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放課後キッチン、3年間のレシピ  作者: 南蛇井


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第11話 和食班体験「筍ご飯」

放課後の家庭科室には、柔らかな西日と、春の終わり特有の暖かな空気が満ちていた。

 ドアを開けて入ってきたのは、料理部・和食班のリーダー、香織先輩。両腕で抱えるように持っているのは、新聞紙に包まれた大きな何かだ。


「お待たせ。今日はこれで一緒に作ろうと思って」

 包みをほどくと、中から現れたのは、どっしりとした筍。皮は淡い緑と茶色が重なり、まるで森の一部をそのまま持ってきたみたいだ。


「えっ、これが筍?」

 実花が目を丸くする。「もっと、ほら、細いタケノコ型の……ペンみたいな感じかと」


「それ、ただのペンじゃん」と翔子が苦笑い。


 杏子が興味津々で身を乗り出す。「これ、そのままかじったらどうなるの?」


 香織先輩は即答した。「渋くて泣くよ」

 にこやかに言われたその一言に、杏子は「えー」と唇を尖らせる。


 西日の中、新聞紙の上で鎮座する筍は、これから始まる春の味覚体験を静かに予告していた。


大鍋の中で、筍が皮ごとぐつぐつと茹だっていく。湯気と一緒に、ほのかな土の香りと甘い香りが漂い始めた。

 香織先輩がぬかをひと握り、そして赤い唐辛子を数本入れる。


「ぬかと唐辛子はアク抜き用。こうすると、えぐみが取れて、柔らかくなるんだよ」


「へぇ〜」と実花は素直に感嘆の声をあげる。


 茹で上がった筍を冷ました後、翔子が皮むき担当に。

 外側から順に剥いでいくと――「……厚っ!」

 剥いても剥いても、まだ皮。想像していた“食べられる部分”にたどり着くまでの長さに、翔子は苦笑いを浮かべた。


 一方の杏子は、剥き終えた皮を手に取り、じっと見つめる。「これ、アートにできそう。オブジェとか、ランプシェードとか…」


「……食べ物の話から離れないでくれる?」と翔子が即ツッコミ。


 実花はというと、剥きたての筍を鼻に近づけて深く息を吸い込み、「あ〜、春の匂いだ〜」と目を細めた。

 香織先輩はそんな三人の様子を見て、微笑みながら次の工程へと促した。


 まな板の上に並んだ下ゆで筍は、ほんのり黄金色。翔子が包丁を手に、リズムよく薄切りにしていく。


「次は油揚げと一緒に軽く煮て、下味をつけるよ」

 香織先輩の声に合わせて、実花が鍋のそばでメモを取る。

「なるほど…先に煮ておくと、ご飯に味が移りやすいんですね」

 真剣な筆記に、横から翔子が計量スプーンを手渡した。


「はい、しょうゆは大さじ2」

「塩は小さじ1/2ね」


 一方で杏子は、味見係の名目で鍋をのぞき込み――「ちょっとだけ…」と箸を伸ばす。

「ちょっとだけ、が三回目!」

 香織先輩にぴしゃりと注意され、杏子は「えへへ…」と笑って箸を引っ込めた。


 煮た具材を炊飯器に移し、研いだお米と一緒にセット。

 スイッチを押すと、すぐにふわっと立ち上る香ばしい香りに、部屋中の空気が変わった。


「……この待ってる時間、たまらないね」

 湯気に包まれた空間で、和食班も料理班も一緒になって、炊き上がりをじっと見守った。

 炊飯器の蓋を開けた瞬間、湯気とともに春の香りがふわりと広がった。

「うわぁ…!」と、思わず全員が声を上げる。


 香織先輩が木杓子でふんわりと混ぜ、お椀によそう。その上に小さな木の芽を添えると、見た目も香りも一気に完成形だ。


 実花が一口食べ、目を細めた。

「シャキシャキなのに…すごく柔らかい…」


 翔子も噛みしめるように味わい、静かにうなずく。

「噛むほどに甘みが広がるな」


 杏子は早くも二口目を運びながら、にやりと笑う。

「これ、ご飯だけでおかわりいける!」


 香織先輩はそんな様子を嬉しそうに見守りながら、優しく言った。

「旬の食材はね、できるだけシンプルに食べるのが一番おいしいんだよ」


 その言葉と味わいが、湯気の中でゆっくりと胸に染みていった。


片付けの最中、杏子がこそこそと筍の皮を数枚抱えていた。


 実花が首をかしげる。

「それ、何するの?」


 杏子は得意げに胸を張る。

「ランプシェードにしたらオシャレじゃない?」


 翔子が深いため息をつきながら、じっと見つめる。

「……食材は食べるためにあるんだぞ」


 その場にいた和食班全員が一斉に吹き出し、笑い声が家庭科室いっぱいに広がった。


【11話 レシピ掛け合い】


シーン1:和食班の招待

杏子「これが筍? 思ってたよりデカい!」

実花「ずっしりしてる…旬って感じ」

香織先輩「でもそのまま食べると渋くて泣くよ」

杏子「……やめときます」


シーン2:下ごしらえ体験

香織先輩「ぬかと唐辛子を入れて茹でると、アクが抜けます」

翔子「皮、分厚いな…むくの大変」

杏子「これアートに使えそう」

実花「香りが春だ〜」


シーン3:炊き込み&味付け

実花「下味をつけるとご飯に染み込みやすいんですね」

翔子「油揚げは○g、筍は○gっと…」

杏子「味見係の特権でパクッ…あ、まだ?」

和食班全員「まだ!」


シーン4:試食タイム

実花「シャキシャキなのに柔らかい」

翔子「噛むほど甘みが出るな」

杏子「これご飯だけでおかわりいける!」

香織先輩「旬はシンプルが一番ね」


シーン5:エピローグ・オチ

杏子「皮、持ち帰ってランプにしよ」

実花「発想が料理部じゃない」

翔子「食材は食べるためにあるんだぞ」

(全員爆笑)





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