やっぱり領民不足
「旦那様、セリュウス様より報酬です」
「お?マジか、なにがあるんだろ」
アリッサとグリッタ両国から貰った賠償金は全てクロエを通して新王に渡した。内戦からまだ各地が復興したとは思えないし、新王即位したばかりできっと大量の金がいるだろうし、ここで恩を売っておけば何かしらの良い見返りが貰えるのではないかと思っていたが...
「おや、奴隷の取り扱いに対する許可のようですね。それといくつかの特権が...破格の待遇ですよ」
「ホント?ちょっと見てみる」
小宵が渡してきた手紙を見てみる。簡単に内容を要約すると、
・奴隷売買の国王許諾書
・完全免税
・私兵団の設立許可
・私立教育機関の設立
の4つに纏められる。
「あっ、奴隷って許可ないと駄目だったんだ....後学校とかも...」
あんまり大っぴらにしてないけど、実質奴隷みたいな存在も黙認していたし、私兵団は..人形と人造英雄で人間じゃないから多めに見てくれてたのかな?教育機関も...職業訓練学校みたいな施設しか作ってなかったら....意外と知らないこの国の法律とかに少しぶるったクロウだった。自分の執務室で思わず眉を顰めて目頭を押さえるクロウ。
「まあいいっか!実質これで許可が出たし、派手にやろう!」
早速引き出しから企画書のテンプレを数枚取り出し、奴隷商会設立についての内容や、魔法学校、軍事学校の創立についての案を早速書き始めた。
「それと、領民の転出について....」
「えっまた!?」
「はい....また数百人程....」
「うぐぐぐぐ」
なぜか分からないが、ここまで先進的で現代的で利便的な領地になっているの、領民は増えるどころか減っていく一方...プレイヤーも一人もいないし、友人も遠く離れた場所にいて全くマクベル王国に来れないし....
「なんで???」
「芸術や文化が不足しているのでは?それと教会もありませんので....」
「教会...は残念ながら宣教師もプリーストもいないので、それは難しいとして、芸術と文化か....」
絵画や詩、曲の事なのかな?残念ながらそっち方面はさっぱりなので、こればっかりは仕方ない気もする...
「よし分かった、交流をもっと盛んにしよう。ライネルのフロント企業で上流階級の人を招き入れたり、貿易隊をもっと多く編成しよう」
「良いですね」
「よし小宵、貿易隊の編成は任せた。食料品や布地多めに、宝石も売ろう」
「了解しました」
「いや、効率悪いな、全ライネルフロント企業に移動用のワームホール装置を常設して、そこを経由して貿易用の人形を作ろう。よし決めた」
「小宵、芸術系は俺じゃ分からないから、クロエの所言ってオーケストラ団か有名な画家か何か呼んできてくれ。金なら出す」
「承知しました」
シュッと姿を消した小宵を他所に、クロウは企画書の書き進めた。
「あっ、もう一つ方法が有ったわ、小宵!」
「はい」
「ライネル企業の名前を全て【クロウ】に変えておいてくれ、ついでにここの位置情報についても公開して構わない」
「承知しました」
一か月後、多くのイリアス戦記に古くから創立されていた様々な大企業が全国中からクロウ領の極限に快適で効率化されたオフィスビルを見て目から鱗をぼろぼろ落とし、莫大な資金をつぎ込んであっという間にオフィス街が出来上がった。
「住めよッ!!!」
そんなクロウの叫びも空しく、各国の大企業の幹部達が毎朝クロウ企業に設置された移動用ワームホールからクロウ領内のオフィスビルに顔を出して、仕事をして、再び帰るという、なんかリアルクロウの生活を彷彿とさせる嫌な光景が出来上がってしまった。
「嫌すぎる....」
毎月の莫大なビル賃料と各クロウ企業が新しく売り出したクロウ領産の食料、布生地、貴金属、貴重品、嗜好品などなど、金だけは異様に集まるのに、全く人が寄り付かない.....
「???」
いよいよ自分の方針が悪いのか、それとも方法が悪いのか分からなくなったので、もう領民の事は諦める事にした。
「ほっとけばいずれ増えるでしょ」
開き直って奴隷商会や軍事学校の一件を進める事にした。
「旦那様、奴隷商人さんがお越しになりました」
「んんん??」
確かに以前奴隷商会を開こうとフロント企業を通して何人かと接触を試みたりしたが、みんな「そもそも買い手がいない」「人形がいるならそれで充分では?」「必要なくない?」としか言わないので、諦めていたが、どうやら奴隷商人の中にもとんだ物好きがいたようだ。
「分かった、通してくれ」
「どうぞ」
「し、失礼します」
悪徳商人のような人物を想像していたが、やってきたのは以外にもしわがれた中年の男性だった。
「.....初めまして、クロウだ」
「あっ、えっと、お初にお目にかかります伯爵様、本日は....」
「あーそう言うのは気にしてないから、言わなくていい」
「あっえっ、良いんですか?」
「ああ、早速で悪いが、君の商人登録書と奴隷取引人の証明書を見せてくれないか」
「は、はい、こちらに」
小宵は男から書類を受け取り、軽く自分のスキルで虚偽の書類ではない事を確認した後、クロウに丁寧に手渡した。
「名前は...【ギース】か」
「はい、初めまして、ギースと申します。数日前にクロエ公爵様元へ訪れた際、クロウ様が奴隷をお探しとの事でしたので、本日はお邪魔させてもらっています」
「そんなに硬くならなくていい、それで君が取り扱っている奴隷と言うのは?」
「主に借金奴隷と身売り奴隷です」
「ふむ、攫い者ではないよな?」
クロウがそう言うと、横で控えている小宵が[罪と罰]のスキルを発動させ、いつでもギースの嘘を見抜く準備をした。
「はい、主に様々な理由で借金の返済に失敗し、自らの意思で奴隷になった者と、戦争や病気で両親が死んで生きるすべがなくなった者が主に私の取り扱っている奴隷です。決して誘拐など不法な手段ではありません」
「嘘偽りありません」
「そうか、なら早速連れてきてくれるか?」
「承知いたしました。しょ、少々お待ちください」
ギースがそそくさと執務室から一旦外にでると、4人の女性と3人の男性をつれて再びやってきた。
「ほ、本日お連れしたのはこちらの7名です」
「よし買った、いくらだ」
「え!?まだ何も説明していおりませんが」
「いやなに、少なくとも君は彼ら彼女達を人として接しているのは見てわかる。現に彼らの健康に問題はないように見えるし、服もきちんと来ている。だからそんな君にはこれからもそのままでいてほしいし、君にはこれからも奴隷を売りに来てほしい。故に、君が今日連れてきた彼ら彼女達は全員買う」
「あ、ありがとうございます!じゃあ、早速奴隷契約を」
「分かった、何をすればいい」
「えと、伯爵様のお手を貸していただければ」
「分かった」
クロウは立ち上がってギースの元へ近づき、左手を差し出した。
「全員の首の少し下に刻まれた紋章に触れてください」
「分かった」
どうやら奴隷になった時にそのタトゥーのような紋章を刻まれていたようで、ギースがまず先にその紋章に魔力を込めて待機状態にした後、クロウが触れる事で少しクロウの魔素を吸収して奴隷契約が完了するようだ。
【[闇魔法・奴隷契約]を習得しました】
「はい、全員分これで大丈夫です。ありがとうございました。えと、今回は金貨3枚に」
「10枚だ。釣りはいらない。また良い人物がいたら連れてきてくれ」
「わわわ、多すぎますよ」
「構わない、ここまで来るのにかなり金も時間もかかっただろう。残念ながら人が少ない私の領地だが、世界各地で有名なクロウ企業の本店がここには多くある。ゆっくり堪能していってくれ」
「あ、ありがとうございます!」
「帰り無くなったらいつでも町中にいる奉仕人形達に声をかけると言い、彼女達は喜んで君の手伝いをするだろう」
「わ、分かりました、早速失礼します」
大金を稼いだ喜びで、少しウキウキした足取りでギースは丁寧にクロウの執務室を後にした。そうして部屋には[龍眼]を発動して早速購入した奴隷達の素質を見抜いているクロウと、座るにも主人の許可が必要なため、その場でただ立ってひたすら目の前のイケメンにじろじろ見られて少し気まずくなっている7人の奴隷と、いつも通りに冷めた紅茶を淹れなおす小宵がいた。




