中距離魔素焼却ミサイル
翌日未明
「さて皆さん、画面は見えていますか?」
クロウが臨時指揮室でカリウスやアグネス達全員を集めて、指揮室の中の大きなスクリーンに未だ薄暗いアリッサ、グリッタ両国の様子を映し出している。
「見えますわ」
「問題ないです、老師」
「えと、何を?」
「そりゃあもちろん、新兵器のお披露目だよ」
前線にはクロウ1人だけおり、スクリーンの画面が動いたと思うと、そこにはクロウの姿が写し出された。
「中距離魔素焼却ミサイル、通称MMM、もしくはM-3とでも呼んでくれ。音速で飛行するこの戦略兵器で、アリッサ・グリッタを地図から抹消する」
「???」
小宵はクロウの側近として彼が秘密の実験室で研究してきたこのミサイルやその他のより強力なミサイルを知っているので、特に驚きはしなかったが、カリウスやアグネスはクロウの言っていたミサイルと言う兵器がなんなのかさっぱり分からなかった。
「まあお前らにはまだ見せてなかったもんな、そうだな....流れ星を落とすとでも思ってくれ」
そう言いながらクロウはゆっくりと空を指さした。
「朝日の刻、炎陽を持って彼らを灰燼と化す」
そう言った後、クロウは耳に着けているインカムに指を当て、ゴエティアシステムを通じてクロウ領周辺のミサイルサイロからの発射準備を開始した。
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夜明けの時間、窓の外から優しい日光が差し込み始めた時間、アリッサ、グリッタ両国の兵士はゆっくりと目を覚ました。
「おーす」
「おす、今日は俺らが前線行くんだっけ」
「そうだな、飯食ったら集合だってよ」
「マジかよ、東の大魔王とか」
「まあそう言うなって、今日は宮廷魔法使い筆頭様も一緒に来るって言ってるんだ、大丈夫だろ」
「ああ、あの【破壊之旅団】所属の異世界人か」
「そうそう、訓練場で見ただろ?あのいかれた[魔力砲]とか言う魔法。城門がぶっ壊れるかと思ったぜ」
「それもそうだな、それこそ大魔王であるあの伯爵様がじきじきに出てこない限り、大丈夫だろう」
「はははは、違いねぇ」
兵営では同じようにのそのそと王国兵達が起き上がり、食事処へ向かいながら、朝の談笑に勤しんでいた。
それと同時刻、クロウ領の後方、ミサイルサイロから4発の中距離魔素焼却ミサイルが点火した。煙を巻き上げながら、4発のミサイルが空高く飛び上がり、ゴエティアシステムに特定されたアリッサ、グリッタの王国中心地目掛けて高高度高速飛行を開始した。
ものの数十分、実に兵士達の朝食も終わらない頃、二か国の上空にそれぞれ2つのミサイルが到着した。
「お、おい、見てみろよあれ」
「ん?なん」
言葉を言い切る前に、流れ星は国の中央、1番高い丘の上の王宮に直撃した。無詠唱魔法、自動防御魔法ですら反応が間に合わないほどの一瞬、数フレームもないそんな短い時間にミサイルは弾頭に込められた魔素焼却反応を引き起こし、あらゆる建物を周囲の地形ごと吹き飛ばし、巨大なキノコ雲を巻き上げた。
アリッサ、グリッタの両国の国境にいた兵士達は、いつもより眩しい太陽の光で瞳を焼かれた。隣国やその更に遠くの国民達は、その両国の方向を見て、一生忘られない形式を脳裏に焼き付けた。曰く、「太陽が落ちてきた」と。
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「思ったより綺麗に消し飛んだな」
「なっ?」
三人はスクリーンに映し出された光景を理解する前に、クロウはぶつりとスクリーンを消した。
「これがさっき言ったように、あれが中距離魔素焼却ミサイル、中途半端な自動魔法防御より早く着弾し、仮に発動しても易々と貫通する程の暴力的な威力。それが俺達の切り札の1つである」
「1つ?」
「これ以外にも切り札はいくつもあるが、今回見せたのは既に廃棄しようと思っていたプロトタイプだ」
「プロトタイプ?」
「試作品?」
「そういうことだ。さて、綺麗さっぱり消えた事だし、後始末の時間かな?今回は忙しくなりそうだ」
「老師、それは?」
「自己防衛とは言え、三ヶ国を地図から消し飛ばしたんだ、今頃うちの公爵様が頭を抱える頃だろ」
「それもそうですね、老師、後始末は」
「任せて良いか?」
「はい、お任せください」
綺麗な更地に何を建てるか考えつつ、クロウはひと足先に自分の執務室へ戻った。




