第14話 文化祭テーマ発表
体育館の床板がきしむ音と、ざわざわとした話し声が天井に反響していた。
放課後とはいえ、全校生徒が集まるとこの空間はやっぱり蒸し暑い。
壇上の中央、生徒会長がマイクを握り、背筋をすっと伸ばす。
「――それでは、今年の文化祭テーマを発表します」
会場が一瞬だけ静まり返る。
「今年のテーマは――『彩』です!」
その瞬間、体育館の空気がまたざわめきで満たされた。
「彩ってことはカラフルにしろってこと?」
「映え狙いか〜」
「衣装作りが大変そうだな…」
色とりどりのイメージが、生徒たちの頭の中で一斉に広がっていくのが、目に見えるようだった。
体育館の後方、料理部メンバーはひとかたまりになって腰を下ろしていた。
「彩…ってことは、インスタ映えまっしぐらじゃん!」
杏子が目を輝かせ、すでに脳内でカラフルなスイーツタワーを組み立てている様子だ。
「いや、味が第一だ」
翔子が即座に切り返す。その口調は真剣なのに、手元では配られたプリントをペンでカリカリ叩いている。
「でも盛り付けや食材の色は工夫できそうだね」
実花はにこやかにうなずく。頭の中では、赤、黄、緑といった旬の野菜が鮮やかに並ぶ料理の映像が浮かんでいた。
そこへ、後ろから宮原先生がひょいと顔を出す。
「派手にするだけじゃなく、全体のバランスを考えること」
低めの声に三人とも姿勢を正す。
杏子だけは小声で、「バランスも映えさせます…」と呟いたが、翔子に肘で小突かれた。
部室のテーブルには、色とりどりの付箋とメモ帳が散らばっていた。
杏子は早々に手を挙げ、「はいっ! 虹色ゼリー!」と元気よく提案。手元のスケッチには七色に分かれた層がきらめいている。
「インパクト大でしょ?」
「うん、映えはすごそう。でも冷やす時間が地味に大変そうだね」
実花が苦笑しつつ、自分の案を差し出す。
「私は彩り野菜のキッシュ。赤ピーマン、ブロッコリー、かぼちゃ…季節の野菜で色を出せるよ」
「じゃあ私は…7色ソースのオムライス」
翔子が真顔で出した案に、部屋の空気が一瞬止まる。
「……味が混ざってカオスになる未来が見える」
佐伯先輩の一刀両断に、杏子が「逆に話題になるかも!」とフォローするが、やはり付箋はそっと裏返された。
佐伯先輩は全員を見渡しながら、柔らかく言葉をまとめる。
「見た目だけじゃなく、食べたときに季節感やテーマがちゃんと伝わる料理にしよう」
その一言で、メモ帳にペンを走らせる手が、また一斉に動き出した。
「じゃあさ、テーブルクロスも虹色にしようよ!」
杏子が両手を広げて、まるで体育祭の万国旗でも飾る勢いで宣言した。
「おい…食欲減る色も混ざってくるぞ」
翔子が半眼で指摘する。
「……じゃあ、せめてパステル系にしよう?」
実花が苦笑まじりに提案すると、杏子は「あー、それならアリ!」と即OK。
佐伯先輩は肩をすくめながらも笑って、
「じゃあ、その路線で次回の試作会ね」
夕方の部室に、和やかな笑い声が広がる。
こうして、料理部の文化祭メニュー計画は、ゆるくも色鮮やかなスタートを切った。
【14話レシピ掛け合い】
杏子:「彩ってテーマ、やっぱり映え優先でしょ? 虹色ゼリーとか!」
翔子:「色数は多いほど良いってわけじゃない。味が第一だ」
実花:「でも盛り付けや野菜の色使いで、きれいにできそうだよね」
杏子:「じゃ、ついでにテーブルクロスも虹色で!」
翔子:「食欲減る色も混ざるぞ」
実花:「……パステル系ならいいかも」
佐伯先輩:「はいはい、じゃあ次回は色使い研究会だな」




