第17話 クレープ試作②トッピングの研究
――放課後の調理室。
窓から差し込む夕陽に照らされ、作業台の上が色とりどりに染まっていた。
「ジャーン! 今日の主役たち!」
杏子がエコバッグを広げると、いちご、キウイ、ブルーベリーに加え、レインボーのカラースプレーや生クリーム缶が勢いよく並んでいく。
「今回は映え最優先! 甘くてカラフル、SNS即アップ仕様だよ!」
「私は秋っぽさも大事にしたいな」
実花がそっと差し出したのは、栗の甘露煮、さつまいもペースト、そして自家製のカスタードクリーム。
「季節感を出せば、見た目だけじゃなくて味でも記憶に残ると思う」
「で、俺はこれ」
翔子が持ち込んだのは、スモークサーモン、クリームチーズ、アボカド。
「甘いのは杏子に任せる。こっちは食事系だ。腹持ちもいいし、彩りも悪くない」
「……なんか、食卓のジャンル戦争みたいになってない?」
実花が苦笑しながらテーブルを眺めると、甘さ全開の色鮮やかな山と、落ち着いたトーンの大人っぽい食材が、まるで二つの陣営に分かれて睨み合っていた。
「まあいいじゃん。今日はとにかく試して、映えと味の両立を目指そ!」
杏子が腕まくりをして笑うと、試作会の幕が勢いよく開いた。
調理室の空気が、ふわっと甘く――そして少しピリッと引き締まった。
「文化祭はスイーツ映え一択! 写真見ただけで“食べたい!”って思わせるやつじゃないと!」
杏子がホイップ缶を片手に力説する。
「いや、甘いだけじゃ飽きる。食事系もないと胃が休まらん」
翔子は冷静にアボカドをまな板に置きながら、いつものクールな口調で返す。
「どっちもテーマ『彩』には合うし……」
実花はおろおろしつつも、両者の間に視線を泳がせる。
「両方試せばいいんじゃない? 実際、食べる人の好みも分かれるし」
「ふむ、確かに」
そこへ佐伯先輩が腕を組んで口を挟む。
「客層もいろいろだからな。甘いのとしょっぱいの、両方用意するのはアリだ」
杏子と翔子が一瞬だけ視線を交わし、ふっと笑う。
「……じゃあ、勝負だね」
「どっちが人気出るかは文化祭本番で決まるな」
甘党VSしょっぱ党――火花の色までカラフルな試作会が、静かに加速していった。
調理台の上に、色とりどりの具材が整列する。
いよいよ「甘い系」トッピングの実験開始だ。
「まずは王道!」
杏子はプレーンのクレープ生地を手に取り、ホイップを惜しみなく絞り出す。
そこにいちご、キウイ、ブルーベリーをバランスよく並べると――視界が一気にパステルとビビッドで満たされる。
「次は秋の味覚で」
実花は抹茶生地の上にカスタードをたっぷりと広げ、その上に黄金色の栗とほくほくのさつまいもペーストを配置。
ほんのり緑の生地に黄色と茶色が映えて、和菓子屋のショーケースみたいな落ち着いた彩りになる。
「映え重視でいくよ!」
杏子は再びいちご生地を手にし、チョコソースをたらりと回しかけ、仕上げにカラースプレーをぱらぱらと散らす。
その瞬間、ピンクと茶色と虹色の粒が組み合わさり、子どもの夢みたいなビジュアルに。
三つ並べて、全員で試食。
「……甘酸っぱいフルーツとホイップ、安定の王道だな」翔子がメモを取りながら感想を漏らす。
「抹茶と栗は落ち着いた甘さで大人向けだね」実花も頷く。
「いちご生地+チョコ+カラースプレーは……見た目勝負!」杏子は胸を張るが、翔子は小さく笑って「味はちょっと遊園地だな」と記した。
甘さと彩り、メモ帳のページが鮮やかに埋まっていく。
「じゃ、次は食事系いくぞ」
翔子がエプロンの紐をきゅっと締め直し、ココア色のクレープ生地を広げる。
まずはスモークサーモンをスライスして並べ、その上にクリームチーズをやさしく塗り広げる。
仕上げにディルをひとつまみ散らすと、調理室が一気にカフェの香りに包まれた。
「……これ、もう見た目が高級感」実花が思わず声を漏らす。
次は抹茶生地。鮮やかな緑の上にアボカドを扇形に並べ、薄く切った鶏ハムを重ね、レモンマヨをさっとかける。
「彩り的には完璧だな」佐伯先輩がカメラでパシャリ。
試食タイム。
「うまい。これは……昼食にしてもいいレベル」杏子がサーモンの方を頬張りながら言う。
「アボカドも抹茶生地と合うなんてね」実花は目を丸くする。
翔子は得意げに腕を組むが――
「……でもさ」杏子が口を拭いながら首をかしげる。
「文化祭で中高生がこれ買う?」
「……」一瞬の沈黙。
実花が笑いをこらえつつ、「確かに、見た目カフェランチだね」
佐伯先輩も苦笑して、「値段設定が難しいな…」とメモに追記した。
味は合格。でも売れるかは、別問題らしい。
テーブルの上には、甘い香りと香ばしい香りが入り混じるクレープの山。
試作の結果を前に、全員で評価タイムが始まった。
「甘い系は……やっぱこのフルーツホイップ、鉄板だな」佐伯先輩が写真を見返しながら言う。
「抹茶カスタードと栗のやつも季節感あっていいよね」実花が同意。
杏子は両手を腰に当てて、「でしょー? やっぱスイーツ系が勝つって!」とドヤ顔。
「いや、アボカド鶏ハムも悪くない。むしろ先生方や保護者が喜びそうだ」翔子は淡々と反論。
「うーん……甘いのも、しょっぱいのも捨てがたいなあ」実花が顎に手を当てて考え込む。
しばしの沈黙のあと、実花がパッと顔を上げた。
「じゃあさ、文化祭では両方やって、選べるスタイルにしよう!」
「おお、それなら勝負だな」翔子がにやり。
「望むところ!」杏子も笑顔で応戦。
こうして甘い系と食事系、両方を売る“二刀流クレープ計画”が動き出した。
【17話・クレープ試作②トッピングの研究 レシピ掛け合い】
杏子:「じゃあまず甘い系ね! ホイップにいちご、キウイ、ブルーベリーをドン!」
実花:「色鮮やかでかわいいね。写真撮りたくなる」
翔子:「甘すぎず酸味が効いてるのがポイントだな」
実花:「抹茶生地にはカスタードと栗、さつまいもペーストを合わせて…秋の彩り」
杏子:「ほろ苦×甘さで、大人っぽい味だね」
翔子:「和風スイーツ好きには刺さるな」
杏子:「いちご生地にチョコソースとカラースプレー! 映え100%!」
実花:「……食べる前から砂糖摂りすぎな気がする」
翔子:「まあ、文化祭はテンションで食べるもんだ」
翔子:「次は食事系いくぞ。ココア生地にスモークサーモン、クリームチーズ、ディル」
杏子:「おしゃれだけど、文化祭の雰囲気でこれ頼む人いる?」
実花:「大人のお客さん向けだね」
翔子:「抹茶生地にアボカド、鶏ハム、レモンマヨ。彩りも味もバランス良し」
杏子:「……でもこれ、SNS受けはどうだろ?」
実花:「健康志向の人には受けそう」
杏子:「やっぱ甘い系がメインでしょ!」
翔子:「食事系は先生方や保護者が喜ぶだろ」
実花:「じゃあ両方用意して、選べるスタイルに決定!」
【クレープ試作編(16話・17話)レシピ一覧】
◆ 生地バリエーション(16話)
プレーン生地
材料:薄力粉、卵、牛乳、砂糖、バター
特徴:クセがなく、甘い系・食事系どちらにも合う万能タイプ。
焼き方:中火で薄く均一に焼くと王道の仕上がり。
抹茶生地
材料:プレーン生地+抹茶パウダー
特徴:ほろ苦さと香りで和風具材と相性抜群。弱火焼きで発色がきれい。
ココア生地
材料:プレーン生地+ココアパウダー
特徴:香りが強く、食事系では相性に注意が必要。
いちご生地
材料:プレーン生地+いちごパウダー
特徴:ピンク色で映え度高し。弱火で焼くと色鮮やか。
◆ 甘い系トッピング(17話)
フルーツホイップクレープ(杏子案)
プレーン生地+ホイップ+いちご+キウイ+ブルーベリー
見た目の華やかさと甘酸っぱさがポイント。SNS映え◎
抹茶カスタード栗クレープ(実花案)
抹茶生地+カスタード+栗+さつまいもペースト
秋らしい味わい。和スイーツ好きにおすすめ。
チョコスプレークレープ(杏子案)
いちご生地+チョコソース+カラースプレー
映え100%。子どもウケ良好。
◆ 食事系トッピング(17話)
サーモンクリチクレープ(翔子案)
ココア生地+スモークサーモン+クリームチーズ+ディル
オシャレなカフェ風。大人向け。
アボカド鶏ハムクレープ(翔子案)
抹茶生地+アボカド+鶏ハム+レモンマヨ
彩り鮮やか&ヘルシー。健康志向層に◎
◆ 試作の結論
甘い系 → フルーツホイップ、抹茶カスタード栗の2種が有力候補。
食事系 → アボカド鶏ハムを一応候補に残す。
文化祭方針 → 甘い系・食事系どちらも提供し、来客が選べる形に決定。




