南部辺境戦争Ⅴ-反攻開始
「殲滅完了...反攻を開始します」
第二第三世代の部隊も初陣だというのに、想像以上に戦果を立ててくれた。
「カリウス、戦況は?」
「ドールが数十体、修理場送りになったくらいですね、他は全員軽傷。やはり魔法が使える歩兵と言うのは強すぎます」
「そりゃそうだ」
少し足早に移動するカリウス軍、できれば相手の次の部隊の準備が整う前に南部辺境領にたどり着きたい。
「第一世代の皆さんは南部辺境領に入り次第右方のあらゆる町、都市を速やかに占領、最低限の占領部隊を残し、そのまま次の拠点へ向かってください。第二世代の皆さんは老師と共に中央直進、第三世代の皆さんは左方です。よろしくお願いします」
クロウが口を挟む前にカリウスが全て言ってくれた。本来なら全員で飛行してきてもいいのだが、まだ全員に新型魔素融合炉を内蔵していないので、節約できるなら節約しておきたい。
「IFV(歩兵戦闘車)かAPC(兵員輸送車)が欲しくなってきた。後で作ろ」
一足先に空を飛びながら、クロウはそんな事を思った。
「【タウント】!」
クロウが空の上を飛んでいると、なんか小さい声で誰かが自分に向かって[挑発]スキルを使ったような気がする。全く効いてないけど。一旦飛行を停止し、左右の部隊が問題なく電撃的に南部辺境領内の各所を占領し始めたので、クロウもそれを確認した後、高度を下げて自分にタウントをかけたプレイヤー達を見てみる事にした。
「ふむふむ、だいぶ強くなった方か?見た事あるやつもいるなぁ?おい?」
以前に戦ったパーティと似ている。今回はかなり人数が増えており、小レイドレベルの人数だ。
「えーと?メインタンクが2人、サブタンク2人、メインアタッカーが10人、ヒーラーが6人、合計20人か」
「来たぞ!魔法使いタイプのレイドボスだ!全員魔法防御を向上させるアイテムを使え!魔法使いの職業のやつらは[マジックシェル]を全体にかけてくれ!行くぞ!まずはAチームだ」
「少し遊ぶか」
そういえばずっと以前の狼のような服装を着ていたので、ここは思い切って魔法使いのような服装に着替える事に。闇魔法で一瞬全身を隠し、その間にメニューを開いて事前登録していた装備一式に着替える。
深紫色の最高級ライネルクロスと魔鉱石を粉にして編み込んだ光り輝く黄金の刺繍糸をふんだんにしようした最高級の魔法使いのローブ。その下には動きやすい黒いズボンとシャツを着ており、こちらもローブ同様、黄金色の刺繍が刻まれていた。もちろんその刺繍糸もただの装飾ではなく、刺繍1つ1つが魔法陣になっており、常時着用者のMPを吸収して勝手に発動するタイプの無数の[補助魔法]が発動している。
[補助魔法A]:あらゆる魔法の威力や発動などを補助する魔法が自由自在に使用できる
闇魔法を解除して、魔法使いの装備で再びプレイヤー達の前に現れる。今度はローブのせいで顔の上半分が隠れてしまっているが、まあこれもさまざまな弱体化魔法や[ブラインド][サイレント]を無効化するための措置なので仕方ない。
「攻撃開始!」
後ろの方のアタッカー部隊にいるリーダーらしき人物が合図を出すと、敵プレイヤーの攻撃が開始する。
「[マジックシェ...][サイレント]」
敵プレイヤーの中団に位置する魔法使い達全員に【沈黙】の魔法を使用する。運よく魔法防御を向上させるスキルを使用した魔法使い達は喋れなくなっていたので、上手くサイレント状態になったようだ。
「[タウント]![ディフェンスアップ]![フォートレス]![防御姿勢][パリィ待機]」
タンク職のスキルだろうか、クロウは見た事のないスキルを目の前の大盾と両刃剣を持つ男が次々と使っていく様をぼけーっと見ていた。
「うぉおお![シールドバッシュ]!」
(え?助かるぅ)
なぜそのノックバック効果が生じる威力が防御力依存の攻撃スキルを使用したか分からないが、クロウからしたら好都合な事この上なかった。
「バカッ!おま」
後ろの方のリーダー格のプレイヤーが何か言う前にクロウの目の前にいるタンクプレイヤーがその手に持った盾を振りかぶってクロウを吹き飛ばす。クロウは上手く後ろに飛び、ノーダメージだがノックバック効果に流されるように大きく後方へ後退した。
「サンキュ」
「バカ!魔法使いボス相手に距離を取ってどうする!早く距離を詰めろ!」
「[ファイアランス]![アイスランス]![ブリザードブラスト]![サンダーボルト]![ダークボルト]!」
後方から無数の攻撃魔法が飛んでくる。残念ながら頑張っても中級魔法しか飛んでこないので、いたずらにクロウの体内にある魔素融合炉に全て吸収されるだけだった。
「魔法吸収!」
大きな声で全員に聞こえるように叫んでみる。もちろんそんなスキルは使っていないが、狙い通りリーダー格のプレイヤーがすぐに「魔法攻撃中止!戦士職は攻撃を開始しろ!」と狙い通りの指示を出してくれた。
「ふふ」
「何がおかしい!」
クロウに走って近づいてくるタンク役のプレイヤーが、クロウの笑い顔を見て思わず問い詰めた。
「いや、何、いつ俺が魔法使いだと言った?」
「な?」
近付いてくるプレイヤーに警戒もせず、クロウはゆっくりと何もない空間からゆっくりと赤く血の滴る大曲刀を取り出した。
「止まれ!それ以上近づくなぁ!!!」
【[処刑]スキルが発動可能です】
問答無用で[処刑]スキルで発動する。大曲刀を両手で握りしめ、迫りくるタンクプレイヤーの盾を正面から向かい受ける。ステータスの差を利用して、肩でタンクプレイヤーの大盾へぶつかり、すこし斜めに力を込めて相手の盾を吹き飛ばす。相手もぶつかった瞬間、クロウの狙いに気づいたようだが、時すでに遅し、自分の手にもった大剣でつばぜり合いに持ち込もうと、その手にした剣で自分の急所を防いだが、クロウの持つその大曲刀に剣ごと身体をすっぱり両断された。
「クソっ!一撃だと!サブタンク!詰めろ!」
「うぉおお![タウ]」
「遅い」
横から突撃してきた小ぶりなカイトシールドを持つサブタンクプレイヤーの後方に[土魔法・アースランス]で地面から巨大で鋭い土の槍を生やす。同時に[物質変換]で鉄の槍に変換し、そのまま近づいてきたサブタンクプレイヤーのカイトシールドもろともその方向へフロント・ハイキックを入れる。
「ぐおっ!」
「後ろに気を」
必死にリーダー格のプレイヤーが吹き飛ばされたサブタンクのプレイヤーに声をかけるも、そんな努力空しくあっという間に後ろの地面から生えた鉄の槍に背中から身体を貫かれて絶命した。
「くそっ!強すぎる!タンク役はこれ以上近づくな!」
「勘が良いな」
クロウはリーダー役のプレイヤーの頭上に右手をかざし、巨大な火の玉を出現させる。[火魔法・フレイムプラネット]と言う巨大な広範囲魔法だが、内部の一部を粘着性のある油脂に変更する事で、簡易的な焼夷弾を作り上げた。
「ドン」
右手を握りしめた後、花が咲くようにぱっと拳を広げると、それに同期するようにクロウが生み出した簡易焼夷弾が爆発した。
「うわぁあああ!」
「熱いぃいい!」
「水魔法で!消えない!?」
「助け!ああああああ!」
思ったより阿鼻叫喚の絵図になってしまった。燃える油は敵プレイヤーにこびりついており、必死にその火を消そうと水魔法で水を浴びせているが、残念ながら延焼を広げるだけだった。
「じゃあ今のうちに」
最悪の状況を自ら生み出したクロウ。敵プレイヤーが燃え盛る火と肉の焦げる悪臭で【戦恐】状態に陥っている最中、大曲刀を担ぎなおして、生き残ったプレイヤーに襲い掛かる事にした。
「まずはお前」
恐らくなんらかの方法でクロウも簡易焼夷弾を防いだヒーラーに一瞬で接近し、[処刑]スキルを発動する。身体は自然と武器を構え直し、ヒーラーのプレイヤーに反応される前に兜割りの勢いで大曲刀を振り下ろした。当然、手にした杖で最後の抵抗をしようとしていたが、タンクプレイヤーの重鎧すら両断できる大曲刀相手に受け止められるわけもなく、あっけなくそのヒーラーは両断された。
「先にお前をやっておこう」
数人の護衛らしき戦士職に守られたリーダー格の方を向く。護衛のプレイヤー達もこちらを睨みつけて、いつでもかかってこいと言う様子だったので[土魔法・蟻地獄]という地面を流砂に変える魔法を使用した。
「うおっ!」
少し多めにMPを使用したので、いつもよりかなり早い速度で護衛もろともリーダーらしき人物達を飲み込んでいく。
「くそ!暴れるな!ゆっくりと、まずは身体を」
「話が長い」
蟻地獄から逃げ出そうとするリーダー格の人物の頭上に[氷魔法・アイシクルランス]を出現さえ、高速回転させながら発射する。護衛の人物はなんとか最後の力を振り絞ってリーダー格のプレイヤーをかばおうとしたが、問答無用で2人纏めて貫いた。
「後は、適当でいいっか」
残ったプレイヤーの抵抗空しく、魔法使いプレイヤーには近接攻撃で、戦士プレイヤー達には魔法攻撃で、パパっと一撃で全員教会送りにした。




