第18話 「翔子の焼きスピード対決」
放課後の調理室は、今日も甘い香りと軽い緊張感に包まれていた。
宮原先生が腕を組み、部員たちを見回す。
「文化祭はスピード勝負だぞ。お客さんを待たせないためにも、クレープ焼きの手際を鍛えなさい」
その言葉に、翔子がすっと前へ出て腕まくりをする。
「スピードだけなら自信ある」
低く落ち着いた声に、妙な頼もしさが漂う。
「お、じゃあ焼きスピード対決やろうよ!」
杏子が目を輝かせ、まるで今から運動会が始まるみたいなテンションで提案する。
「対決って……」
実花が苦笑いを浮かべるより早く、宮原先生が「いいだろう」とにやりと笑った。
そして、この日、クレープ焼きの真剣勝負が幕を開けた。
調理台の上に、生地を入れたボウルとクレープ用の焼き器が二台並べられる。
宮原先生が白板に「制限時間:5分」と書き出した。
「ルールは簡単。5分で何枚焼けるか、そして品質も評価する」
先生の声が調理室に響く。
「生地はプレーンで統一。焼き器は二台、同時進行だ」
佐伯先輩がうなずきながら、計量カップで生地を均等に分ける。
「審査員は私と実花だな」
佐伯先輩が言うと、実花は「任せて」と小さくガッツポーズ。
その横で杏子が勢いよく手を挙げた。
「じゃあ私は実況&盛り上げ担当! 試合を熱くするよ!」
「試合じゃないんだけどな…」
翔子が小声でつぶやくが、もう誰にも止められそうになかった。
タイマーがピッと鳴り、第一ラウンド開始。
翔子は生地をおたまでひとすくい、焼き器の中央に流し込むと、スプレッダーを滑らせる。
動きに迷いがない。くるりと円を描き、薄さも均一。
弱火でじっくり、しかし手は止まらない。
片面が焼けた瞬間、パレットナイフでひょいと返し、数秒後には皿へ。
「おっとぉ〜! まるで工場ラインのような正確さ!」
横で杏子が大げさな身振りで実況する。
翔子は無言のまま二枚目、三枚目へと移行。
そのペースは1枚およそ40秒。焼き色は黄金色で均一、端も焦げなし。
「うわ…キレイ。食べるのがもったいないくらい」
審査員席の実花が思わず漏らすと、翔子はほんのり口角を上げた。
タイマーがピッと鳴り、第一ラウンド開始。
翔子は生地をおたまでひとすくい、焼き器の中央に流し込むと、スプレッダーを滑らせる。
動きに迷いがない。くるりと円を描き、薄さも均一。
弱火でじっくり、しかし手は止まらない。
片面が焼けた瞬間、パレットナイフでひょいと返し、数秒後には皿へ。
「おっとぉ〜! まるで工場ラインのような正確さ!」
横で杏子が大げさな身振りで実況する。
翔子は無言のまま二枚目、三枚目へと移行。
そのペースは1枚およそ40秒。焼き色は黄金色で均一、端も焦げなし。
「うわ…キレイ。食べるのがもったいないくらい」
審査員席の実花が思わず漏らすと、翔子はほんのり口角を上げた。
第三ラウンド、佐伯先輩の出番。
「じゃあ、先輩のお手並み拝見といきますか〜」と杏子がマイク(お玉)を構える。
佐伯先輩は落ち着いた手つきで生地を流し込み、スムーズに広げていく。スピードは翔子ほどではないが、焦げもムラもない安定感。
――が、そのとき。
「先輩、好きなクレープの具はなんですかー?」
杏子の突然の質問に、手がピタリと止まった。
「あ、え? んー……」
「実況妨害作戦、成功!」杏子がにやり。
「おい」翔子が即ツッコミ。
その後も杏子の絶妙なタイミングでの質問攻撃に、先輩は何度も手を止める羽目になった。
結果、焼き枚数は最下位――だが、味と見た目は一級品だった。
調理室のテーブルに、3人が焼いたクレープの山が並ぶ。
実花が手元のメモを見ながら発表する。
「それじゃあ結果発表――枚数は、杏子8枚、翔子7枚、佐伯先輩5枚」
杏子は胸を張る。「ほら! 私が一番多い!」
「……品質点は?」翔子が冷静に促す。
「品質点は……翔子が満点、杏子は減点大、先輩は平均点」
実花が読み上げると、杏子が「えぇ〜!」と机に突っ伏した。
「総合優勝は翔子。やっぱり丁寧さ大事」実花が結論を出す。
「映えとスピードがあれば勝てたのに!」杏子は悔しそうに唇を尖らせる。
翔子は肩をすくめ、「文化祭は工場じゃないんだから」と笑った。
翔子が腕を組み、ニヤリと口角を上げた。
「じゃあ杏子は文化祭で――“呼び込み係”に決定」
「えー! 私も焼きたい!」杏子が即座に抗議の声を上げる。
しかし、横で佐伯先輩が真顔で一言。
「お客さんの安全のためだ」
杏子は口をパクパクさせたあと、しぶしぶ頷く。
「……わかったよ。でも絶対可愛い呼び込みするから!」
調理室に笑い声が響き、焼きスピード対決は賑やかに幕を閉じた。
18話「焼きスピード対決」掛け合いレシピ
翔子:「弱火で流し込んで、素早く広げる。これなら均一に焼ける」
杏子:「実況入りまーす! まるで工場ラインのような正確さ!」
実花:「確かにきれいな色だね。食感も良さそう」
杏子:「次は私! 火力MAXでいくよ!」
翔子:「焦げるぞ」
実花:「……うん、勢いはあったけど端が真っ黒」
杏子:「スピード感は勝ってたもん!」
佐伯先輩:「よし、俺も挑戦……あ、翔子、これって裏返すタイミングいつ?」
杏子:「実況妨害作戦、成功!」
翔子:「おい」
実花:「結果発表! 枚数は杏子8枚、翔子7枚、先輩5枚」
翔子:「品質は私が満点」
杏子:「映えとスピードがあれば勝てたのに!」
翔子:「じゃあ杏子は文化祭で“呼び込み係”に決定」
杏子:「えー! 私も焼きたい!」
佐伯先輩:「お客さんの安全のためだ」
杏子:「むぅ……」
18話 レシピ掛け合い(焼きスピード対決編)
【翔子:弱火&正確派】
生地量:お玉8分目(約70ml)
焼き時間:片面30秒+返して10秒
ポイント:流し込み後、すぐに円形に均一に広げる
メモ:焦げなし、厚み均一、柔らか仕上げ
【杏子:高火力&勢い派】
生地量:お玉1杯(約80ml)
焼き時間:片面20秒+返して10秒(火力MAX)
ポイント:スピード重視だが、端が焦げやすく厚みにムラあり
メモ:香ばしいがややパサつき。見た目減点大
【佐伯先輩:中火&平均派】
生地量:お玉8分目(約70ml)
焼き時間:片面25秒+返して15秒
ポイント:丁寧だが、話しかけられると手が止まる
メモ:焼き色きれい、柔らかめ
【総評】
枚数:杏子8枚/翔子7枚/佐伯先輩5枚
品質:翔子>先輩>杏子
文化祭役割案:翔子=焼き担当、杏子=呼び込み担当、佐伯先輩=フォロー




