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すっとぼけ覇王のVRMMO蹂躙記  作者: 愛良夜
領主編

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南部辺境伯の誤算

【南部辺境伯が宣戦布告をしました。開戦事由:不当な封爵】


「ほう?こいつマジで言ってる?」


3日程経って、クロウの元には南部辺境伯の使者がやってきた。会いたくもなかったので小宵と殺戮人形達で相手をさせたが、どうやら南部辺境伯の開戦理由は、クロウの爵位が不当らしい。いやそこにいちゃもんつけるって事は、新王と新公爵様に喧嘩売ってるって言うのと同義では?


「マジも本気なようです。こちら使者の文です」


羊皮紙に誇張がましくクロウの爵位についてあれこれ責め立てており、どうやらクロウが爵位を返上して速やかにクロウ領から出ていけばすぐに兵を退くと言っている。


「いやぁ、舐めてるね」

「許せませんねこれは」

「ちなみにこいつが宣戦してきた裏とか取れそう?」

「どうやら後方に位置するトロット王国との癒着が原因のようです。先の内戦であまり大きな見返りを得られなかったせいか、内密にトロット王国と取引をしていたようです。今回の宣戦布告も、既に多大なトロット王国からの支援を受けた上での選択のようで」

「え?ちょっと待って、いつから癒着していたのこいつら」

「内戦中期の頃のようですね、明らかに南部辺境領の年収以上の支援をしていましたし、そこの頃からだと」

「はーん、真っ黒じゃねぇかおい!なんて野郎だ」

「徹底的に叩き潰しましょう」

「よぉし、今回は徹底にやろう、指揮官クラスの人造英雄達を呼んできてくれ」

「了解いたしました」


クロウは執務室で早速ゴエティアシステムに接続し、現在の南部辺境軍の居場所を確認する。どうやらまだ南部の各地から兵士をかき集めている最中だった。


「遅くない?」


その気になれば今すぐ航空隊を派遣してフェンデル領のように爆撃できるけど、今回は実戦経験データと経験を積ませるためにも、彼らの動向を把握しつつ、まずはこちらの執務室で今回の作戦を立てる事にした。


「侵攻ルートは恐らく相変わらず旧フェンデル領からライネル公爵領へ侵入、そのまま以前の森を突っ切ってクロウ領へやってくるかな、だったら、キルゾーンを作るか」

「失礼します」

「ほーい入って」


自分の執務室でフェンデル領に何の部隊をどう配置しようか考えていると、ドアがコンコンと叩かれた。小宵ならばいつもそのまま入ってくるので、多分呼びに行かせてた人が帰ってきたのだろう。


「お久しぶりです、老師(ろうし)

「いや別にクロウで良いって」

「そんな軽い言い方はできませんよ」


【カリウス・アイゼンバード】


第一世代最初の【人造英雄】にして、第一世代の人造英雄達のリーダーとも言える。いつもは車いすでの移動が必要なとても病弱な彼だが、その優れた頭脳によってクロウの戦術理論や戦略思考にすらついて来る事ができる、最高の指揮官クラスの人造英雄とも言える。彼の白く長い髪は腰のあたりまで伸びており、陶磁器のように整った顔立ちと病的に白い肌の上からでも分かるくらいに、その骨ばった身体はいつ見ても少し心配になる。アルビノ症を発症しているせいで、黒色の瞳も少し薄く、今日もお気に入りのクロウ特製メガネをかけていた。


「カリウス、小宵から話は聞いたか?」

「はい、南部辺境伯から宣戦布告を受けたのですよね?」

「そうそう、それで今回は、最高司令官をお前に任せようと思ってな」

「いいんですか?」

「うん、今回はそんなに難しい事はしない。旧フェンデル領をキルゾーンにして、こことここの森の中に野戦砲設置して、ここに扇形に魔法で塹壕と堡塁を作って、等間隔に遠距離魔法機関銃を設置して、この範囲にクロスファイアで絶対的なキルゾーンを作って」

「なるほど、前方で白兵戦を行いつつ、十分な戦闘データが取れ次第キルゾーンに誘い込んで殲滅ですね」

「そう完璧」


いつもの癖で色々と説明しようと思っていたら、半分ほど話を聞いていたカリウスは全て察したようだ。


「後、俺も前線出るから」

「え?」

「え?」

「え?」


驚くカリウス、そしてその横にいつの間にか転移してきた小宵、同時にクロウも驚く小宵とカリウスに改めて驚く。


「いや何よ、良いじゃん」

「だ、旦那様、お考え直しを」

「ろ、老師、老師には僕の傍で戦闘の指揮を」

「いや大丈夫だろ、今回は俺も前線に出る。そうだな、【舞踏人形(マスカレイドドール)】達を引き連れて側面から行こう」

「いや、ま、待ってくれ老師」

「じゃそういう事で」


有無を言わさずクロウは自分の執務室から出ていく。そのまま屋敷を出て裏の工房へ行き、工房のはずれにあった木箱を開けて、以前に作ったいくつかの仮面を探し始めた。


「カリウス様、これでは仕方ありません、幸い旦那様は最高司令官を貴方に任せたので、他の方々もお呼びしましょう」

「そうだね、今回は戦闘データの回収と敵戦力の殲滅が目的だから、前線の人員は少し慎重に選ばないと」

「はい、では私はクロウ様を探してまいりますので、何かありましたらいつでもお呼びくださいませ」

「うん、またね」

「失礼いたします」


カリウスをクロウがいつも使っている大きな地図の前に車いすを押していき、彼のための飲み物と軽食を持ってきた後、小宵は転移スキルでクロウのすぐそばに転移した。


「今回は戦闘データ、僕を呼ぶって事は僕達第一世代、それから第二世代、第三世代まで恐らく全員のデータを取るつもりだと思う。更に老師直々にドールを率いるって言ってるから、ドールの戦闘データも欲しいはず。いくつかの自立兵器も使用した方がいいかな?野砲を使うって言ってたから、少なくとも自走大砲は必要だよね...それから....」


カリウスの脳が高速で活動をしていく。他から見れば彼は少し興奮状態に陥っていると言えるが、生まれつき脳の処理速度が常人の数億倍を超えている彼にとって、それはむしろ喜ばしかった。数分の後、いつものように脳がオーバーヒートを起こすギリギリ、鼻血が少し出るくらいのタイミングで思考を完了する。車いすのポケットからハンカチを取り出し、鼻に当てながら小宵が置いてくれた軽食と飲み物を口にする。思考に大量のエネルギーが必要になるので、こうした時にすっと食べられる物がないと割と本気で餓死するのだ。


「さて、じゃあまずは人員を集めないと」


少し休憩し終えた後、必死に車いすを漕いで執務室から一旦廊下へ出る。近くにいた奉仕人形がカリウスの姿を見つけると、すぐに駆け寄り、後ろからゆっくりと押してくれる。


「ありがとう、まずは僕達の寮に戻ろう」


後ろに手を伸ばし、自分の車いすを押してくれる奉仕人形の手に触れる。そのまま彼女の脳内に位置情報を直接送り込むと、カリウスは再び姿勢を元に戻した。


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