっ!」

透明な氷の粒が床に散乱し、部室の床が一瞬でスケートリンク状態に。

そのまま足を取られそうになった杏子の腕を、翔子が咄嗟に掴んだ。

「危ないって! 氷は食べるものであって、滑るための道具じゃない」

「……はい」


一方その頃、実花は涼しげなゼリーを作ろうと、ゼリー液を容器に流し込み──そのまま別作業に夢中になってしまった。

気づけば、ゼリー液は室温32℃の中で、固まるどころかだらだらと広がっている。

「……あれ?」

器をのぞき込んだ実花が首をかしげると、背後から佐伯先輩の苦笑まじりの声が。

「この室温じゃ固まる前に心が折れるな」

扇風機の風が、ゼリー表面をなでるように通り過ぎていった。


調理室の真ん中、扇風機の真正面に陣取って、全員がぐったりと腰を下ろしていた。

机の上には、即興で作った冷たいデザートの数々──アイスカフェラテ、フルーツポンチ、かき氷、冷やしぜんざい。見た目は夏らしくて爽やかだが、作った本人たちは完全に夏バテ顔だ。


翔子がストローをくわえ、アイスカフェラテをひと口。

「……冷たいものばかりだと、逆に体の芯が冷えるな」

彼女のぼやきに、杏子が「じゃあ温かいお茶でも……」と提案しかけて、全員から即座に「暑苦しい!」と突っ込まれる。


佐伯先輩は笑いながら腕時計をちらりと見て、

「今日は無理せず、ここまでにしておこう」

と締めの一言。

その声に、誰も反対できる元気はなく、ただ扇風機の風に身をゆだねるしかなかった。


調理室の真ん中、扇風機の真正面に陣取って、全員がぐったりと腰を下ろしていた。

机の上には、即興で作った冷たいデザートの数々──アイスカフェラテ、フルーツポンチ、かき氷、冷やしぜんざい。見た目は夏らしくて爽やかだが、作った本人たちは完全に夏バテ顔だ。


翔子がストローをくわえ、アイスカフェラテをひと口。

「……冷たいものばかりだと、逆に体の芯が冷えるな」

彼女のぼやきに、杏子が「じゃあ温かいお茶でも……」と提案しかけて、全員から即座に「暑苦しい!」と突っ込まれる。


佐伯先輩は笑いながら腕時計をちらりと見て、

「今日は無理せず、ここまでにしておこう」

と締めの一言。

その声に、誰も反対できる元気はなく、ただ扇風機の風に身をゆだねるしかなかった。

翌日。

調理室の扉を開けた瞬間、ひやりとした冷気が頬をなでた。

全員そろって「うわぁ……」と、半ば感嘆のため息を漏らす。


杏子は両手を広げ、まるで冷房の風を抱きしめるように立ち尽くす。

「文明って……偉大!」

その表情は、まさに氷の女神(※ただし浴衣姿ではない)。


実花は温度計を見ながら、

「昨日のサウナ状態が嘘みたいだね」

と肩をほっと緩める。


翔子は腕を組み、妙に真剣な顔でうなずいた。

「でも……あれはあれで鍛えられた気がする」

体力か、根性か、それとも精神か──多分全部だ。


佐伯先輩は苦笑しつつ、

「……じゃあ、夏の特訓ってことにしておこうか」

とまとめ、今日も平和(?)な調理部の一日が始まった。

23話レシピ掛け合い


実花「じゃあ、冷たいレシピで行くから、各自好きなの作ってみて」


翔子「私はアイスカフェラテ。コーヒー濃いめで氷多め」


杏子「じゃあ私はかき氷! シロップは…全色かけちゃえ!」


実花「レインボーは映えるけど、味は保証しないよ」


佐伯先輩「俺は冷やしぜんざい。餡はちゃんと冷やしてから盛るぞ」


翔子「それ、和菓子屋レベルの手間じゃない?」


杏子「じゃあ私、ぜんざいに氷乗せて"冷やし冷やしぜんざい"にしようかな」


実花「言ってる意味がもう冷えてる」


佐伯先輩「……お前の発想は、真夏のホラーだな」





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