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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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第21話  夏料理会:冷製パスタ

――夏休みの昼下がり、調理室の窓から差し込む日差しが、まるでフライパンの上の油みたいにじりじりと熱を帯びていた。

実花が机に両手をつき、目を輝かせる。


「ねえ、せっかくだから夏限定メニュー会やらない?」


佐伯先輩は手元の麦茶を一口飲んでから、穏やかな笑みを浮かべた。

「いいな。どうせなら、この時期らしく冷たい料理にしよう」


その提案に翔子が、涼しい顔で頷く。

「冷製パスタなら材料も手に入りやすいし、手間もそこそこ。決まりだな」


「やったー!」杏子が椅子からぴょんと跳ね上がる。

「パスタ=炭水化物=お腹いっぱい=幸せ! もう優勝確定!」


「まだ作ってすらないけどね」と実花が苦笑する中、調理室には早くもわくわくした空気が満ちていった。



――材料リストを広げた佐伯先輩が、指先で紙をとんとん叩く。


「せっかく作るなら、2種類の冷製パスタを作って味を比べてみよう」


「いいね!」と杏子が即反応。

佐伯先輩はさらさらとメニューを書き込んでいく。


① トマトベース(爽やか系)

② 和風ベース(さっぱり系)


「じゃあチーム分けは――」と実花が顔を上げる。

「私と杏子でトマトバジル冷製パスタをやるね」


「じゃあ残りは必然的に私と先輩か」翔子が短く言い、腕を組む。

佐伯先輩が軽く笑って、「和風しらす大葉パスタ、任せた」と応じる。


杏子は早くも、机の上に並んだトマトを抱えて満面の笑み。

「真っ赤な夏! 映えも味も私たちの勝ちだね!」


「まだ勝負って決まってないけどな」と翔子が低く返す。

こうして、夏の冷製パスタ対決――いや、試食会(仮)が幕を開けた。


――調理室の一角、トマトチームの作業台に赤と緑のコントラストが広がる。


実花はミニトマトを湯むきして、手際よく氷水に落とし、皮をつるりと剥いていく。

「甘味と酸味のバランスはマリネ時間で決まるから……はい、これマリネ液」

さらりとボウルにトマトを入れ、オリーブオイルと塩、ほんの少しのビネガーを加えて混ぜた。


その横で、杏子は両手いっぱいのバジルを抱え、葉をちぎってはボウルに落としていく。

「私は彩り担当!」と胸を張るが――

実花が横目で見て、眉をひそめた。

「……この大きさの差、何? こっちは親指サイズ、こっちは紙切れ」


「え、バジルって自由な心でちぎるもんじゃないの?」

「料理は芸術じゃなくて精密作業のときもあるの!」


と、軽い言い合いをしながらも、実花は鍋でニンニクをじっくりオリーブオイルに泳がせ、香りを出す。

熱を取ってから、冷蔵庫に移し――

赤・緑・金色の香り立つ素材たちが、夏の冷製パスタに向けて準備を整えていった。

――和風チームの作業台は、涼やかな香りに包まれていた。


翔子は茹で上がったパスタをザルにあげ、すぐさま氷水に投入。

「冷やすときはためらわないこと」

手早く麺をほぐしながら、キュッと締まった感触を確かめるその動きは、無駄がない。


一方の佐伯先輩は、まな板の上で大葉をきれいに重ね、細く細く千切りにしていく。

包丁の刃が走るたび、爽やかな香りがふわりと広がった。


「しらすは水気を切って……あとはめんつゆ、ごま油を少し」

ボウルに具材をまとめ、軽く和えると、白と緑の色合いに金色の光沢が差す。


翔子が一口味見し、目を細めた。

「……シンプルなのに、香りが強いな」


佐伯先輩はにやりと笑う。

「素材がちゃんとしてれば、引き算でも勝てる」


二人の手元からは、和風の涼味が静かに仕上がっていった。


テーブルの中央に、二色の冷製パスタが並ぶ。

片方は鮮やかな赤と緑のトマトバジル、もう片方は涼やかな白と緑のしらす大葉。


まずはトマトバジルから。

フォークでくるりと巻き、口に運んだ杏子が、ぱっと笑顔になる。

「ん〜っ! 夏らしい酸味とバジルの香り、映え力MAX!」

まるでカメラマンのように、スマホを構えて各角度から撮り始める。


次はしらす大葉。

実花が一口食べると、目がまんまるになる。

「これ……さっぱりしてるのに、しらすの塩気で箸が止まらない。無限に食べられる!」

箸を置く気配がない。


佐伯先輩は両方を交互に味わい、ゆっくりとうなずいた。

「……どっちも、甲乙つけがたいな」


その言葉に、全員が満足げな笑みを浮かべた。

夏の昼下がり、涼やかなごちそうが、部室の空気を少しだけ軽くした。


杏子が、残っていたパスタを両方すくい上げ、ひとつの皿に半分ずつ盛りつけた。

赤と白、そしてバジルの緑が、まるで夏祭りの提灯みたいに鮮やかに並ぶ。


「じゃーん! 本日のスペシャル、冷製パスタのハーフ&ハーフ!」

満面の笑みで掲げる杏子。


翔子はため息をつきながらも、口元が少し緩む。

「……またそれか」


実花はひと口食べて、眉をひそめたままぼそり。

「……味が喧嘩してないのが、逆に悔しい」


杏子は勝ち誇ったようにフォークをくるくる回し、

「ほらね、映えと味、両取り〜♪」とご機嫌だった。




21話 冷製パスタレシピ掛け合い


杏子「夏休みって、炭水化物が美味しく感じる季節だよね〜!」

翔子「いや、それ一年中だろ」


実花「トマトバジルの彩りは、やっぱり見た目が映えるね」

杏子「でしょ? “映え力MAX”ってノートに書いとこ」


佐伯先輩「しらす大葉は香りと塩気がいい。箸が止まらない」

実花「うん、無限ループ入った」


杏子「じゃ、両方盛って“ハーフ&ハーフ”!」

翔子「またそれか」

実花「……味が喧嘩してないのが、ちょっと悔しい」





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